スティーヴン・スピルバーグが最新作『ディスクロージャー・デイ』を語る!「いつか現実に起こりうる物語」
「この物語に絶対に必要なものは“勢い”です。観客を、圧倒するような旅に連れだす。その興奮を冒頭から味わわせたかったのです」。半世紀以上にわたって世界の映画界のトップランナーとして走り続けるスティーヴン・スピルバーグ監督は、約4年ぶりの監督作となった『ディスクロージャー・デイ』(10月1日公開)について語りはじめる。
『ジュラシック・パーク』(93)や『宇宙戦争』(05)など、これまで複数のスピルバーグ作品に携わってきたデヴィッド・コープが脚本を務めた本作。地球外生命体に関する機密情報を知ってしまった気象キャスターのマーガレット(エミリー・ブラント)とサイバーセキュリティのエキスパートであるダニエル(ジョシュ・オコナー)。その秘密を明らかにする使命を負った彼らの前に、謎の組織が立ちはだかることに。
「今作は、機密情報がディープステートの施設から盗みだされるところから始まります。秘密裏に施設を操る組織のなかに、コリン・ファースが演じるノア・スキャンロンという男がいる。組織は機密開示を阻むためには手段を選ばない。物語はノンストップの壮大な追跡劇になっていて、最後まで突っ走っていくことになるでしょう」と、スピルバーグ監督は本作が息もつかせぬスリルを携えたSFサスペンスであることをアピール。
「この時代に本作を公開することはとても興味深いことだと思います。“真実”が明らかになったとしても、そこには多くのデマも飛び交っている。結局のところ、“彼らの存在”を信じる人と信じない人とで半々に分かれるはずです。現代社会は巨大な分断のなかにあり、国家も世界も深く分断されていて、特にアメリカでは深刻さが増している。たとえ“真実”が証明されたとしても、『本当に真実なのか?』と疑われ続けることは避けようがありません」と、意味深長な言葉を述べた。
これまで『未知との遭遇』(79)や『E.T.』(83)、『宇宙戦争』など、あらゆるSF映画を世に送りだしてきたスピルバーグ監督。本作は、彼が子どものころから強い関心を寄せてきた“宇宙に秘められた大いなる未知”というテーマを、80歳を目前に控えた現在の視点と感性で具現化したものだ。
そのきっかけとなったのは、2017年12月にニューヨーク・タイムズ誌で掲載された「Glowing Auras and ‘Black Money’: The Pentagon’s Mysterious U.F.O. Program」というタイトルの記事だったという。“未確認異常現象(UAP)”を調査する極秘の軍事情報計画に米国国防省が資金を投じているという暴露に加え、海軍の戦闘機がサンディエゴ沖でUFOと遭遇したという動画も公開された。「その映像を見た時、突然気づきました。いまだからこそ語れる新しい物語があるのかもしれないと」。そうして、政府やその背後にいる組織が一般市民に隠してきた情報を“開示”する物語を、「いつか現実に起こりうる物語」として書きはじめたと力説する。
タイトルの“ディスクロージャー・デイ”とは、日本語で“開示の日”を意味している。「いまの時代に、なぜ真の情報開示は先送りにされるのだろうか。私たちには知る権利があるのに、余計なことは知らされても肝心なことは知らされてはいない。政府は科学的になにも証明できないような不鮮明な映像を公開している。そして、それがなにかは国民自身が判断すべきだと言っている。だが80年もの間、なにと関わってきたのかを明らかにしなければ、それは真の情報開示とは呼べません」と疑問を投げかける。
「本作が描くのは、真の意味での情報開示です。もしかすると、真相を知ることを恐れ、現状維持を望む人もいるでしょう。でも真実を求める人は、同時に知る覚悟もできているはずです。情報開示の危険性は、人々の世界観が崩れることでもあります。その衝撃は、世界や宗教にも及び、人々の信仰心が試されることにもなりかねない。神が天と地をお創りになられたといわれているが、地球だけでなく宇宙も創っていたのかもしれない。そう考えると、確実に私たちは宇宙で孤独ではないのです」。
そして「SFは、従来の物語の枠組みを取り払ってくれるものです」と語るスピルバーグ監督。「現実を忘れて語り手の世界に身を委ねる。SFにはそんな自由があるから、多くの人に愛されているのでしょう。本作をSFとして観る人もいれば、やがて現実になるものとして受け止める人もいるかもしれない。どちらの見方もできるはずだす」。はたして本作でなにが描かれ、我々はなにを目撃することになるのか。是非とも劇場のスクリーンで、その目に焼きつけてみてはいかがだろうか。
構成・文/久保田 和馬
