ポン・ジュノ&山崎貴が互いのクリエイティブを大絶賛!『ミッキー17』特別対談映像

ポン・ジュノ&山崎貴が互いのクリエイティブを大絶賛!『ミッキー17』特別対談映像

『パラサイト 半地下の家族』(19)で第92回アカデミー賞4部門に輝いたポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』(公開中)。このたび、ジュノ監督と『ゴジラ-1.0』(23)で第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞した山崎貴監督との対談映像が解禁となった。

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【写真を見る】人生失敗だらけのミッキーが権力者に挑む『ミッキー17』[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

最初に口を開いた山崎監督は、「ちょっと打ちのめされましたね、僕も次の次の映画をアメリカで撮ることになっているのですが、こんな作品ができてしまうとやたらハードルが高くなってしまって本当に迷惑だなと思いました」と思わず苦笑いする。ジュノ監督もナチュラルな日本語で「すみません」と笑顔で応じ、興味津々に「次の次に撮るアメリカの作品がどのようなものか気になります。怪獣ものですか?」と問いかける。「怪獣…ではないです。が、大きなVFXをたくさん使う映画になります」と明かすと「本当ー」というリアクションが。

主人公はロバート・パティンソン演じる人生失敗だらけのミッキー。貧困に苦しむ彼は、クローン技術によって何度も生まれ変わる夢の仕事に応募するが、それは命を使い捨てにする過酷な労働だった。ある任務で遭難したミッキーは命からがら生還するが、彼の目の前に手違いでコピーされたもう一人のミッキーが現れる。

2人のミッキーを描く映像表現と並んで、本作の大きな見どころの一つとなるのが、大雪原を謎クリーチャー、クリーパーたちが群れをなして押し寄せる壮大なクライマックスだ。山崎監督は「僕はVFXのオタクなのでわかるのですが、アメリカで本当に一流のとてもお金のかかるチームを使って、しかも大スペクタクルシーンがあるじゃないですか。だからそれをホントどうやってやったのか知りたい」と満面の笑顔で尋ねる。

「たしかに、このVFXの中でも核心の要素となるのがいま(山崎監督が)抱いていらっしゃるクリーパーです」とぬいぐるみを指さしたジュノ監督は、物語の鍵を握るクリーパーについて「ベイビークリーパー、ジュニアクリーパー、ママクリーパーの3種類が出てきますが、ゴジラとミニラのように最も大きな予算が投じられたのがクリーパーでした」と説明。「ゴジラは歴史的な伝統があるスーパースター怪獣ですので、そこから新たなバリエーションを作りだすというのはむしろ難しさもあり悩みもあったのではないかと思います。それとは違い、私の場合はなにもないところからのビジュアルでしたので、もちろん難しさはあったとは思いますが自由さもあったと思います」と、ゼロからの創造は自由度も高かったと強調する。

続けて、「今回クリーパーのクリーチャーデザインを担当している方は『オクジャ/okja』や『グエムル-漢江の怪物-』でご一緒した方だったので、“あうんの呼吸”で作ることができました。最初の出発点でクリーパーのイメージとして私が出したのはクロワッサンのパンだったのです」と、原作では「ムカデ」と表現されていたクリーパーの誕生秘話を明かした。「もし明日の朝ごはんでクロワッサンを召し上がるのであればぜひ注意深く見てみてください。特にママクリーパーによく似ています」とユーモアあふれるコメントで笑顔を誘う場面も。

本編を観ることでどんどんかわいさが増していくクリーパーは、「作っている当時は気づかなかったのですがポスプロの段階で見た時に、あーこれは『風の谷のナウシカ』の王蟲に似ているなと思ったのです。もしかしたら自分の中に眠っていた潜在的なものが影響を与えたのではと思いました。子どもの頃から宮崎駿監督の作品は数十回観てきましたから」と敬愛する宮崎監督の影響についても言及するジュノ監督。『ミッキー17』を鑑賞した観客からも王蟲を連想させるという声が多数発信されているが、観客の代表でもある山崎監督は、「すごいなと思ったのが、普通に見たら気持ち悪いものがどんどんかわいくなっていって…、あれを助けたい…!という気持ちで劇場が一体となる瞬間があると思うんです。それはやはりなかなかできないことです」と、得体の知れない存在であったクリーパーが物語の進捗に合わせてどんどん愛らしくなっていく演出手腕を絶賛する。

改めてジュノ監督は、「『ゴジラ-1.0』では実際に触っているような手触りが感じられるような感覚があったと思います。CGで100%表現するのではなく物理的なエフェクトを使われていると聞きました。53年のクラッシックのオリジナルゴジラの時はデジタルの効果はなかったはずですから、その当時に向けた郷愁のようなものを込めたのかなと思いました」と『ゴジラ-1.0』の表現を讃える。これに対し、「予算がなくて手作りでやるしかなかった…」と恐縮した様子で山崎監督が苦笑い。ジュノ監督からは「クラシックな怪獣を見ていると、着ぐるみの中の演者が東宝のセットで怪獣の頭を脱ぎタバコを一服している姿を一度見てみたいなと、そんなことを想像してしまいます」と思わずほっこりするコメントが飛びだした。

最後に日本の観客へのメッセージを求められた山崎監督は、「社会的な問題も扱っているのですがとにかく面白いんですよ。それがこの映画のなによりの特徴だと思います。ひたすら面白い。ずーっとずーっと、どうなるんだどうなるんだという気持ちを持ちながら最後にすごいところに連れていかれる映画なので、劇場でぜひ、観ていただきたいです。ちょっと宣伝では伝わってないくらい大スペクタクルがたくさんあるんですよ。だからこの面白さを伝えたいですね。観てくれ、とにかく観てくれということを伝えたいです。ほんと素晴らしい作品です。これが作れて羨ましいし、よかったと思います。ぜひ劇場でご覧ください」と劇場での鑑賞を大推奨。

続けて、ジュノ監督も「観客のみなさんには楽しんで観てほしい、そういう気持ちでずっと作っているんです。正直に言うと、自分自身が楽しめる映画を撮りたい。そんな子どものような気持ちで映画を撮っているんです。最終的にはとにかく観客のみなさんにぜひ楽しんでいただきたいです」と、こちらも多彩なテーマが凝縮された本作を映画館で楽しんでほしいと結んでいる。

愛らしいクリーパーを生んだポン・ジュノ監督と新たなゴジラを作った山崎貴には共鳴するところも多かったようだ。2人もオススメするように、大スペクタクルの映像に圧倒される『ミッキー17』をぜひ劇場で鑑賞してほしい。


文/平尾嘉浩

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