A24史上最年少にして最高のヒットを記録!『バックルームズ』ケイン・パーソンズ監督が語る、「人と外の世界との関係を問い直す」物語

インタビュー

A24史上最年少にして最高のヒットを記録!『バックルームズ』ケイン・パーソンズ監督が語る、「人と外の世界との関係を問い直す」物語

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「普遍的な、非常に見過ごされがちな細部を見つけて、そこに大きな重みを与えるのが好き」

パーソンズ監督が繰り返し口にしたのが、「リアリティの感覚を合成する」という感覚だ。YouTube時代に培ったこの手触りについて、彼はこう説明する。「YouTubeで一番楽しんでいたのは、“リアリティの感覚を合成すること”です。なにかがあまりに突飛だったり、逆にあまりに特定的すぎたりする作品を観たときに感じる、あの微妙な感覚を呼び起こす方法を見つけること。特定的すぎてキュレーションするのが難しいような、なにか生きた有機体を捉えているような、設計図から何度も作り上げられたものではない自然さです。あらゆる人に普遍的な、非常に見過ごされがちな細部を見つけて、そこに大きな重みを与えるのが好きなんです」。子ども部屋のように、人は自分が生きてきた空間と、口には出さない深い関係を築いている――そう語るパーソンズ監督のもとには、公開後、忘れていた記憶がよみがえったという声が数多く届いているという。「『40年間思い出したこともなかったような空間に、この映画が思考を連れ戻した』と語ってくれた人を、何人も見てきました」。

撮影のために約3万平方フィートに及ぶ“バックルームズ”のセットが作られた
撮影のために約3万平方フィートに及ぶ“バックルームズ”のセットが作られた[c]2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

このリアリティへのこだわりは、劇中の心理描写にも及ぶ。潜在意識的な側面を描くにあたり、セラピストや心理学者に相談したのか尋ねると――「土台となる部分で言うと、私の母がセラピストなので、日常的にそこから学んでいる部分があります。加えて、プロデューサーのひとりのパートナーもセラピストで、かなりの頻度で話をしました。劇中では、レナーテ(・レインスヴェ)演じるメアリーが“模範的なセラピスト”というわけではない、という設定を意識しています。セラピーが正しく行われないケースというのもあるわけで、劇中で描いているのは、その時点における特定のバージョンのセラピーです」。

ある夜、クラーク(キウェテル・イジョフォー)は自身が店主を務める家具店の地下で“バックルームズ”への入口を発見する
ある夜、クラーク(キウェテル・イジョフォー)は自身が店主を務める家具店の地下で“バックルームズ”への入口を発見する[c]2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

バックルームズ』自体の“心理学”については、慎重な言い回しが返ってきた。「クラーク(キウェテル・イジョフォー)が劇中で語る“記憶のロジック”には、実際そこまで忠実に基づいているわけではありません。それは人々がこの空間に対して後付けで見出しているものです。バックルームズという空間は、投げかけられたものを何でも吸収してしまう、いわば白紙のキャンバスのようなもの。もし“記憶からできている”と信じるなら、そう思わせるだけの手がかりが用意されている、という程度のことです。すべてを説明できる疑似科学的なシステムは存在しますが、観客にはそれが明かされません。登場人物たちがそれと折り合いをつけようとしているだけなんです。だからこそ、そのあたりをしっかり把握しておく必要がありました。私自身、素人目線ではありますが、心理学について知ることを楽しんでいます。セラピー面での助言も受けましたし、全体としての論理が破綻のない閉じたループになるよう、私自身もかなり調べました」。

「目的は怖がらせることよりも、人と外の世界との関係を問い直すことにある」

心理カウンセラーとしてクラークのセラピーを担当する医師メアリー役にレナーテ・レインスヴェ
心理カウンセラーとしてクラークのセラピーを担当する医師メアリー役にレナーテ・レインスヴェ[c]2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

子どもから年配層、普段ホラーを観ない層まで――なぜ『バックルームズ』はこれほど幅広い観客に届いたのか。「制作段階から、年齢層で観客を絞り込むことはしていませんでした。デモグラフィックに対してはできるだけ意識しないようにしています。ある意味、自分自身のために作っている部分もあって、抽象的なSFのギミックや、超自然的な器を通して人生の大きなシステムを処理することに近い興味を持つ人たちが、同じポイントで盛り上がってくれたら、という思いです」。

ホラー映画として括られることについても、パーソンズ監督自身の感覚は少し異なるという。「マーケティング上はホラーとして受け止められるだろうと理解していましたが、自分では単純にホラー映画として作った感覚はありません。目的は怖がらせることよりも、内省を促すこと――人と外の世界との関係を問い直すことにあります。誰もがそこから自分なりになにかを受け取るものですし、確かに怖い瞬間もあります。ただ、根底にあるのはハードSFのロジックで、それが謎めいた、ノスタルジックな核を持つベールに包まれている。若い世代に馴染み深い題材ではありますが、突き詰めれば、ほぼ時代を超越した“建築的な空間”の話なんです。若い観客だからこそ特別な意味を持つ、という要素は本質的にはありません。むしろ、より単純で手触りのあった時代へ立ち返るための、一種のタイムトラベル装置として機能している。なにかに行き詰まりを感じている人にとっては、失ったものを取り戻す可能性を開いてくれる作品だと思います。だから、若い観客を惹きつけたのはこの作品自体の魅力だけではなく、長年インターネットがこのアイデアを扱ってきたことも大きいはずです。それでも、結果としてはそれよりずっと広い層に届いているようです。というのが、私のとりとめのない話です」。


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