「DCユニバースの境界を広げるチャンス」ジェームズ・ワトキンス監督が語る、『クレイフェイス』で描かれる“共感”と“恐怖”
DCコミックスを代表する「バットマン」に登場する悪役の一人を主人公にしたDCユニバース最新作『クレイフェイス』(10月30日公開)。本作でメガホンをとったジェームズ・ワトキンス監督は、DCユニバースの世界観のなかでホラージャンルに挑んだ本作について「DCユニバースの境界を広げるチャンスがあることにワクワクしながら臨みました」と振り返る。
「人の心の奥に入り込むようなホラーを目指す」
「ゴッサム・シティが舞台なので、ニューヨークやシカゴのアナロジーでありながらドイツ表現主義的な雰囲気があり、壁が迫ってくるような圧迫感に、どこか歪んだ感じ、そしてフィルムノワール的な陰影。世界観の構築にはあらゆる可能性がありました。なによりDCコミックは、スーパーヒーローだけでなくホラーコミックスを手掛けていた歴史と伝統がある。そこに立ち返ることができる、非常に興味深く楽しい経験でした」。
本作の主人公はスター俳優のマット・ヘーゲン(トム・リス・ハリス)。彼は事故により美しい顔を失い、世間から“バケモノ”と嘲笑にさらされてしまう。そんななか、かつての輝きを取り戻したいという執念から禁断の治療へ手を伸ばす。元の顔を取り戻したものの、その代償として抑えきれない強烈な怒りの感情に支配され、次第に心も身体も蝕まれていくこととなる。
もともとは『ドクター・スリープ』(19)などで知られる現代ホラー映画界の名手マイク・フラナガンが企画を立ち上げ、彼が自ら脚本と監督を務める予定で進行していた本作。しかしスケジュールの都合でフラナガンは監督の座を降り、代わって就任したワトキンス監督は、ドラマシリーズ「マクマフィア」でもタッグを組んだ盟友ホセイン・アミニに、フラナガンの書いた脚本のリライトを依頼したのだとか。
「マイクは主人公が人間から怪物へと変貌していく見事な旅路を描いてくれていました。その構成は実に見事で、すばらしいアクションシーンもたくさんあった。なので、極力それを変えないようにしました」と、ワトキンス監督は説明する。「マイクの脚本のDNAをそのままに、新たなシーンを加えて登場人物の旅路に少し広がりを持たせたり、色合いを少しだけ変えていきました。マイクから受け継いだものを、私たちがごく自然なかたちで発展させていったのです」。
そのうえで「映画を作るという行為は、ある種の“執着”であり、マーティン・スコセッシが言ったように映画監督の仕事とは“自分の執着に観客を恋させること”」だと語るワトキンス監督は、自身が映画を手掛けるうえで「感情的な側面。すなわち、人間的で共感できるような側面」に“執着”していることを明かす。「ホラーを手掛けるうえでは、ジャンプスケアも欠かせません。ですが、それだけでなく人の心の奥に入り込むようなホラーも目指しています。そのためには、最も深いところにある恐れに触れる必要があるのです」。
