北米で異例の大ヒット中!トム・クルーズも「絶対に映画館で」と呼びかけるホラー映画『Sinners』とは?
賞レース参戦も待ったなし!ホラー映画としては前代未聞の高評価
批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は98%、観客からのそれは97%と今年公開されたメジャースタジオの大作映画としてはトップクラスの高評価を獲得。もちろんホラー映画でここまで高評価を得るというのは異例中の異例だ。
さらに出口調査「CinemaScore」では、ホラー映画としては過去35年間で初めてとなる「A」評価が出されており、配給元のワーナー・ブラザースの広報も「利益を産むと同時に、今年最も批評家から高い評価を受ける作品の一つになる見込み」と自身のコメントを出しているほど。あまりの反響の大きさから、来年のアカデミー賞レース参戦はほぼ確実とも言われている。
出口調査によると、観客の64%が35歳以下であり、全体の半数近い46%が25歳から34歳の観客が占めている。MPAのレイティングでは「R」(17歳以下は保護者の同伴が必要)となっているため、18歳未満の観客は2%に留まっているとのことだが、その年代からの評価が際立って高いとのこと。また、客層の人種分布は黒人が40%、白人が35%、ヒスパニックが18%、アジア系が5%と多様。黒人文化に根差した作品ではあるがあらゆる人種の客層が足を運び、かつ口コミ力のある若い世代が劇場で熱狂している。これが興行に色濃く反映されていると推察できる。
また、上映館のうちおよそ10%強がIMAXで、興収全体の約20%をIMAXが占めているという。本作は、クリストファー・ノーラン監督ら映像への強いこだわりをもつ映画作家が好んで採用していることでも知られるIMAXフィルムカメラと、1950年代前後のハリウッド超大作に用いられ、クエンティン・タランティーノ監督が『ヘイトフル・エイト』(15)で約半世紀ぶりに復活させたことでも知られるウルトラパナビジョン70を併用した世界初の作品でもある。
そのため一般的なシアターでの上映では、よく見かけるシネスコ(アスペクト比2.39:1)よりもかなり横長の2.76:1の画面で上映され、IMAXデジタルシアターでは一部シーンが1.90:1に、IMAXのフルサイズが上映できるシアターでは一部シーンが1.43:1での上映となる。クーグラー監督が意図したスケール感たっぷりの映像表現を味わえると同時に、フィルム撮影によって実現した黒レベルの高さがホラー映画としての旨みを増幅させる。まさに現時点での映画表現の最高到達点を目撃できる作品となっており、冒頭で述べたようにトム・クルーズが劇場鑑賞を呼びかけるのも充分に納得できよう。
現時点ではまだ日本での劇場公開が決定していない『Sinners』。すでに本作の情報を得ている映画ファンの多くは「劇場で観たい」とうずうずしていることだろう。北米での快進撃を見守りながら、続報を楽しみに待とう。
文/久保田 和馬