【TOHOシネマズ 新宿篇】ゴジラロードの始まりや最盛期のアルバイト人数まで。映画館にまつわる歴史&トリビアを大特集!
いまでも忘れられない『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』上映時の思い出
当時の支配人に、オープン当初の映画館での思い出について聞くと、「オープニング作品の『セッション』や『ワイルド・スピード SKY MISSION』が印象深かったです。いまだにお客様と話すこともあります」とのことだが、『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督の衝撃的デビュー作『セッション』(15)は、ちょうどいま、装い新たに『セッション 10周年4Kリマスター版』として当館で上映されている。
さらに同年の年末に公開された「スター・ウォーズ」のエピソード7となる『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)のフィーバーぶりが忘れられないと言う。本作は2005年公開の『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』以来10年ぶりとなる新たな3部作の第1弾で、映画館には連日「スター・ウォーズ」ファンが詰めかけることに。
「反響やお客様からのリクエストがすごく大きかったです。それで、ここではいつ来ても『スター・ウォーズ』をやっているよ、というぐらいに構えようと決断し、公開初日から2日目ぐらいまで、ほぼ24時間営業的なスケジュールを組んで上映しました。劇場スタッフたちはきっと大変だったと思いますし、無理やり乗り切った感じですが、いまとなってはいい思い出です。劇場で上映する時には歓声が上がり、映画が終わったら拍手も起こっていて、ああ、本当にやってよかったなと思い、胸にぐっとくるものがありました。この業界に長くいても、そういう瞬間に出くわすことってそうそうあるものじゃないです。ぜひ若手の社員たちにも、いつかそういう場面に立ち会ってほしいなと思っています」。
当時、TOHOシネマズ 新宿は年間の観客動員数が200万人超えだったそうで「そのころは当たり前のようにやっていましたが、いま考えれば、日本全国を探しても、そこまで入っている映画館はなかったんじゃないかと思います。250~260万のお客様をお出迎えしていたわけなので、とんでもないことをしてきたなと。業界全体に与えるインパクトとしても大きかったし、私はその時に支配人をやらせてもらっていて、本当にラッキーだったなと思います。あのころ、あの場所にシネコンをやろうと英断してくださったことを、本当にありがたく感じました。オープン当時、めちゃくちゃ忙しくて、アルバイトも一番多い時で250人くらいいましたが、本当にたくさんのお客様に支えられたし、部下も含めて、周りの方々には感謝しかないですね」としみじみ語る。
そんな当時といまとの違いについても聞くと、元支配人は「やはり、コロナ禍を経て、いろいろなことが変わってしまいました。当時、私が支配人を務めていたころは、夜中でもどんどん人が町に出ていたし、映画館でもオールナイト上映などをしょっちゅうやっていました。でも、いまはそれがなかなかできない時代になってしまいましたね。人の気質も生活様式も変わり、ちょうどいまの支配人で3代目となりますが、当時、私がしてなかった苦労をしているなとも感じています」と寂しそうに語る。
その一方で、「でも、コロナが落ち着いてからは、だんだんお客様も戻ってきてくれました。ライブビューイングや応援上映などは、当時とは比べ物にならないくらい開催されていますし、視聴者参加型のインタラクティブムービーなど、新しい上映形態の作品も登場し、映画の鑑賞方法もどんどん進化してきています。私個人としては、小学生や中学生ぐらいの子どもたちに映画館で映画を観てほしいし、映画好きになってほしい。新しい技術は周りの方にお任せするとして、観客を出迎えるための劇場として、万全の体制を整えていくには一体、なにをするべきかも考えていきたいです」と未来を見据える。
人生を潤してくれる映画とのすてきな出会いができる映画館という場所。今後もぜひ、多くの人々に足を運んでほしいと心から願う。なおTOHOシネマズの全国17劇場で開催中のアニバーサリーキャンペーンでは、4⽉から12⽉の9か⽉間にわたって、様々なサービスを展開していく。対象劇場は今回特集した新宿をはじめ、5周年の池袋、⽴川⽴⾶、10周年のららぽーと富⼠⾒、アミュプラザおおいた、15周年の上⼤岡、20周年の府中、ひたちなか、⽔⼾内原、津島、⼆条、直⽅、25周年の浜松、ファボーレ富⼭、岐⾩、泉北、⼤分わさだの17劇場だ。ぜひ最寄りの場所や気になっている映画館をチェックし、お目当ての映画を観に行っていただきたい。
文/山崎伸子