今掛勇監督が明かす『ドラゴン・ハートー霊界探訪記ー』のポイントは、現代版にアップデートされた地獄や閻魔大王!「地獄をどこまでリアルに描くのかが課題でした」

今掛勇監督が明かす『ドラゴン・ハートー霊界探訪記ー』のポイントは、現代版にアップデートされた地獄や閻魔大王!「地獄をどこまでリアルに描くのかが課題でした」

舞台となる徳島県には「安心感につながるような温かさとか柔らかさも感じた」

主人公は中学生でいとこ同士の竜介と知美
主人公は中学生でいとこ同士の竜介と知美[c]2025 IRH Press

本作の舞台となる徳島県には何度も足を運び、ロケハンを行った。「個人的な訪問を含めると5回ほど行きました。一番思い出に残っているのは阿波踊りの取材です。コロナ禍でお休みしていた時期を経ての3年ぶりの本格開催時に参加したのですが、町そのものに一体感があって、その熱たるや!阿波踊りの空間みたいなものができていて、非常によかったですね。初めて『ぞめき(阿波おどりのお囃子)』も体験しました。普段から踊るタイプではないのですが、ずっと踊っていたいと思うくらいハマりましたし、すごく楽しかったです。阿波踊りは綺麗で純粋で荘厳。その感想も含めてアニメーターに伝えて、すてきな阿波踊りのシーンに仕上げてもらいました。徳島という土地には安心感につながるような温かさとか柔らかさも感じたので、そのあたりも映像に反映しています」。

「日本の龍にしては珍しいデザインになっています」

翼のある龍は珍しいという
翼のある龍は珍しいという[c]2025 IRH Press

タイトルにもあるように“ドラゴン”も重要な要素のひとつだ。「龍は作画にするか3Dにするか最後まで悩みました。龍を調べてみると仏画や彫刻などたくさんの龍が存在しています。本作での龍の使命を考慮し、さらに、竜介や知美と一体感を持てることも大事と考えて、アニメーターに頑張ってもらった結果がこの龍です。最終的には一部3Dはありますが、人の手で描く躍動感や偶然生まれる神秘的なものに期待して作画にしました。日本の龍にしては珍しいデザインになっています。実は翼がある龍は珍しくて。過去の様々な文献や、高越寺の山門に彫られている龍のデザインも参考にしています」とモデルとなった龍がいることを明かした。


物語とマッチする音楽も毎回話題となるが、本作ではこれまでとの違いがあるという。「初めて音楽の編集にも携わり、Vコンテも作ってみました。音楽に合った映像を作ることで、作品もつくりやすかったですし、世界観に入り込みやすかったと感じています。作業量は増えましたが、自分で仮のアフレコをしたり、効果音を入れたり、楽曲などを入れたものをプロデューサーや各所への確認に使うことができたので、Vコンテができあがった時点で、ある程度作品の全体像が見えたことはすごくよかったと思っています」。

また、本作では竜介と知美の成長していく過程も大切にした。「特に知美の声を聞くと、前半と後半でかなり違う印象を持つと思います。成長の様子がすごくわかりやすく表現されています。竜介もお兄ちゃんのようにちゃんとリードしながら、自身も成長していく様子が伝わってきます」。

「霊界探訪」をテーマに竜介と知美の成長と使命への目覚めを描く
「霊界探訪」をテーマに竜介と知美の成長と使命への目覚めを描く[c]2025 IRH Press


竜介と知美は、地獄を見たあとに龍に導かれ未知の世界へと進んでいく。2人のこの選択をどのように感じたのだろうか。「地獄を見たあとに、なんとかしたいという気持ちが芽生えると思います。地獄から抜けだす方法も描かれていますが、一番よかったと思うのは、竜介と知美がとても素直だったこと。素直だったから抜けだせたのだと思うし、また、“真実を知りたい”と思うのも素直さからくるものなのかなと思っています」と、2人の成長と素直さに目を細めた。

最後に作品のタイトルにちなんで今掛監督が探訪したいところも教えてもらった。「地球上のいろいろなところに行きたいと思っています。霊界についてはいずれ行く場所なので、いま訪れなくてもよいかなと(笑)。徳島の美しい風景やご開帳の際の地獄絵図然り。知っておきたい、見ておきたいものはたくさんあります。あの世に帰って心の世界が展開される時のために、なるべくたくさんのものを見て、知っておきたいといまは強く思っています」。

取材・文/タナカシノブ

関連作品