『ペンタゴン・ペーパーズ』に『大統領の陰謀』、『スポットライト』も!『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』とあわせて観たい、歴史を変えたジャーナリズム映画たち

コラム

『ペンタゴン・ペーパーズ』に『大統領の陰謀』、『スポットライト』も!『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』とあわせて観たい、歴史を変えたジャーナリズム映画たち

公開されたばかりの伝記ドラマ『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』。20世紀を代表する女性写真家として知られるリー・ミラーの、第二次世界大戦期の報道写真家としての活動にスポットを当てた作品だ。トップモデルからカメラマンに転身した彼女は英国版「VOGUE」誌の仕事で連合軍の部隊に同行。時には最前線に乗り込んでシャッターを切り続けた。そしてナチスが撤退していた頃にドイツに乗り込んだ彼女は、自殺したドイツ人たち、ダッハウ強制収容所のユダヤ人の死体の山、そしてヒトラーの浴室にまでカメラを向ける…。

ヒトラーのアパートの浴室に足を踏み入れる(『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』)
ヒトラーのアパートの浴室に足を踏み入れる(『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』)[c] BROUHAHA LEE LIMITED 2023

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の主人公のモデルになったリー・ミラーとは?

ミラーの人生に吸い寄せられたケイト・ウィンスレットが製作と共に主演を務め、その非凡な人生を体現。一度知ってしまった残酷な真実から目を背けることができず、さらに追い続ける彼女のジャーナリスティックな姿勢は観る者の心を揺さぶるに違いない。

【写真を見る】リー・ミラーの人生に吸い寄せられ、主演と製作総指揮を務めたケイト・ウィンスレット
【写真を見る】リー・ミラーの人生に吸い寄せられ、主演と製作総指揮を務めたケイト・ウィンスレット[c] BROUHAHA LEE LIMITED 2023

ポートレート写真家としてはもちろん、報道写真家としてのミラーの評価は高い。信念に基づいて行動したその姿勢も広く知られており、昨年ヒットを飛ばした『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)の戦場カメラマンである主人公像は彼女をモデルにして形作られたほどだ。そして、本作のようなジャーナリストの実録ドラマには力作が多い。ここではそんなジャーナリズムドラマを紹介していこう。

20世紀を代表する女性写真家として知られるリー・ミラー
20世紀を代表する女性写真家として知られるリー・ミラー[c] Lee Miller Archives, England 2025. All rights reserved.

報道写真家を主人公にその使命感を浮き彫りにしていく必見作

まずは同じ報道写真家を主人公にした作品から。オリヴァー・ストーン監督の『サルバドル 遥かなる日々』(86)は、エル・サルバドルの内戦に飛び込んだ米国人リチャード・ボイルの体験に基づくもの。政府軍の暴挙を知り、真実を追求しようとする姿を力強く描いている。

リチャード・ボイルを演じるジェームズ・ウッズ(『サルバドル 遥かなる日々』)
リチャード・ボイルを演じるジェームズ・ウッズ(『サルバドル 遥かなる日々』)[c]Everett Collection/AFLO

近年では『MINAMATAーミナマター』(20)が印象深い秀作。水俣病の現実をカメラに収め、世界に衝撃を与えた米国人W・ユージン・スミスの、公害病を隠蔽する大企業との格闘を描きだす。主演を務めたジョニー・デップの熱演も忘れ難い。いずれもフォトジャーナリストの使命を浮き彫りにした必見作だ。

ユージン・スミスを演じるジョニー・デップ(『MINAMATAーミナマター』)
ユージン・スミスを演じるジョニー・デップ(『MINAMATAーミナマター』)[c]Everett Collection/AFLO

時の政権を相手に闘い続けた新聞記者たちのドラマ

巨大な権力を相手にしても怯まず、事実を追求した者たちの実録ドラマにも注目。スティーヴン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)は、米国政府がひた隠しにするベトナム戦争関連の秘密文書を暴こうとする、ワシントンポスト紙の記者たちの奔走劇。時のニクソン政権が記事の差し止めを求めるほどの爆弾級のスクープが、どのようにして世に出たかをスリリングに描きだす。

米国政府がひた隠しにする秘密文書を暴こうとするワシントンポスト紙の記者たちの奔走劇『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
米国政府がひた隠しにする秘密文書を暴こうとするワシントンポスト紙の記者たちの奔走劇『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』[c]Everett Collection/AFLO

同じニクソン政権を相手にした実話ドラマでは、名作『大統領の陰謀』(76)も忘れてはいけない。ウォーターゲート事件の真相を暴き、ニクソン大統領を退陣に追い込んだ、こちらもワシントンポスト紙の記者たちの実話に基づいている。やはり政府筋からの圧力は容赦なく、それに屈せずにジャーナリズムに徹した人々の熱意が印象深い。

ウォーターゲート事件の真相を暴いたワシントンポスト紙の記者たちの実話に基づく『大統領の陰謀』
ウォーターゲート事件の真相を暴いたワシントンポスト紙の記者たちの実話に基づく『大統領の陰謀』[c]Everett Collection/AFLO


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