三木孝浩監督ならではの映像美が炸裂!『知らないカノジョ』など週末観るならこの3本!

コラム

三木孝浩監督ならではの映像美が炸裂!『知らないカノジョ』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、中島健人&miletが出演するファンタジック・ラブストーリー、橋を舞台に最悪の連鎖に襲われる人々を描くパニック・スリラー、イスラエルとイラン出身監督による社会派ドラマの、心を動かす3本。

最高にせつなくて愛おしいハートウォーミングな珠玉作…『知らないカノジョ』(公開中)

【写真を見る】運命の人と出会っていない“もう一つ“の世界に迷い込んでしまうリク(『知らないカノジョ』)
【写真を見る】運命の人と出会っていない“もう一つ“の世界に迷い込んでしまうリク(『知らないカノジョ』)[c]2025『知らないカノジョ』製作委員会

小説家志望の青年リクと歌手を夢見るミナミは大学時代に出会い、一目で恋に落ちて結婚する。しかしベストセラー作家となったリクは、ミナミと大喧嘩した翌朝、自分が“彼女と出会っていない世界”にいることを知り…。フランス映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(19)の舞台を日本に移し、キャラクターも一部改変。三木孝浩監督が中島健人主演でリメイクした本作は、“もしも…”の世界を描くファンタジック・ラブストーリーだ。リクの“運命の人”であるミナミを、今回がスクリーンデビューとなるシンガーソングライターのmiletが熱演!

なんとか元の世界に戻ろうと、天才シンガーソングライターとして活躍するミナミに接触を試みるリク。視野の狭い人生を送ってきた彼が、何気ない日々の大切さや、人を愛することの本質に気づいていくプロセスが丁寧に描かれ、じわじわと胸に響いてくる。陽光まぶしい海辺の家や“大人可愛い”ヒロインの屈託のない笑顔など、役者をより魅力的に映しだす三木監督ならではの映像美が本作でも炸裂!さらに、miletによる主題歌&劇中歌もドラマティックに物語を彩り、深い余韻を残す。寒いこの時期にこそ堪能したい、最高にせつなくて愛おしいハートウォーミングな珠玉作。(ライター・足立美由紀)

娘との絆を取り戻していく姿がテンポよく描かれる…『プロジェクト・サイレンス』(公開中)

橋に取り残された人々が極限状態のなか助け合う『プロジェクト・サイレンス』
橋に取り残された人々が極限状態のなか助け合う『プロジェクト・サイレンス』[c] 2024 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

2023年末に惜しくもこの世を去った『パラサイト 半地下の家族』(19)のイ・ソンギュンが、次期大統領との呼び声も高い上司を献身的に支えてきた国家安保室副室長に扮したパニック・ムービー。濃霧のなか、娘とともに空港に向かっていた主人公の車が、事故の影響を受けて橋の上でストップ。やがて、電波も途切れ孤立した彼らは、移送中の車から脱走した軍事実験体〈エコー〉からも逃げなければならなくなる。

危機さえも仕事に結び付けようとしていた野心的な男が、極限状態のなかで周囲の人々と協力するようになり、冷え切っていた娘との絆を取り戻していく姿がテンポよく描かれる。橋の手前のガソリンスタンドで一悶着起こしたのちに主人公と再会し、絶妙なチームワークを見せるレッカー車の運転手を最新ドラマ「トラウマコード」も好評のチュ・ジフンが飄々と演じている。(映画ライター・佐藤結)

生死を賭けた決断と運命の行方に観る者の血を逆流させる…『TATAMI』(公開中)

実際に起きた事件をベースに描く『TATAMI』
実際に起きた事件をベースに描く『TATAMI』[c] 2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

ジョージアで開催された女子世界柔道選手権で、順調に勝ち進むイラン代表のレイラ(アリエンヌ・マンディ)は、敵対国イスラエル選手との対戦を前に、いきなり政府から棄権を命じられるが…。タイトルの“TATAMI”とは、もちろん“畳”。その内外で繰り広げられる、ある柔道選手の不屈の闘いの物語だ。金メダルを賭けた競技と同時進行で、彼女はさらなる葛藤と決断を強いられる。出場=反逆、それは祖国の家族の危険をも意味する。政府の要求に屈するべきなのか。人間として、アスリートとして、娘として、妻、母として……。

観始めたら一気、しっとりしたモノクロームの映像美が孕む緊迫感に飲みこまれ、和太鼓のリズムに乗せられ、全集中させられる。カメラはレイラに肉薄、その息遣いまでを拾い上げ、まさに生死を賭けた決断と運命の行方に観る者の血を逆流させる。しかも19年にイランの男子柔道選手の身に起きた、実話が元という。『聖地には蜘蛛が巣を張る』(22)でカンヌ国際映画祭・女優賞を受賞したイラン出身のザーラ・アミール(本作では柔道の監督役)と、イスラエル出身のガイ・ナッティヴが共同で監督。劇中で描かれる現実とは真逆の“平和と友愛”で手を組んだ、彼らの気高き信念と勇気に敬服せずにいられない。ヴェネチア国際映画祭・オリゾンティ部門で上映されブライアン賞を、東京国際映画祭・コンペティション部門で審査員特別賞と最優秀女優賞(アミール)をW受賞の他、各国の映画祭で高く評価された一作。必見!(映画ライター・折田千鶴子)


映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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