これで何度目の記憶喪失?元ボクサー俳優リーアム・ニーソンに“ハードボイルド”なオヤジ役がハマるワケ
実力派俳優としての演技力と190cmを超すほどの体躯から放たれる無骨な存在感を活かし、50代半ばからアクション俳優へと転身したリーアム・ニーソン。タフで渋い男として無双状態のニーソンの最新作『ハードボイルド』が10月9日より公開された。裏社会に生きる男の最後の正義を体現する本作は、これまでも数々のハードボイルドなキャラクターを演じてきたニーソンだからこそ演じられるようなタフさと哀愁が漂うまさにハマり役。ここではその説得力の裏側を、過去作やパーソナリティとのリンクからひも解いていきたい。
ハンス・ペテル・モランド監督との再タッグで人生を顧みる男に
雪深い田舎町を舞台に、息子を殺された模範市民のオヤジがブチギレて、犯罪組織を血祭りに上げていく佳作『スノー・ロワイヤル』(19)でも相性のよさを見せつけたハンス・ペテル・モランド監督との再タッグとなる『ハードボイルド』。近年、繰り返しアクション映画からの引退を示唆しているニーソンにとって一つの集大成とも言える本作は、裏社会に生きてきた一匹狼が自らの信念を貫き、人生の落とし前をつけるため最後に立ち上がるというクライムアクションだ。
ボクサーだった経験を活かし、拳一つでボストンの裏社会で成り上がってきた運び屋の男は、徐々に記憶が失われる残酷な病に蝕まれていた。これまでの暴力にまみれ、家族を蔑ろにしてきた人生の贖罪として、すべてを忘れる前に正しいことをしたいと願うようになった矢先、長年の友人の裏切りを知り、残された命を懸けて善行をしようと立ち上がる。
元北アイルランドチャンプの経験を活かし、元ボクサー役を熱演!
『ハードボイルド』では、月末に懇意のジムに顔を出し、若手相手のスパーリングで小遣いを稼いだり、疎遠だった孫にボクシングを仕込んだり、巨体の男を拳一撃で沈めたりとボクシングの要素が随所に登場する。記憶が失われていく自分に苛立ち、家の壁を手が血まみれになるまでリズミカルに殴り続ける様子など、拳を繰りだす姿からは抜群の説得力が漂っているがそれもそのはず。
役同様にニーソン本人も子どもの頃からボクシングを嗜むと、11歳の時には北アイルランドのチャンピオンになったという実力者。俳優になる前は一時、アマチュアボクサーとしても活躍したという。
また38歳の時に出演した『スピリット/傷だらけの栄光』(90)では炭鉱の閉山をきっかけに、闇ボクシングの世界に足を踏み入れる主人公も演じており、トレーニングから試合まで、ボクサーが出来上がっていく変身をナチュラルに体現した。
記憶を失う役もお手のもの!
さらに、記憶が失われていく裏社会の男という役どころも、これまで何度も演じている十八番。繰り返しタッグを組んでいるジャウム・コレット=セラ監督との初仕事となった『アンノウン』(11)では、交通事故によって記憶喪失になった植物学者かと思いきや、実は凄腕の殺し屋だったというユニークなキャラクターを熱演。記憶が戻らないことに苦しみながらも、体に染みついたスキルで敵を撃退していく様子をニューロティックな演技とハードなアクションで表現した。
またマーティン・キャンベル監督がメガホンを握ったその名もズバリ『MEMORY メモリー』(22)で演じたのは、アルツハイマー型の認知症を患い引退を決意した殺し屋。最後の仕事に挑むが、ターゲットがポリシーに反する子どもだったため殺しを拒否。逆に命を狙われながらもターゲットを守るために奮闘する…というニーソン映画あるあるなストーリーだ。どんな強者も恐れず容赦なく鉄槌を下す一方、着々と進行していく病に不安な顔をのぞかせるなど、オヤジの悲哀も背負った姿は説得力抜群だった。
そして『ハードボイルド』では、元ボクサーゆえにパンチドランカーとなってしまい、ボスや子どもの名前が出なかったり、知り尽くしているはずの道がわからず家にたどり着けなかったり…と記憶に翻弄される様子が過去作以上につぶさに描かれる。途方に暮れていたかと思えば唐突にブチギレたりと、病で疲弊していくタフガイを真に迫った表情で体現。あまり見たことがないションボリ顔を交えながら、記憶を失う恐怖や混乱をスクリーンに描きだしている。
