35mmフィルムで描く視覚と緊張の連続『ストレンジ・ダーリン』J.T.モルナー監督×撮影監督&プロデューサーのジョヴァンニ・リビシが挑んだ映像表現
巨匠スティーヴン・キングが絶賛したJ.T.モルナーによる長編映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日(金)に公開される。このたび、モルナー監督と、本作では俳優としてではなく撮影監督とプロデューサーとして携わったジョヴァンニ・リビシが挑んだ映画表現秘話が明らかになった。
全編35mmフィルムで撮影された、緊張感あふれるチャプターツイストスリラーである本作。脚本の完成後、モルナー監督は、本来俳優であるリビシに撮影監督およびプロデューサーを託した。製作が始まる1年も前から、2人はブライアン・デ・パルマ、デヴィッド・リンチ、デヴィッド・クローネンバーグら巨匠の作品を徹底的に研究。広角レンズの使い方や色彩設計など、視覚的なスタイルの検討を重ねた。
物語は全六章から構成されており、シリアルキラーによる事件の恐怖が各地で広がるなか、とある男女が出会い、モーテルで一夜を過ごすことをきっかけに展開していく。作品が高く評価されている最大の魅力は“非線形によって生み出された巧みなストーリーテリング”にある。時系列を操作することで、観客の興味を引き、予測できない展開へと連れていく、新感覚のチャプターツイストスリラーが展開していく。
モルナー監督は「私たちは、この映画の見た目を、独特で否定しようのない雰囲気にしたかったのです。視覚的な要素を調整することがとても重要でした。結局のところ、映画は視覚的なメディアなのです」と語る。ジョヴァンニもまた、できる限り現場でのリアリズムにこだわり「私たちは、現実的に物事を進めることを好みます。壁に影がある場合、ポストプロダクション(編集作業)で調整するよりも、現場で照明を使って処理したいと思う。メイクや視覚効果についても同じことが言える。より自然な仕上がりになるし、そのプロセスが好きだ」と話す。さらに彼らは、フレディ・フランシスやデヴィッド・ワトキンの作品に加え、小林正樹監督の1960年代の名作『切腹』(62)、『怪談(1964)』(64)からも構図やカメラワークのインスピレーションを得たと答えている。
映像に宿る緊張感と、巧みに操られた光と影が、登場人物の心理と張り詰めた空気を描きだす本作。視覚と感情を揺さぶる映像をぜひ劇場で体感してほしい。
文/鈴木レイヤ