一度入ったら脱出不可能!?『CUBE』に『8番出口』、話題の『バックルームズ』まで異質な空間ホラーたち
一見快適そうな人工的ディストピアから抜け出せない『ビバリウム』(19)
異様な街に住むことを強いられたカップルをジェシー・アイゼンバーグとイモージェン・プーツが演じたSFスリラー。不動産業者に紹介され巨大な住宅街ヨンダーを見学したトム(アイゼンバーグ)とジェマ(プーツ)は、迷路のような街から出られなくなってしまう。街は同じ形のパステルカラーの家が延々と続き、どんなに車で走ってもなぜか自分の家に舞い戻ってしまう謎仕様。ライフラインは整い、なぜか食事も届くため仕方なく暮らし始めた彼らのもとに、ある日、赤ん坊の入った段ボール箱が届く。そこには「子どもを育てたら解放される」と書かれていて…。
ビバリウムとは飼育室のこと。2人はやむなく子どもを育て始めるが、しだいに精神を病んでいく。気候は穏かで過ごしやすく空には綿あめのような雲が浮かんでいるヨンダーは、見た目だけが快適な人工的ディストピアだ。仕組みやルールは異なるが、『トゥルーマン・ショー』(98)や『ドント・ウォーリー・ダーリン』(22)などでも、人工的な世界に違和感を抱く人々の姿が描かれている。
人間の尊厳や倫理観を問う階層空間『プラットフォーム』(19)
2人1組の牢獄のような部屋が無数に階層になった塔で暮らす人たちの物語。天井と床の中央に穴が開いた部屋で目覚めた男は、同室の老人からここは塔のような建物で、食事は上層階から台座に乗って穴を降りてくると知らされる。ただし、上階の住人たちから順に食べていくため、下層階に着くころには食べ残しばかりでそこにいる人は常に飢餓状態。月に一度の部屋替えで運がよければ上層階に行けるが、男は体を縛り付けられた状態で目覚める…。
部屋はいくつかの小窓とベッドがあるだけで、穴から見える上下の住人たちとの交流は禁止されている。唯一の楽しみは食事だけで、ありつけないと自殺をしたり、時に同室の相手を食べるしかない過酷な世界。そこで一人の少女を救おうとする男を通し、人間の尊厳や倫理とはなにかを問うダークなファンタジーになっている。
幼い姉弟が怪現象に見舞われる『SKINAMARINK/スキナマリンク』(22)
子どもの悪夢をそのまま映画にしたような幻想的なゴーストホラー。深夜、目を覚ました幼い姉弟は父親の姿が見当たらないことに気が付いた。家中を探し回っていた2人は、家そのものに異変が起きていることを知る。勝手に転がるオモチャ、クローゼットが開いたり不穏な音や声が聞こえてくるなど定番のポルターガイスト現象に加え、部屋の扉やトイレの便器が消失したり、子どもの肉体が変容するなど理解を超えた謎現象が本作の魅力。暗くて解像感が低い、フィルム傷も見られるスーパー8を思わせる映像や音の加工もおもしろい。ジャンプスケアではなく、暗闇やわずかな照明に照らされた壁と天井のテクスチャなど、うす暗い家の怖さで圧倒する、実験的な異色作といえる。

