スタジオツアー東京で『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の名シーンを体感…トム・リドルの墓の制作秘話を聞いてみた!
名前を言ってはいけない“あの人”が完全復活するトム・リドルの墓の制作秘話
三大魔法学校対抗試合の第三の課題で、ハリーとセドリックは優勝杯に触れたことでリトル・ハングルトンの墓地へ瞬間移動されることに。そこに待ち受けていたのは、ヴォルデモートの忠実なしもべ、ピーター・ペティグリュー。呪文によって動きを封じられたハリーは、トム・リドルの墓石に縛り付けにされてしまい、闇の帝王ヴォルデモート復活の儀式が始まる。
ツアーの中盤では、全長3mのリドルの墓が目前に登場。美術スタッフの手によって、ハリーが羽交い絞めにされ、ヴォルデモートが復活した衝撃的なシーンが目の前に展開される。映画の緊張感と不気味さが見事に再現された本展示は、ツアーに訪れた人々に迫力満点の体験を提供してくれそう。
このリドル一家が眠るリトル・ハングルトンの教会墓地は、「ハリー・ポッター」作品のなかでも最大級のスケールを誇るセットとなったそうだ。美術監督のクレイグが、この場所を古ぼけて打ち捨てられたイメージにしようと考えた結果、植物が伸び放題の荒れ地にひと際不気味なリドルの墓が建てられたと言う。
当初、墓のデザインは、女性が横たわっているイメージで考えられていたが、クレイグが「もっとダークなものにしたい」と思い、最終的に死神のような像が立つ墓のデザインが生み出されたと、ホッジスは明かす。
「リドルの墓のマケットは、当初女性が墓の上で横たわるというデザインだったのですが、最終的な完成形はまったく違うものになりました。マケットを作り、最終決定した直後、クレイグがもっと不吉でもっとダークなものにしたいと思ったことで、死神のルックスに近づけていきました。そこから翼も加えられましたね。死神は、服のひだがどのようにまとわれているのか、フードはどうか、顔がいかに暗いかなどが、カメラによって強調されます。翼の向きや、サイズ、幅、奥行きまでもが、何度も変更になりました」。
そして、実物大の模型ができあがると、ペインター部門によって着色やエイジング加工が施される。ここでもクレイグと何度も話し合いを重ね、参考資料を元にサンプルを作成し、承認が得られたあと、塗装の作業に入ったという。
お墓にはオフホワイト、死神には濃い茶色の下塗りが施され、十分に乾燥させたあと、水を含ませたおがくずを墓に投げつけて表面を養生し、その後、コケや地衣類の色を吹き付けて、再び色を付ける作業を何度も繰り返す。この工程を終えると、貼り付けたおがくずをすべて取り除き、着色したおがくずを苔に見立てて接着剤で再度貼り付けることで、長い間放置された不気味で古びたリドルの墓を表現するためのエイジング加工が施されたという。
このように制作スタッフたちが試行錯誤しながら、何度も修正を重ねて、あの見事な「ハリー・ポッター」の世界観が作り上げられたのかと思うと、美術スタッフ陣を心からリスペクトせずにはいられない。
スタジオツアー東京開業以降初めてとなる、1つの作品のテーマに沿って、初公開となるものも含む小道具や衣装、クリーチャーを全館の随所に展示した特別企画「炎のゴブレット」。ぜひこの機会に訪れていただき、再び「ハリー・ポッター」ワールドにどっぷりとハマっていただきたい。
文/山崎伸子
https://www.wbstudiotour.jp/
■「炎のゴブレット」特設サイト
https://www.wbstudiotour.jp/the-goblet-of-fire-2025/