すべてはスピードのために…ブラピ自身も操縦『F1/エフワン』監督が明かす、“リアル”へのこだわり
世界中で社会現象を巻き起こした『トップガン マーヴェリック』(22)のジョセフ・コシンスキー監督とブラッド・ピットがタッグを組み、映画体験の新境地を切り開く『F1/エフワン』が6月27日(金)に公開となる。F1の全面バックアップを得て制作された本作。4月4日より鈴鹿サーキットでのF1日本グランプリが開幕し、国内でもF1熱が急上昇しているいま、本作の監督を務めたジョセフ・コシンスキーの貴重なインタビューを独占入手した。
本国メディアでは、“地上版『トップガン マーヴェリック』”とも呼ばれている本作。日本公開が決定し、予告映像が解禁されるやいなや、SNSでは「製作段階からのF1の超協力サポートに、これはすごい映画になる!」「F1映画の超ド級エンタテインメントで、今後F1映画の金字塔になることを願っています」「ブラピのF1、マジで地上版トップガンですね 臨場感ある撮影や音響に期待できそう」「監督コシンスキーなんだ!?めちゃおもしろそう!」と、早くも実力派スタッフとキャスト、そしてクオリティに熱い期待の声が続々上がっている。
F1の世界を題材にした作品を手掛けようと思ったきっかけは、コロナ禍でF1のおもしろさに魅了されたからだとコシンスキー監督は語る。「コロナ禍の期間中、『Formula 1:栄光のグランプリ』というドキュメンタリー番組を見つけました。そして、チームメイトがいろいろな意味で最大のライバルでもあるという、信じられないほどユニークなスポーツだということがわかりました」と、相手チームに勝つだけでなく、チームメイトも速さを競う好敵手である、F1というスポーツの特殊性に強く惹かれたという。
「この番組の最初のシーズンが、最下位のチームに焦点を当てていた点もとても好きでした。フェラーリやメルセデス、レッドブルは、上位にいるチームです。そして、チャンピオンシップを勝ち取るためではなく、これらスポーツの巨人たちを相手に、ただ1レースだけ勝とうとしている負け犬チームについて語る興味深いストーリーがあると知ったんです」と、華やかに見えるレース業界の泥臭い部分にドラマ性を見いだし、企画を進行させたことを明かした。
『トップガン マーヴェリック』の前例が示すとおり、コシンスキー監督といえば、映画を徹底的にリアルに作り上げるこだわりの強さも有名だ。本作では製作の初期段階で、のちにプロデューサーの一人として参画する、現役F1ドライバー、ルイス・ハミルトンに連絡を取るところから始めたという。
「彼は史上最高の選手の一人だったので、この映画を作るうえでのパートナーになってくれるようお願いしたんです。ルイスのおかげで、僕はこの世界に入っていくことができました。そして彼に紹介された1人が、メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフです。トトから『このスピードを実現するのに十分な速さの撮影用の車を作るよりも、本物のレースカーを使って、そこに必要なカメラを組み込めばいいじゃないか』とアイデアをもらい、僕たちは実行しました」とF1界の権威あるレジェンドたちに直接アドバイスをもらい、積極的にプロのアイデアを採用した。
そして実際の撮影に向けて、本物のレーシングカーを6台も購入するというこだわりっぷりが炸裂!「メルセデスAMG、フォーミュラ1チームとそのエンジニアたちと協力して、この映画を作るためのカメラ機材、レコーダー、トランスミッターを搭載できる本物のレーシングカーを作ったんです。だから、この映画でブラッドやダムソン(・イドリス)は、実際に本物のレーシングカーに乗って走っているんです」と明言。『トップガン マーヴェリック』でトム・クルーズが戦闘機を実際に訓練し、操縦したのと同じように、ピットも本物のレースカーを操縦しての撮影が行われていたのだという。
こだわったのはレーシングカーだけでなく、サーキット場ももちろん本物を使用。監督は撮影前に世界各地のサーキットをめぐり、入念なリサーチを行っている。コシンスキー監督は、「僕がF1について本当に好きなことの一つは、どのコースにもそれぞれの個性があることなんです。F1の本場であり、すべての始まりの地であるシルバーストーン(イギリス)から、森の中を走るすばらしいコースのスパ・フランコルシャン(ベルギー)、そしてラスベガス。映画の最後を締めくくるのはアブダビで、ここは映画の最後を飾るにふさわしいすばらしいサーキットです。僕たちはこれらの場所に実際に行って撮影したので、映画を観ていると本当に世界中を回ったような気分になるんです」と、各国のサーキット場で実際に撮影したからこその臨場感について語っている。
この映画を観れば、まるで世界の名だたるレースを観戦しているかのような疑似体験を楽しめるはず。“体感エンタテインメント”の金字塔となりえる作品に仕上げた、監督のこだわり抜いた映像美にも注目してほしい。今度の“リアル”は空から陸へ。2025年夏、重力も追いつかない、時速300km超えの超高速“体感”エンタテインメント映画『F1/エフワン』をぜひ映画館で体感していただきたい。
文/山崎伸子