森田剛、松本まりかから「ずっとダサい」と評されるも「娘の前でもダサい。奥さんの前ではもっとダサい」と納得 『見上げてごらん』公開記念舞台挨拶
森田剛が主演を務める映画『見上げてごらん』の公開記念舞台挨拶が10月31日にテアトル新宿で行われ、森田をはじめ、森川葵、松本まりか、早瀬憩、森本晶一監督、佐藤快磨監督が出席した。
本作は、是枝裕和監督率いる映像制作集団「分福」の新鋭、森本晶一(初監督・原案・脚本)&佐藤快磨(『泣く子はいねぇが』)のダブル監督によるヒューマンドラマ。主人公となるのは、マンガ家になる夢を抱いてこの世界に入って来たはずが、気づけば20年近くアシスタントを続けている土屋輝一(森田)。マンガ家デビューした後輩に嫉妬し、人気声優の妻とは別居中で、中学生の娘とも気持ちがすれ違ってばかり。賞味期限は過ぎた夢だが捨てることもできぬまま、日常の些細なあれこれと誠実に向き合って生きる土屋という人間の可笑しみや切なさを、森田が体現した。
上映後に姿を現した森田は「ステキですね。うれしく思います」と、満席の会場を見渡して感無量の面持ち。完成作を観て自身も「考えさせられた」といい、「映画を観終わったあとに、好きなことを仕事にできている喜びもそうだし、後悔しないで生きられたらいいなと思いました」と感想を吐露した。
熱量不足の中堅編集者、潮田ユキを演じた森川は、「愛おしい映画。どのキャラクターも愛せる」としみじみ。土屋と別居中の妻で人気声優の莉花を演じた松本は、すでに本作を何度も鑑賞しているという。「ずっと、おもしろい。隅々までたくさんのキャラクターたちが出てくるけれど、全員がおもしろい。なんでこんなにおもしろいのかなと思った時に、森田さんをはじめ、みんなちょっとダサいんです」と分析。「カッコいいところだけを切り取られる時代だけれど、それの真逆。時代の真逆を行っているというか。人に見られたくないような部分を、ずっと映し出している。そこにこそ、おもしろさがあるんだなと気づいた。だからこの映画は何度観ても、画面のなかがずっとおもしろい」と熱を込めた。
森田も「取り繕っていなくて、あふれちゃっている。みんないろいろな悩みを隠しながら生きているけれど、(本作のキャラクターは)そういうのが出ちゃっている。だから愛おしいし、おもしろい」と同調すると、松本は「ずっとダサい。森田さんがこういうダサい役をやられていることが、新鮮。衣装も半ズボン。そういうダサさが、愛おしい。森田さんがずっとダサい映画だなと、愛を持って言いたいです。森田剛さんがとてもダサくて、貴重な映画」と愛を込めながら「ダサい」を連呼して、森田と会場の笑いを誘った。森田は「娘の前でもダサいし、奥さんの前ではもっとダサい」と認めつつ、「娘には嫌われたくないなという想いでやっていたけれど、やっぱりうまくいかず。その辺りが、人間らしい。土屋っぽいなと思いました」と語った。
輝一の娘であるひかりを演じた早瀬は「お父ちゃんがダサい映画です」と乗っかり、さらに会場は大笑い。「というのは冗談」と笑顔を見せながら、「全編を通してクスッと笑えるようなところがあったり、監督やキャストの皆さんのユーモアが出ている。考えさせられるようなシーンもあって、そっと包み込んでくれるような温かいやさしさがある。“このままでいいんだ”と思えるような温かい気持ちで、劇場をあとにできるような映画」と惚れ込んでいることを明かした。またお気に入りのシーンを聞かれた森田は、「ラストシーン」にも注目だと話す。「こんなラスト、見たことがない。衝撃的で、あの余韻がこの映画を物語っている。ラスト、すごく好きです」と愛情を傾けると、会場からも同意を表すように拍手が上がっていた。
ハロウィン当日とあって、森田が“かぼちゃのランタン”に入っている質問を引いて、それに答える場面もあった。「森田さんが憧れた人は?」という問いに、森田は「おじいちゃん」と回答。「僕はおじいちゃんが好きで。いっぱいケンカもしたんですが、憧れていたのかな。毎日新聞を読んで、気になった記事を切り取ってファイルして。いっぱいデッキを置いて、自分の好きなテレビを編集したり。なにが楽しいんだろうなと思いながら、でもどこか、小さい時にカッコいいなと思っていました」と祖父に寄せる特別な想いを告白した。「僕とは真反対。すごくまじめで固いけれど、バイクが好きだったり。いろいろな面がある」と祖父の人柄を語っていたが、「僕とは似ていない」としつつも、森川から「わりと近しいのでは。いろいろな興味があって、お芝居にはまっすぐ」と評価を受けると、「寄っていっているのかもしれない」と大きくうなずいていた。
続いて「家事はなにが得意ですか?」という質問が投げかけられると、森田は「食器の洗い物。俺、うまいと思うんだけどな。すごく丁寧だし、機械に入れるよりも、手で洗いたいタイプ。ちゃんと泡立てて、キュッキュさせて。しっかりやると思うな」と自画自賛。「あとはなにもできない。料理もできない」と打ち明けながら、「でも、Tシャツは手洗い。洗濯機は信じていないというか。Tシャツだけは手で洗いたい。もみ洗いです」と意外なこだわりを明かして、会場を驚かせていた。最後に森田は、「撮影中に、プロデューサーの方が『もしかしたらたくさんの人には届かない映画かもしれないけれど、何人かの人には間違いなく刺さる作品だと思います。だから頑張りましょう』と言っていたのを思い出しました。たくさんの人に観てもらえるにこしたことはないですが、でも確実になにか思ってもらえる、愛おしい作品だと思う。気に入っていただけたらうれしいし、自由な視点で、それぞれ思うように観てもらえたらいいなと思います」と呼びかけ、大きな拍手を浴びた。
森本監督は「この映画は、『The Potentials』という英語のタイトルです。“可能性のある人々”という意味合いです。まだまだ可能性がある。そういう前向きな気持ちで帰っていただけたらうれしいです」とメッセージ。佐藤監督は「好きなこと、好きな場所にいつでも戻れるのかなと思える映画。皆さんにとって、この映画もいつでも戻って来られるような場所であり続けてもらえたら」と願いを込めていた。
取材・文/成田おり枝
