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ジョン・マルコヴィッチがヴォルピ杯受賞の感謝を語る『ワイルド・ホース・ナイン』ヴェネチア国際映画祭ワールドプレミアの模様を現地レポート!

ジョン・マルコヴィッチがヴォルピ杯受賞の感謝を語る『ワイルド・ホース・ナイン』ヴェネチア国際映画祭ワールドプレミアの模様を現地レポート!

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『スリー・ビルボード』(17)、『イニシェリン島の精霊』(22)のマーティン・マクドナー監督が、サーチライト・ピクチャーズとの3度目のタッグで贈る『ワイルド・ホース・ナイン』(2027年1月29日日本公開)のワールドプレミアが、現地時間9月3日(木)に第83回ヴェネチア国際映画祭で行われた。上映後には約15分間にわたる熱狂的なスタンディングオベーションが続き、詰めかけた観客から惜しみない拍手が贈られた。

プレミアが行われたパラッツォ・デル・シネマ(映画の殿堂)には、マクドナー監督をはじめ、ジョン・マルコヴィッチ、サム・ロックウェル、スティーヴ・ブシェミ、マリアナ・ディ・ジローラモ、アイリン・サラス、パーカー・ポージーらキャスト&スタッフが集結。

第83回ヴェネチア国際映画祭にて開催された『ワイルド・ホース・ナイン』ワールドプレミアの様子
第83回ヴェネチア国際映画祭にて開催された『ワイルド・ホース・ナイン』ワールドプレミアの様子[c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

本作はマクドナー監督によるオリジナル脚本を、監督自身が演出した最新作。短編映画『シックス・シューター』(04)でアカデミー賞短編実写映画賞を受賞したマクドナー監督だが、長編では『スリー・ビルボード』で作品賞、脚本賞に、『イニシェリン島の精霊』では作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされているものの受賞には至っておらず、長編でのアカデミー賞受賞が期待されている。

舞台は、チリで軍事クーデターが起きる直前の1973年。“モアイ像”で知られるイースター島に降り立ったCIAエージェントのクリス(マルコヴィッチ)とリー(サム・ロックウェル)は、それぞれの過去や進行中の陰謀と格闘するなか、自由を求める反権力派の学生モニカ(マリアナ・ディ・ジローラモ)とアリシア(アイリン・サラス)に出会う。やがて、CIA南米支局長のMJ(スティーヴ・ブシェミ)を巻き込む事態へと発展していく。

ジョン・マルコヴィッチが、自身初のヴォルピ杯(最優秀男優賞)を受賞!

9月12日の映画祭閉幕式では、マルコヴィッチが同映画祭の最優秀男優賞にあたるヴォルピ杯を初受賞。新作の撮影でカナダ、モントリオールに滞在していたため、授賞式には欠席となったが、ビデオメッセージを寄せ「ヴェネチア国際映画祭の83回の歴史のなかで、実に多くのすばらしい俳優たちに贈られてきたこの賞に選んでいただき、光栄に思います。この栄誉を与えてくださった審査員の皆さん、そしてこのすばらしい脚本を書き、見事な演出をしてくれたマーティン・マクドナーに感謝します。彼が私にこの最高の役を与えてくれたことにも。そして共演してくれたすべてのすばらしい仲間たちに、とりわけ“相棒”である偉大なるサム・ロックウェルに感謝を伝えたい」と喜びを語った。

【写真を見る】第83回ヴェネチア国際映画祭にて、ジョン・マルコヴィッチがヴォルピ杯(最優秀男優賞)を受賞
【写真を見る】第83回ヴェネチア国際映画祭にて、ジョン・マルコヴィッチがヴォルピ杯(最優秀男優賞)を受賞[c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

プレミア翌日に行われた公式記者会見では、マルコヴィッチが本作のオファーを受けた理由について、「すばらしい脚本だったので、決断は簡単でした」と振り返り、脚本への信頼を強調。「このような脚本には、めったに出会えません。台本の100ページほどに、私たちが知り、学ぶべきことはすべて書かれていました」と語った。記者から、キャリアを築くなかでどのように役を選んでいるかと問われると、「私は人生を通して、大好きなことをやってきました。これからもそれを続けていくつもりです。引退するつもりはありません。時が来れば、周りが私を引退させてくれるでしょう。それが物事の自然な流れだと思いますから」と、生涯現役の構えを語った。

脚本を手掛けたマクドナー監督は、物語の着想について「10代の頃からずっと気になっていた、『アジェンデ政権転覆へのCIAの関与』というテーマを背景に据えることを思いついたとき、初めて物語がひとつにまとまりました」と説明。撮影地となったイースター島(ラパヌイ)についても、「野生の馬たちが島を自由に歩き回る姿が忘れられず、そこからずっと、馬は物語の要素であり続けました」と振り返った。

1973年のチリ軍事クーデター直前を舞台に描かれる『ワイルド・ホース・ナイン』
1973年のチリ軍事クーデター直前を舞台に描かれる『ワイルド・ホース・ナイン』[c]Searchlight Pictures Courtesy Everett Collection

1973年を舞台にしながら現代社会にも通じる点を問われると、マクドナー監督は「いま、恐ろしいのは、こうした行為がもはや隠される様子すらないということ。70年代の連中には、少なくとも自分たちの所業を秘密にしておくだけの分別があったのに」と指摘。「脚本を書いていた当時は、あくまで1973年当時のチリについて語るつもりでした。でもいまこうして見返すと、現在の地政学的な状況ともつながる部分があるように感じます。意図したわけではないけれど、この題材に向き合っていると、自然とそうした要素が入り込んでくるものだと思う。歴史的な物語に見えて、いまの世界ともつながりを持つ作品が観客にどう受け止められるのか、とても興味深いです」と語った。

マルコヴィッチとの“老夫婦のような”掛け合いについて問われたロックウェルは、「なによりもまず、すばらしい脚本があったから」としたうえで、「僕たちは何度も何度もセリフを読み合わせ、互いを知り尽くしていきました」と共演者との信頼関係を明かした。稽古中のエピソードも披露し、本読みの際、マクドナー監督から「そのセリフ、もう少し熱を上げてくれませんか」と演出を受けたマルコヴィッチが一気に迫力を増した瞬間があったといい、「あの瞬間、『これはとんでもないものになるぞ』と、マーティンと顔を見合わせました(笑)」と振り返った。さらに本作をエレイン・メイ監督の『マイキー&ニッキー』(76)や監督自身の代表作『イニシェリン島の精霊』になぞらえ、「僕はいわばブレンダン・グリーソン役で、ジョンは“真実を語る者”。マーティンの作品にはいつも、真実を語る役がいるのです」と、自身の役どころをユーモラスに解説した。

イースター島では「なにも持ち込まず、なにも残さない」方針のもと、住民へのリスペクトをもって撮影

撮影は本作の舞台であるイースター島で実際に行われた
撮影は本作の舞台であるイースター島で実際に行われた[c]Searchlight Pictures Courtesy Everett Collection

マルコヴィッチは、自身が長年携わってきた別の題材との接点にも触れた。かつてシカゴのステッペンウルフ・シアターで、ケネディ暗殺を題材にしたドン・デリーロの小説「リブラ 時の秤」の舞台化に携わった経験があり、「フィクションという形でこの題材を扱ったことがあります」と振り返った。さらに今年の4月には、チリの作家ロベルト・ボラーニョの小説を原作にした舞台作品「The Infamous Ramirez Hoffman(英題)」の南米ツアーをサンティアゴで終えたばかり。「脚本さえあれば、あとに必要なものはすべてそこにあります。特にこの脚本のような作品には、めったに出会うことができません」と改めて強調した。

撮影地イースター島(ラパヌイ)での許諾を巡っては、マクドナー監督が舞台裏を明かした。チリの制作会社を通じてラパヌイ族評議会に接触したのは撮影開始の約1年前。「彼らに私たちを信頼してもらうため、そして私たちも彼らを信頼できるよう、時間をかけて関係を築きました」といい、世界遺産にも登録される島には約1000体のモアイ像が点在し、いずれも神聖なものとして扱われているという。「なにも持ち込まず、なにも残さない」という方針のもと撮影は行われ、「ラパヌイの人々に、私たちが彼らを心から尊重していることが伝わっていたらうれしい」と語った。

マーティン・マクドナー監督がサーチライト・ピクチャーズとタッグを組むのは、本作が3度目
マーティン・マクドナー監督がサーチライト・ピクチャーズとタッグを組むのは、本作が3度目[c]Searchlight Pictures Courtesy Everett Collection

ブラック・コメディでありながら実在の歴史に根ざした題材について問われたマクドナー監督は、「CIAが過去50年、60年にわたって世界中で行ってきたことの真実に、ずっと関心を持ってきた」と説明。本作にはグアテマラやコンゴ、ピッグス湾事件への言及も盛り込まれているといい、「KGBがどんな組織かは誰もが知っているが、CIAの活動については、同じようには疑問視されてこなかったように思います」と話した。

スティーヴ・ブシェミは、CIA南米支局長という一癖ある役どころについて、「部下の2人をコントロールできず、特にジョンの役からはまるで敬意を払われていない。彼は嫉妬している」と役作りを説明。マクドナー監督との出会いについても、「数年前、ここヴェネチアで『イニシェリン島の精霊』が上映されたとき、僕はほとんどストーカーのように彼につきまとって、『絶対に一緒に仕事をしないと』と迫ったんです(笑)」とユーモラスに明かし、会場の笑いを誘った。

親しげに肩を組むサム・ロックウェル(左)、マーティン・マクドナー監督(中央)、ジョン・マルコヴィッチ(右)
親しげに肩を組むサム・ロックウェル(左)、マーティン・マクドナー監督(中央)、ジョン・マルコヴィッチ(右)[c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

会見では早くもアカデミー賞への期待を問う声も上がったが、マルコヴィッチは「一番うれしいのは、この作品そのものに注目が集まること。すばらしい演者が揃い、脚本も演出も見事な作品だということが、私にとって一番大切なことです」と謙虚に語った。

なお本作は、10月26日(月)より開幕の第39回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門でのジャパンプレミアも決定している。世界中の映画祭での熱狂的な上映を経て、『ワイルド・ホース・ナイン』は2027年1月29日(金)、日本公開を迎える。


取材・文/平井伊都子

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