オスカー俳優、ロベルト・ベニーニが黒歴史にリベンジ?『ほんとうのピノッキオ』で見せる哀愁が絶妙
原作に忠実に映画化した実写版『ピノッキオ』でラジー賞を受賞してしまう
そんなベニーニは、1990年にフェデリコ・フェリーニ晩年の監督作『ボイス・オブ・ムーン』に主演している。その時、フェリーニはベニーニをピノッキオのような男と評し、ベニーニ主演による「ピノッキオの冒険」の映画化を構想する。「フェリーニのピノッキオ」とは絶妙な企画だが、残念ながら93年にフェリー二は心臓発作で死去。そこでベニーニは『ライフ・イズ・ビューティフル』に続く監督&主演作として『ピノッキオ』の製作に着手した。
(原作小説の)誕生から120年のアニバーサリー映画となったこの作品は、これまでになく原作に忠実な映画化となった。ただし、ピノッキオを演じた当時50歳のベニーニをはじめ、すべての配役を大人の俳優で撮影。視覚効果を抑えた舞台劇のような世界観も賛否を呼び、結果、第23回ゴールデンラズベリー賞でワースト主演男優賞に選ばれたほか、作品賞や監督賞など5部門にノミネートされてしまう。イタリアでは記録的な大ヒットとなったが、評価の面では『ライフ・イズ・ビューティフル』からほど遠く、天国と地獄を味わうことになった。
『ほんとうのピノッキオ』で7年ぶりのスクリーンに登場!
それでめげるベニーニではなく、2005年にも監督&主演作『人生は、奇跡の詩』を発表。仕事先のバグダッドで爆撃に巻き込まれた元妻を救うため、イラクで大騒動を巻き起こす男を飄々と演じている。なお本作のテーマ曲はトム・ウェイツが担当。オープニングの結婚式のシーンでは、ピアノを弾くウェイツと『ダウン・バイ・ロー』以来の共演を果たした。
近年は舞台など国内を中心に活躍しているベニーニにとって『ほんとうのピノッキオ』は、ウディ・アレン監督作『ローマでアモーレ』(12)以来7年ぶりの映画出演。これまで多くの作品で愛する人のために奔走するお調子者を演じてきたベニーニにとって、本作のペーソス漂う演技は新境地といってよいだろう。これを機に、再びスクリーンで活躍してくれることを期待したい。
文/神武団四郎