シンシア・エリヴォ&アリアナ・グランデが『ウィキッド ふたりの魔女』で生まれた友情を語る「困難な時代を生きるには、友情こそ大事な手段」

インタビュー

シンシア・エリヴォ&アリアナ・グランデが『ウィキッド ふたりの魔女』で生まれた友情を語る「困難な時代を生きるには、友情こそ大事な手段」

「多くの人が疎外感を味わっているいまだからこそ、どんな友人を作ることが大切なのか試されるでしょう」(グランデ)

――映画の冒頭のナンバー「ノー・ワン・モーンズ・ザ・ウィキッド」では、グリンダの複雑な心境が伝わってきました。あのシーンのこだわりとは?

やる気にも特権にも恵まれた人気者でありながら、まだ本当の優しさを知らないグリンダ
やる気にも特権にも恵まれた人気者でありながら、まだ本当の優しさを知らないグリンダ[c] Universal Studios. All Rights Reserved.

グランデ「うまくバランスをとる必要がありました。マンチキンたちに『悪い魔女が死んだ』という吉報を伝えるわけですが、グリンダとしてのパブリックイメージを貫きながら、真実を隠し、自分が友情を失った悲しみを抑える。ちょっと“守り”に入った印象を表現しました。さらにマンチキンの少女から『なぜ人は邪悪になるのか』を尋ねられ、生まれ持った性質ではなく、置かれた環境で運命が変わったことを真摯に伝えなくてはならない。そうした複雑なエレメントのバランスをとりながら演じたので、かなり難しかったですね。やりきった瞬間、『はい、これで終わり!』とスッキリしたのを覚えています」

――これまでのインタビューでも、そしていまも、シンシアとアリアナの熱い友情が伝わってきますね。

【写真を見る】本作で親友になったシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデ、熱い友情を感じられる一幕
【写真を見る】本作で親友になったシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデ、熱い友情を感じられる一幕[c] Universal Studios. All Rights Reserved.

エリヴォ「アリアナとは最初に強い繋がりを感じ、それを育んでいきました。友情を保つ努力をしたわけです。時間をかけて、話すべきことを語り合って、メールを送り合いながら『調子はどう?』なんて気にかけながら、シスターズになった感じです。いろんな取材から伝わってくる愛や友情は、すべて真実なんですよ。撮影現場でこういった経験は珍しいです。『この人は自分の人生に必要なんだ』と気づいたら、その関係を丁寧に扱うことが大切ですね」

グランデ「本当の2人の会話は取材現場だけでなくプライベートの時間にもあって、キャスティングされたあと、すぐにFaceTimeで会話して、花束を送り合ったりしました。お互いを知ることで相手を気遣い、必要な時に手を差し伸べられます。その友情が作品にも表れるんじゃないでしょうか。私たちはそれぞれエルファバとして、グリンダとして準備をしましたが、そこに友情も加われば演技で伝わるものも大きいと信じています」

――この『ウィキッド ふたりの魔女』は、「いま」を生きる人たちに何を届けると思いますか?

性格も異なるエルファバとグリンダは、思いもよらぬ深い友情を築く
性格も異なるエルファバとグリンダは、思いもよらぬ深い友情を築く[c] Universal Studios. All Rights Reserved.

エリヴォ「日本のプレミアイベントで監督のジョンが使った“yearning(憧れ、共感)”という言葉が私も気に入りました。いまの時代、誰もが求めるのは、ありのままの自分を変にジャッジされずに理解してもらい、優しく接してもらうこと。『ウィキッド』は、自分とは異なるものを持った人と、それがどういうものなのか話すきっかけになる作品でしょう。話すことで考えを変えたり、相手を許したり、心の内側で深く接したりできるわけで、そういう作品が求められたのだと思います」

グランデ「なにかと“分断”が叫ばれ、多くの人が疎外感を味わっているいまだからこそ、どんな友人を作ることが大切なのか試されるでしょう。困難な時代を生きるには、友情こそ大事な手段です。友人は自分を映す鏡でもありますよね?『ウィキッド』のシスターフッド(女性同士の友情)には、それが見出せます。いまの時代、繊細なニュアンスが忘れられがちです。映画の紹介ではエルファバが“悪い魔女になる”とありますが、『ウィキッド』を観れば彼女が邪悪でないことがわかります。一方で、映画の冒頭でグリンダは、“自分は善良”という特権意識を持っていますが、その特権の殻を破らないと、なりたいものに成長できません。そんなふうにこの映画は登場人物すべてに、その人がどう成長するか、憎しみにどう反応するか、どうすれば友情が育めるかを示しています。まさにいま、タイムリーなテーマなんですけど、でもこれって『オズの魔法使』のころから語られてきたわけで、常に伝えるべき物語なんでしょうね」

――では最後に「ウィキッド」への出演を果たした立場から、多くの人が夢を叶えることについてのアドバイスをお願いします。

エリヴォ「自分が歩くべき道について誰かが『違う』と言ったとしても、それを許容しないこと。そして夢を叶える瞬間が訪れた時に、しっかりそれを掴むこと。自分らしさを大切にすること。それらすべてが重なって夢は実現するのです。もちろん夢を叶えるためには努力が必要で、その積み重ねによって夢が向こうから舞い降りてくることもあるでしょう。あるべき自分の姿にオープンでいれば、夢は見えてきます。夢という言葉は、空に浮かぶ雲のようなイメージかもしれません。でも夢は大地に根ざしたリアルなもの。目の前に見えて、手で触れられるのだと意識すれば、夢への接し方も変わってきますよ」

『ウィキッド ふたりの魔女』は公開中
『ウィキッド ふたりの魔女』は公開中[c] Universal Studios. All Rights Reserved.


取材・文/斉藤博昭

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