ラミ・マレック&レイチェル・ブロズナハンが語る、正義と復讐の境界線「“アマチュア”であるチャーリーの武器は『愛』」
「ラミは、一緒の演技でなにが起こるかわからない電撃的なパフォーマー」(ブロズナハン)
――共演されて、お互いにどんな点に役者として、または映画人としての強みを感じましたか?
マレック「面と向かって言うと、レイチェルは照れてしまうかもしれないね(笑)。とにかくカメラが回っている時の彼女は、周囲を威圧する感覚がある。もちろん、それは役者には必要なもので、共演者としてお互いにそれを交換し合い、共有していくものです。またレイチェルには、そのキャラクターを自然なかたちで生きているような、そんな感覚がある。これは俳優が一生をかけて培っていくものだけれど、彼女には自然にそれが備わっているんです」
ブロズナハン「そんな、畏れ多いです(笑)。実は、私も彼に同じことを思っていました。ラミが入念な準備をして撮影に臨んでいるのはわかっているけれど、一緒に演技をしてなにが起こるかわからない、電撃的なパフォーマーだったんです。それに、共に仕事をするパートナーとして誰にでも寛大で、彼と話していると私も気分がよくなる。けれど、『あ、私も、もっとレベルを上げないといけない』と思えてくるから、同時に怖くもなるんです(笑)」
――プロのスパイではないチャーリーをアクション映画の主人公にすることは大変だったと思いますが、どんな準備を?
マレック「肉体的なトレーニングを必要としないと思ったのは、今回が初めてだった。僕が学んだのは、チャーリーにすでに備わっているであろう知力を使うということ。IQをさらに上のレベルに引き上げ、彼に天才的な能力をもたらすことで、妻を殺した犯人を倒す。そのようなスキルが育まれるのは決して軍事訓練の場からではなく、これはいわば“知性に訴える銃撃戦”なんだ。極めて知的でありながら、非常に派手でもある。それこそが本作が特別なところだ。時には彼の倫理観に疑問を抱くこともあるだろうけれど、それは誠実さから来るものであり、同時にスペクタクルでもあるんだ」
――“アマチュア”と、その対比であるプロフェッショナルについて、どんな違いがあると思いますか?
ブロズナハン「人によって解釈は異なるけれど、“アマチュア”は才能を技術に変えようとする情熱を持った人のことだと思います。逆に、プロは技術を活かし続け、なおかつフレッシュな状態にすることに情熱を燃やす人ですね」
マレック「そういえば、共演のローレンス・フィッシュバーンが言っていたよ。“アマチュア”の語源は『愛』から来ているって。(「マトリックス」シリーズでフィッシュバーンが演じた)モーフィアスの言うことだから間違いない(笑)。プロフェッショナルというのは、アクション映画でよく見られる、一定のトレーニングを積んだあと、ある局面で的確に培った能力を発揮できる人とも言えるだろう。でも、“アマチュア”であるチャーリーの武器は『愛』だ。正直、この武器だけで彼が生き続けられることを、時々不思議に感じるけれど。チャーリーはアマチュアであるという意識を持ち続けることで、プロでもなしえないことをやってのけるんだ」
取材・文/相馬学