“ポップコーン女優”のレッテルを払拭したデミ・ムーア!『サブスタンス』でゴールデン・グローブ賞を掴むまでの苦節をプレイバック
ゴールデン・グローブ賞での受賞スピーチが、多くの人々に驚きを与えたデミ・ムーア(主演女優賞:ミュージカル・コメディ部門)。80年代の青春映画、ラブロマンス映画で数々のヒットを放ち、彼女が受賞前から大スターだったことは周知の事実。なのに「もう45年以上、この仕事をしていますが、俳優として賞を獲得したのはこれが初めてです」と始まったスピーチにまず驚いた。
そう、知名度抜群の大スターなのに(ラジー賞以外の)映画賞とは無縁だったのだ。その後に続くコメントも驚きの連続。「30年前、あるプロデューサーに“ポップコーン女優だ”と言われました。(~中略~)その言葉は長い年月をかけて私を蝕み、数年前、もうこれでおしまいだ、と思うまで続いたのです」。これぞ、グルーミング、呪いだ。個人的な思い込みと片付けるわけにはいかない。受賞前に誰もが尊敬するだけのキャリアを築き、一時代を牽引した俳優の一人が、まさかそんな呪いに苦しめられていたとは、と感じずにはいられなかった人が多いはずだ。
ロマコメ作品でブレイクした80年代
そんなムーアは、『セント・エルモス・ファイアー』(85)や『きのうの夜は…』(86)といった、80年代に流行したロマコメで数々のヒット作を持つ。そして映画を未見でもネタとして知っている人が多いだろう『ゴースト ニューヨークの幻』(90)。可憐だけど芯が太く、それでいてボーイッシュにも見えたモリー役がドンズバでハマり、オカルトとコメディを適度にプラスした王道悲恋物語の目新しさも手伝って大ヒットを記録した。そのブレイクが早すぎたと言われたのは、その後の低迷があったからだろう。
ラジー賞常連のレッテルを払拭するため、体当たりの演技にも挑戦するが…
『ア・フュー・グッドメン』(92)などのヒット作にも恵まれたが、『素顔のままで』(96)や『幸福の条件』(93)で最低映画を決めるゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)に常連入りしたことで悪目立ちした。これらの不名誉が「ポップコーン女優」の呪縛を持った彼女にどれだけの影響を与えたかは想像に易い。なんとか這い上がらねば、なんとかいい作品に、ブレイクスルーを!という焦燥感があったに違いない。
そこで選んでしまったのが『G.I.ジェーン』(97)。名匠リドリー・スコット監督作での主演。しかも、米海軍大尉が丸坊主になって特殊部隊の訓練プログラムに挑むという、30代半ばの彼女にとっては大チャレンジでしかない作品だった。この作品がプロモーションされ始めるや否や、彼女の気持ちは痛いほどわかったし、むしろ痛々しく映ってしまった。いま観直してみるとそこまで酷評されるほど悪い作品ではないのに、当時は彼女の「ラジー賞女優」というラベリングのせいで、頑張りすぎていて痛々しい、と多くの人に印象付けてしまったのだ。