衝撃的なメタモルフォーゼ…!ボディホラーとして観るDC最新作『クレイフェイス』が現代社会に投げかける本当の恐怖
泥のように姿を変えるクレイフェイスを作りだした精巧な特殊メイク
本作の肝は、マットがルックスだけでなく実力も兼ね備えた俳優であること。やがて彼は撮影を通して培ってきた他人を演じる能力を生かし、思い通りに姿を変える術を体得。自分を陥れた者たちへの復讐を開始する。肉体が自分の意志に反して動きだす恐怖を描くボディホラーは、肉体に引きずられ精神までもが歪んでいく恐怖も魅力の一つ。はじめは怒りに任せ人を殺めてしまったマットだが、やがて負の感情が暴走し心身共に怪物になる。
本作で描かれる肉体のメタモルフォーゼは衝撃的だが、そこにリアリティを与えているのがクレイフェイスのエフェクトだ。顔が崩れ、ドロリと液状化するように変容していくクレイフェイスの変身過程を、特殊メイクやアニマトロニクスの第一人者レガシー・エフェクツが担当。古くは「ターミネーター」シリーズや「ジュラシック・パーク」シリーズを手掛けてきたメンバーが、本作では18段階のプロセス(VFXで補完したものを含めると27段階)で変わりゆくクレイフェイスを制作し、それを補完する形でCGが使われた。プラクティカル・エフェクトならではの質感が、マットを演じるハリスの演技と相まってリアルな描写を生みだした。怪物クレイフェイスも圧巻だが、ザボを倒すため次々に顔を変えながら迫っていくマットのトリッキーなアクションにも注目したい。
顔の喪失を受け入れることができず壊れていくマットが私たちに突きつけるもの
本作で描かれるのは、喪失を受け入れられず壊れていく男の悲劇。顔を失ったことで人々から背を向けられたマットは彼らに憤りを感じたが、彼は新たな人生に目を向けず美貌を取り戻して元の世界に戻ろうとする。他人の評価でしか自分の価値を見いだすことのできない男が、その価値を理解できなかった者たちに過ちを思い知らせる物語でもある。
ボディホラーが時代を超えて問い続けてきたのは「自分の価値を決めるのは誰か?」ということ。周囲の目や評価に依存しがちな現代社会で、『クレイフェイス』は生まれるべくして誕生した作品といえる。恐ろしくも哀しき物語をスクリーンで味わってはいかがだろう。
文/神武団四郎
