「芝居合戦というよりはノーガードの撃ち合い」綾野剛&柴咲コウ&亀梨和也が語る!『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』特別映像

「芝居合戦というよりはノーガードの撃ち合い」綾野剛&柴咲コウ&亀梨和也が語る!『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』特別映像

福田ますみのルポルタージュ「でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相」を映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(6月27日公開)。このたび、本作の特別映像と場面写真が解禁となった。

【写真を見る】夫を従え、学校に乗り込む氷室律子を捉えた新場面写真
【写真を見る】夫を従え、学校に乗り込む氷室律子を捉えた新場面写真[c]2007 福田ますみ/新潮社 [c]2025「でっちあげ」製作委員会

2003年、小学校教諭の薮下誠一は、保護者の氷室律子から児童、氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。20年前、日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件。報道をきっかけに、担当教輸は「史上最悪の殺人教師」と呼ばれ、停職処分になる。児童側を擁護する550人の大弁護団が結成され、民事裁判へと発展。しかし、法廷は担当教諭の完全否認から幕を開けるのであった。

主人公の薮下誠一を演じるのは綾野剛。『ヤクザと家族 The Family』(21)、『カラオケ行こ!』(24)など国内外で高く評価される作品への出演が相次ぎ、2024年には「地面師たち」で社会現象を巻き起こした。監督は三池崇史。『悪の教典』(12)、『初恋』(20)、『怪物の木こり』(23)など映画での活躍は言わずもがな、2025年にはテレビドラマ「新・暴れん坊将軍」でも監督を務め精力的に活躍の場を拡げ続ける。また、共演には柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫ら豪華キャストが勢揃いとなっている。

今回、コメント映像と本編&メイキング映像を掛け合わせた特別映像「感想編」、「共演編」の2本が同時解禁された。感想編では、薮下役の綾野、律子役の柴咲、週刊春報の記者、鳴海三千彦役の亀梨が、それぞれのキャラクターに絡めて、本作の感想を語った。映像に登場する朝の薮下家での1シーン。顔面蒼白の薮下が震える手で持った週刊誌には、自身の名前とモザイク入りの顔写真が添えられた記事が。テレビからは「悪魔のような教師」と読み上げるアナウンサーの声が聞こえ、玄関前には何十人もの報道陣が押し寄せる。世間に追い詰められた薮下を演じた綾野は「彼(薮下)があらゆることに巻き込まれていくわけですが、“巻き込まれている”という見方だけが正しいのかといわれると、それも違う気がする」とひときわ多くの登場人物と接した綾野ならではの視点で作品を振り返る。また本作の見どころの一つでもある豪華キャスト陣との共演について「芝居合戦というよりはノーガードの撃ち合いのよう」と語っている。同様に律子役の柴咲も「お芝居をする側としてのワクワク感」、「『綾野さんとバチバチできるのかな?』みたいな」と俳優としての高揚感があったことを振り返る。一方で、事件を追う記者、鳴海を演じた亀梨は、「人間の複雑さ」、「一つの答えには辿り着かないもどかしさが、この映画の魅力」だと語る。「あらゆることはそんなに単純じゃなくて、角度によって全部違う」と、最後に綾野は言う。三池監督が作り上げるエンタメ作品としての面白さを感じながら、作品のなかで薮下の人生を生きたようだ。

共演編では、今回の共演でのお互いの印象を振り返った。綾野が「とてつもない緊張と高揚が連鎖した」と語るのは、律子の供述をもとにした家庭訪問の回想シーン。片手にタオルを持ちながら、靴下のまま部屋に入ってくる薮下。濡れた前髪から覗く目は、狂気に満ちている。このシーンについて綾野は、「柴咲さんから出ている律子のムードを受け取れたので、あの薮下が生まれた」と、柴咲あってこその演技だったと話した。一方で、柴咲も綾野に対して、一つ一つの仕草を挙げながら「薮下先生の振る舞い方を作るのが本当に上手だった」と絶賛する。カラスの鳴き声が不気味に響く薮下家の玄関前のシーンには、14年ぶりの共演となった綾野と亀梨の姿が。亀梨は、このシーンは「役として(綾野に)しっかり突っ込んでいけるか」が肝だったといい、綾野の現場での出で立ちや向き合い方に「真似したくてもできない」と感動を伝えた。また、綾野も「(亀梨に)引きだされて、見たことのない声やパワー」が出たようで、「(役を)ちゃんと自分ごととして捉えている姿」に改めて感銘を受けたと語った。さらに、綾野は監督の三池崇史の印象について、「俳優がなにをするかということを受け止めてくださる」と話し、綾野が何パターンか提案(演技)した後、いずれかを選択する形で撮影を進めたとの裏話を明らかにした。「全体の空気が凍る」、「怖かった」、「ヤバすぎる」と、綾野、亀梨、三池の男性陣3人が口を揃えて話した柴咲の渾身の“怪演”にも要注目だ。

体罰を受けた児童の保護者である氷室律子を柴咲コウが演じる
体罰を受けた児童の保護者である氷室律子を柴咲コウが演じる[c]2007 福田ますみ/新潮社 [c]2025「でっちあげ」製作委員会

さらに、キャラクターの人となりが垣間見える場面写真も解禁。薮下は、校長の段田重春(光石)の指示で保護者懇親会に出席していた。児童への体罰があったとして、保護者に向けて謝罪と説明をするという意図のもと開かれたのだが、律子も出席するこの会で、必死になにかを訴えかける薮下の鬼気迫る表情が事態の重さを物語っている。続いて、夫、氷室拓馬(迫田孝也)を従えて学校に乗り込む律子のシーンのカット。黒のジャケットを羽織り、シャツのボタンは一番上まできっちりと締めた律子。すれ違う児童には目もくれず鋭い眼差しで進むその姿からは、息子を守る母親の強い意志が感じられる。鳴海は、週刊春報の編集部で上司である編集長の堂前(高嶋政宏)にでき上がった原稿を見せている。鳴海の気概に押された編集長は、実名での報道に踏み切るのだが…。身を乗りだし真剣な表情で訴えかける鳴海の姿が印象的なカットとなっている。


物語より奇妙で恐ろしい事件のルポルタージュを豪華俳優陣で映画化する本作。現代社会に実在する闇が耐え難い緊張感と底知れぬ絶望感で体現された問題作に期待が高まる。

文/鈴木レイヤ

※高嶋政宏の「高」は「はしごだか」が正式表記

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