『どこよりも遠い場所にいる君へ』出演の玉木宏、自身の“声”を受け入れる過程や青春の象徴『ウォーターボーイズ』を回顧
「高津の客観的に物事を見ている感じは、共感できるかもと思いました」
七緒の身元引受人となる高津は、ガラの悪そうな見かけでぶっきらぼうな口調が印象的なキャラクターだ。「彼はなにかを知っている人だとは思うので、割と客観的に2人を俯瞰して見ているという感覚は大事にしました。もともとそれほど多くを語るタイプではないけれど、なにか裏に秘めたものがあるというか。そのうえで、近寄りがたい雰囲気を醸しだしている。だけど、ただ冷たい人間に見えてしまうのだけは避けたかったので、その塩梅を探りながら演じました」と高津をどのように捉えアプローチしたのかを解説。
「特に序盤は、和希目線だとなにを考えているのかわからない。目つきが怖いというのもあるけれど、終盤にかけてグラデーションをつけることで、結果としてやさしい人物といったところに導かれていけばいいなと思っていました。僕自身も必要以上のことはあまり喋らないタイプなので、客観的に物事を見ている感じは、共感できるかもと思いました。これまで散々『なに考えているかわからない』と言われてきたので(笑)」。
和希や七緒にとってメンター的な立ち位置になる高津のように、玉木にとっての高津のような存在とも出会いはあったのだろうか。「高校2年生のころにいまの事務所にスカウトされてこの世界に足を踏み入れたので、大人と触れ合う機会は多いほうだったとは思います。アルバイトもたくさんしていたので、自分より少し年上の方と接する機会も割と多かったなかでも、お好み焼き屋さんでのバイト歴は割と長かったのですが、そこで出会った4つ上の先輩にバイクを譲ってもらったことが、僕がバイクにハマったきっかけでした。古着系のオシャレもしていた先輩だったので、ファッションもかっこいいなと思っていたし、身近な人からの影響は大きかったと思います」。
吹替えやナレーションなどを務めることは多かった玉木だが、日本のアニメーション映画でキャラクターを担当するのは本作が初めてとなる。「僕自身のままでとオファーをいただいたので、初めてだからと構えるようなことはなかったです。ただ、テクニカル的なことで、距離感やニュアンスの乗せ方という部分は、意識していました。いままでやってきた声のお芝居のなかでは、一番実写に近いと感じました。これまで参加した作品では、自分が最初に声入れをするパターンが多くて、どなたの声も入っていなかったから、キャッチボールできている感じがないまま収録を終えた作品ばかりだったんです。今回は普通のお芝居に近いセリフだったことに加えて、僕の初日にすでに声入れは終わっている石橋さん、永瀬さんが一緒にスタジオに入ってくださって、3人のシーンは同時に声入れができたので、キャッチボールしている感覚を肌で感じることができて、これまでの声のお芝居のなかでは、すごくやりやすい環境下でできたと思っています」と充実感を滲ませる。
声での芝居に関しては「声だけですべてを具現化するのは難しいのですが、やればやるほど感覚的にわかっていくことだというのを実感しました」と素直な心境も明かしていた。「ただ!」と続ける。「2人は本当に声のプロフェッショナル。収録の第一声からバシッとスイッチが入って、『ずっと聴いていられる…』と世界観に引き込まれてしまうくらい、声だけでこの世界を作ることができるんです。すごいと思ったし、一瞬で劣等感を感じさせられました。『なんか負けた』という感覚が押し寄せてくるくらいに圧倒されました」と大絶賛した。
特徴のある声を持つ玉木だが、もともとはコンプレックスの塊だったという。「この仕事をやるようになって、ボイストレーニングも始めたのですが、そこで出会った先生の1人が、そのコンプレックスを取り除いてくれたおかげでいまがあると感謝しています。技術的なトレーニングはもちろんですが、マインドを変えてくれたというか。『もともと持った声を大事にしないでどうするの?』と、気持ちの後押しをしてくれる方でした。『声はあなたが持って生まれた武器。その声を最大限に生かす努力をします』という言葉に救われました。そう思えるようになってからは、似たような声の人がそれほどいなくてよかった、という考え方になりました。音楽をやっていた時期のボイストレーニングの先生でしたが、いい出会いをさせていただいたと感謝しています」。
「『ウォーターボーイズ』が、本当に学生時代の青春が詰まった時間でした」
青春をテーマにした作品に数多く出演してきた玉木。年齢を重ねたいまだからこそ感じる青春映画の魅力は「同じベクトルに向かっている熱量のようなもの」と語る。「学生時代はみんなでなにかをするたび、例えば、旅行ひとつをとってもそのひとつに熱量を注ぐものです。学生だからこそできるその熱量の向け方は、青春そのものという気がしています」としみじみ。
いまの玉木は青春との距離感をどのように捉えているのだろうか。「無邪気に全力投球できているかといったら、できていない気もします。学生時代にしかできないものなのかな…みたいに考えることはありますね」と懐かしそうな表情を見せる。「僕の経験でいうと『ウォーターボーイズ』という作品が、仕事だけど本当に学生時代の青春が詰まった時間でした。いまだに本当に仲がいい。撮影が2000年だったので、恐ろしいことにもう四半世紀を超えているのですが、地方合宿をして、練習だけで1か月半という時間を費やしてから本番に臨むような作品に参加できる機会は、いまはなかなか少なくなっていると思います。そういった背景も含めて、僕にとっての青春が詰まった特別な作品になっています」と青春時代から続く関係性にも触れた。「青春というと特に学生時代を思い浮かべるので、同い年や近い世代での話になると思うのですが、『ウォーターボーイズ』はキャストの年齢層が一番上と下で10歳離れていました。それが同じような学年のつもりで青春をすごせるなんて…。本当に特別な関係だと思います」。
取材・文/タナカシノブ
