韓国映画の巨匠たちが釜山国際映画祭に集結!『もしもの愛』イ・チャンドン、ヨン・サンホ、ナ・ホンジンらトークの模様を総まとめ

韓国映画の巨匠たちが釜山国際映画祭に集結!『もしもの愛』イ・チャンドン、ヨン・サンホ、ナ・ホンジンらトークの模様を総まとめ

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10月6日から15日までの10日間にわたり開催された第31回釜山国際映画祭。今年も多種多様な珠玉の作品たちが集結するなか、韓国の巨匠たちのカムバックの場ともなった。今回は監督と主要キャストが集結したオープントークおよびGVなどの模様を、作品紹介と共にお届けしよう。

『もしもの愛』オープントークで明かされたイ・チャンドン監督の想い

【写真を見る】『もしもの愛』をはじめとしたオープントークの様子をプレイバック!
【写真を見る】『もしもの愛』をはじめとしたオープントークの様子をプレイバック![c]BIFF2026

日本でも一部劇場公開中の『もしもの愛』(10月23日より公開中、11月6日Netflix配信スタート)は、巨匠イ・チャンドン監督が『バーニング 劇場版』(18)以来8年ぶりに撮り上げた新作であり、9月に開催されたヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)の栄光を勝ち取った。労働運動で疲弊し深く傷ついたホソク(ソル・ギョング)とその妻ミオク(チョン・ドヨン)が、ドキュメンタリー監督イェジ(チョ・ヨジョン)の作品の題材になり、その夫であるサンウ(チョ・インソン)とも交流が始まることで生じる4者の葛藤と愛を描いている。

2組の夫婦の葛藤と愛を描く『もしもの愛』
2組の夫婦の葛藤と愛を描く『もしもの愛』[c]Netflix

オープントークではまず、イ・チャンドン監督が本作を構想するきっかけとなった、十数年前の韓国で起きたリストラと集団ストライキ、そして大規模な鎮圧について語った。監督にとって衝撃的だったのは、「労働者たちが解雇されたこと以上に、国民が労働者の味方をしなかったこと」だったという。「生存者と死者とを分けるほど深い隔たりがあり、さらに同じく解雇された者同士まで互いを憎み合う」という集団的なトラウマは、当事者たちだけの問題ではない。そう考えたイ・チャンドン監督は、そう考えた監督は事件の映画化に向けて動き始めたものの、「私が彼ら労働者の話を語る資格があるのか?」と自問し、制作を中断してしまった。その後長い時間が経ち、改めて「解雇された労働者の苦しみをただ“他者の苦しみ”として語るのではなく、映画監督の私が、彼らをどのような態度と倫理観でみつめられるのかという“私自身の物語”として率直に話すなら、撮れるかもしれない」と思い直し、『バーニング 劇場版』よりともに仕事をしている脚本家のオ・ジョンミ氏に話を持ちかけた。

息ピッタリのかけ合いを見せたソル・ギョングとチョン・ドヨン
息ピッタリのかけ合いを見せたソル・ギョングとチョン・ドヨン[c]BIFF2026

監督の真摯な想いに会場が厳粛な雰囲気に包まれる一方、俳優たちにマイクが渡されると一転、チームの和気あいあいとした様子が伝わってきた。特にソル・ギョングとチョン・ドヨンは、ともにイ・チャンドン監督のプロデュース作『君の誕生日』(20)や短編で共演していることもあり、気心が知れているからこそのやり取りを繰り広げた。チョン・ドヨンは「現場が楽しかったのは、おそらくチョ・インソンさんとチョ・ヨジョンさんのおかげですね。ソル・ギョングさんは少しぶっきらぼうだし、私が知る限り最も自己中心的な性格の1人なので、お互いに気遣いも配慮もしませんでした。でもお2人が加わってからは、優しく温かい雰囲気になりました。撮影が終わってお2人がソウルに帰ってしまうと、我々無愛想な者だけが残ってしまうんです」と“攻撃”。すかさず反論しようとマイクを手にしたソル・ギョングを「(マイクを)下ろして〜!」とやんわり諫め、全員が大笑いする一幕も。こうした会話にイ・チャンドン監督も「皆さんのおかげで、何だかこの映画がおもしろいものなんじゃないかと思えてきました」と、冗談を交えつつ笑顔を見せた。

チョ・インソンとチョ・ヨジョンの仲の良さも印象的だった
チョ・インソンとチョ・ヨジョンの仲の良さも印象的だった[c]BIFF2026

精力的な作家の代表格、ヨン・サンホ監督の『PARADISE LOST(英題)』

ドラマに映画にと精力的に作品を発表し続けるヨン・サンホ監督。今回上映された『PARADISE LOST』は、『顔 -かお-』(公開中)と同様に低予算で製作された作品だ。韓国では10月21日に劇場公開され、すでに118か国への配給も決まっている。キャンピングスクールバス失踪事件で息子ソヌを失ったシングルマザーのソヨン(キム・ヒョンジュ)。被害者のために作られた「楽園の子どもたち」というAIプログラムで喪失感を埋めていた彼女のもとに、9年後、ソヌ(ペ・ヒョンソン)が生還する。そこから思いも寄らない事件が巻き起こるサイコスリラーだ。

息子を失ったシングルマザーに降りかかる事件を描く『 PARADISE LOST』
息子を失ったシングルマザーに降りかかる事件を描く『 PARADISE LOST』[c]CJ ENM

ヨン・サンホ監督は記者会見で、母親が書いた3ページほどの物語をもとに小説「ブラック・インフェルノ」を執筆し、2020年に脚本化。その後、さらに改稿を重ねて本作を完成させたという製作過程を明かした。そして「『 ブラック・インフェルノ』の舞台はカナダとアメリカの国境地域の架空都市にある黒い崖でしたが、映画では炭鉱になりました。 小説では大自然のなかの深い闇と人間の深淵を対比させて、大自然さえも太刀打ちできない人間の巨大な深淵を描いたのですが、『PARADISE LOST』ではAI時代において人間的なものとは何かを問いました」と語った。

『실낙원』記者会見の模様
『실낙원』記者会見の模様撮影/荒井南

特に才気走る演技を見せたソヨン役のキム・ヒョンジュは、同様に母性愛の葛藤を扱ったヨン・サンホ監督の作品『JUNG_E/ジョンイ』(23)でも主演を務めている。「ヨン・サンホ監督も私も、ともに母性に関心と疑問が高いんです。人間の最も根本的なことですよね。そういうところで馬が合うんだと思います」と、監督への信頼を口にした。その後行われたGVでは、ヨン・サンホ監督は先ほど語った製作過程について「旧正月や秋夕に帰るたび、私の母がいつも『脚本を書くのは大変なんじゃないの?』と聞くので、『韓国語がわかって物語を創作できるなら、誰だって書けるよ』と答えたら、(物語を)渡してきたんです」と、家族とのエピソードを付け加えた。朝早くからの上映とGVにもかかわらず、情熱的な観客たちからは映画とキャラクターに対する深い質問が多く投げかけられ、キム・ヒョンジュが感涙する場面もあった。


関連作品

  • もしもの愛

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    チョン・ドヨン、ソル・ギョング、チョ・ヨジョン、チョ・インソン共演で描く、イ・チャンドン監督によるヒューマンドラマ
  • 顔 -かお-

    3.8
    742
    ヨン・サンホ監督が自身初のグラフィックノベルを映画化したサスペンス・ミステリー
  • 君の誕生日

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    セウォル号沈没事故で息子を亡くした遺族をソル・ギョング×チョン・ドヨン共演で描く
  • バーニング 劇場版

    3.8
    406
    イ・チャンドン監督が村上春樹の短編「納屋を焼く」の物語を大胆にアレンジして映像化
  • シークレット・サンシャイン

    4.3
    13
    チョン・ドヨンが第60回カンヌ映画祭主演女優賞を受賞したラブ・ストーリー