観たあとしばらく呆然とする『ザ・サブスタンス』やスリリングな設定にドキドキさせられる『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』…映画ライターによる2025上半期注目作

コラム

観たあとしばらく呆然とする『ザ・サブスタンス』やスリリングな設定にドキドキさせられる『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』…映画ライターによる2025上半期注目作

なにがなんだかわからないほどおもしろい…『ザ・サブスタンス(原題)』

ゴールデン・グローブ賞にて作品賞など5部門にノミネートされた(『ザ・サブスタンス(原題)』)
ゴールデン・グローブ賞にて作品賞など5部門にノミネートされた(『ザ・サブスタンス(原題)』)[c]The Match Factory

観たあとしばらく呆然とする。そんな映画体験を求める人がいたら、2025年、最高の一本になると断言したいのが『ザ・サブスタンス(原題)』(5月16日公開)。ジャンルは「ボディホラー」ということで、デヴィッド・クローネンバーグ監督作を想起させるかもしれない。たしかにクローネンバーグ的描写もあるのだが、本作はもっと狂気レベルでアナーキー。一方で、主人公はハリウッドのセレブということで、そのゴージャスな日常を鮮やかに軽快に見せる演出もあるし、音楽の使い方がカッコよかったり、『シャイニング』(80)などのオマージュを埋め込んだりと、もう“なにがなんだかわからないほどおもしろい”のが正直な感想。

50代になって容姿の衰えも感じ、仕事も少なくなった元スター女優役ということで、デミ・ムーアにとっては自虐ネタになりかねないリスクもあったが、その杞憂を蹴散らすような彼女の怪演に素直に平伏す人も多いのでは?一心同体ともいえる役どころで、マーガレット・クアリーの現在の勢いもビシビシと感じさせる。若さと美しさへの飽くなき欲求には、目を疑うクライマックスが待っているのだけど、気になるのは本作が日本でどう受け入れられるかという点。ネタ的にはブームを作るポテンシャルがあるので、もしかして2025年の大穴になるかも!?(映画ライター・斉藤博昭)

トンでもない傑作ホラー…『ロングレッグス』

ニコラス・ケイジが連続殺人鬼に扮した『ロングレッグス』
ニコラス・ケイジが連続殺人鬼に扮した『ロングレッグス』[c]Everett Collection/AFLO

全米公開は2024年で、日本公開は翌年。これがトンでもない傑作ホラーだった!ざっくりと説明すれば、『羊たちの沈黙』(91)ミーツ『セブン』(95)プラス、オカルト風味。父親が家族を惨殺して自殺するという、凄惨な事件が連続して起こり、FBIの新人女性捜査官リーが背景の調査に乗りだす。そしてわかったのは、どの事件にも”ロングレッグス”と呼ばれる共通の人物の影があることだった!真相を追えば追うほど不安を抱くようになるヒロインの心理にフォーカスしたつくりは、まさに先述の90年代サイコスリラー。それは新事実が明らかになるほど恐ろしさを増していく、全編これ不穏の展開にも息づいている。

主演のマイカ・モンロー(『イット・フォローズ』)は、『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターに劣らない大熱演。キーマンとなるロングレッグスに扮したニコラス・ケイジは、怪演という言葉では物足りないほどキレまくる。監督のオズグッド・パーキンスは、スティーブン・キング原作、ジェームズ・ワン製作の新作『The Monkey』の全米公開も控えており、今後のホラー界の台風の目となりそうだ。まずは『ロングレッグス』(3月14日公開)の衝撃に心の準備をしてほしい。(映画ライター・有馬楽)


2025年も気になる映画が次々に公開され、映画ファンをおおいに楽しませてくれる1年になりそう。上記のライター陣によるレコメンドを参考にしながら、観たい映画をリストアップしてみては?

構成/サンクレイオ翼

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