「『ショーシャンクの空に』を思い出した」…刑務所を舞台にした新たな名作『シンシン/SING SING』に映画ファンたちから称賛の声!
「すべてのシーンに凄みがあり、何度も頬が濡れた」…演劇を通して育まれる絆に感動
刑務所が舞台の作品でありながら、血なまぐさい暴力は描かれない。屈強な刑務官に監視され、自由時間以外は狭い監房で過ごすことを強いられてはいるが、RTA参加者の目には光があり、前向きに生きようとしている。新たな演目はタイムトラベルを題材にした喜劇で、エジプトのファラオやコロッセオの剣闘士、海賊フック船長にハムレット、『エルム街の悪夢』の殺人鬼フレディまでバラエティ豊かなキャラクターが登場。それらを嬉々として演じる収監者たちの姿に大勢が心動かされたようだ。
「芝居を超えて、彼ら一人一人の人生がそこにあった。本人役で出演し、感情をほとばしらせるすべてのシーンに凄みがあり、何度も頬が濡れた」(20代・男性)
「まったく異なるバックグラウンドの人々が一つの目標に向かって進むことで、理解し合い、友情が生まれる。昨今のバラバラな社会にとって必要な感覚なのではないか」(20代・男性)
「みんな傷ついて生きている。その傷を見せ合って、お互いに支え合う強さがあって、少し羨ましくなった」(20代・女性)
RTAのメンバーが織りなすドラマのなかで、特に大きな感動を生むのがディヴァインGとディヴァイン・アイの友情だ。プログラムに参加した当初、「クソみたいな稽古だ」と投げだすディヴァイン・アイに対し、ディヴァインGは「演じることで外界が味わえる。頭の中で出所できるんだ」と稽古の意味とプログラムの重要性を説いて聞かせる。さらに、仮釈放を諦めているディヴァイン・アイの書類作成にも手を貸すなど仲を深めていく。
しかし、ディヴァインGの再審が棄却され、出所の望みが潰えたことで、彼はいままで信じてきた演劇を否定し、稽古からも遠ざかってしまう。舞台崩壊の危機に動くのがディヴァイン・アイ。一人孤独に佇むディヴァインGの側にそっと寄り添い、「今度は力になりたいんだ」と勇気づけ、プログラムに復帰するきっかけも作ろうとする。この2人の変化していく関係性、熱い友情がクライマックスにかけての感動につながっていく。
「人が人に影響されて変わっていくのってどうしてこんなにもおもしろいんだろう」(20代・女性)
「ディヴァインGとディヴァイン・アイが少しずつ心の距離を縮めていくのがよかったです。対等ではあるけど、少し先輩と後輩っぽい感じもかわいかった」(30代・女性)
「刑務所外だと生まれない友情が、ぶつかり合って、認め合って、支え合って、すばらしいものを確立していくプロセスが見られてとても魅力的でした」(20代・女性)
「『ショーシャンクの空に』を思い出した。刑務所内で育まれ、出所したあとも続く友情にとても心を揺さぶられた」(40代・女性)
「演技の奥に隠された自分の本心と向き合える」…RTAを経て成長する収監者たちの姿がまぶしい
演劇を通して収監者の更正を目指すRTAを本作で初めて知ったという人がほとんどだろう。本人役で出演しているプログラムの元メンバーたちは現在、家庭内暴力にさらされる若者のケアをする団体を設立したり、引き続きRTAに関わって収監者たちのサポートを行ったりと社会復帰に成功している。芸術活動を通して表現する喜び、大勢と力を合わせる大切さを知っていったのだ。
「演劇を通して、誰もがなりたい自分になって一刻の自由を感じることのできるこのプログラムはすばらしい」(20代・女性)
「RTAのメンバーが楽しくプログラムに参加しているのが印象深く、どんなにつらい環境でもエンタメは必要だと感じました」(30代・男性)
「初めてRTAという存在を知った。ただ演じるだけでなく、自らを振り返り、更生していくために学ぶことができるよい制度だと思った」(20代・女性)
「互いを認め合い、演技の奥に隠された自分の本心とも向き合えるようになる。生涯の糧となるすばらしいプログラムだと思う」(30代・女性)
コールマン・ドミンゴを中心にクラレンス・マクリンら元収監者らが集結し、誰も観たことのないキャストアンサンブルが奏でる『シンシン/SING SING』。彼らの真に迫った演技の数々が、いつまでも心に残り続けるのは間違いない。
構成・文/平尾嘉浩