國村隼が『ブラック・レイン』の記憶と共に語る、リドリー・スコット監督作『ラスト・サバイバー』の真価「人間の本質を見つめている」
「『ブラック・レイン』の現場は楽しくてしょうがなかったですね」
亡き妻との思い出を抱えて生きる主人公ヒッグを演じているのは、ギレルモ・デル・トロ監督作『フランケンシュタイン』(25)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジェイコブ・エロルディ。次期ジェームズ・ボンド候補としても注目を浴びる俊英だ。
「まず主演のエロルディさんの演技が非常に的確でした。人に対する優しさをにじませながら、希望を失わず強く生きる姿を表現されています。余計なことは一切せず、寡黙な芝居でそれを表現するのは難しいんですが、見事に深みのある役として完成させていました」と称賛する。
その相棒バングリーを演じているのは『トゥルー・グリット』(10)や『DUNE/デューン 砂の惑星』(20)でおなじみジョシュ・ブローリン。他人を信じず自分のスキルだけで生き抜く不屈のタフガイだ。「リアリスティックなストーリーの中、ブローリンさんのキャラクターは、アクションや笑いを誘うユーモアなどエンタテインメントの部分を担っています」。
前述の2人のほか、マーガレット・クアリーとガイ・ピアースを加えた主要キャストわずか4人の本作は、技巧派たちの演技がじっくり味わえるのも魅力だという。「メインで活躍する人々を揃えたキャスティングの妙と、表現するスキルの高い役者さん同士の組み合わせもすばらしかったです」。
國村の出世作が、映画ファンの間でいまだ高い人気を誇るスコット監督作『ブラック・レイン』だ。「大阪に来たリドリーにオーディションで選んでもらえたんですが、舞台役者の僕にとって映画はまだ2本目。画角の中でどう存在しパフォーマンスすればいいのかもわかっていませんでした」という國村は、現場で実践しながら学んでいったという。
「あの現場ではつねにカメラが4台回り、1カット平均7テイクは撮ったんです。一発OKもNGもなく、4台×7テイクで28パターンを撮るわけです。ある時、4テイク目まで撮ったあと、監督に呼ばれて『クニ、君はずっと同じパフォーマンスしてないか?』と言われたんです。それが当たり前だと思っていたんですが、次のテイクを自分なりに変えてみたらサムズアップしてくれて(笑)。その時に僕たちがやるべきことは作品のためのピース、素材作りだと気づいたんです」と撮影時を思い出しながら語った。
そんな現場を共演の松田優作と楽しんだという。「優作さんも『このシーケンスに対するお前のイメージはそれだけか?』と問われてる気がすると言って、ワンテイクごとにまったく違うパフォーマンスしてました。そんな現場が楽しくてしょうがなかったですね」と振り返る國村は、『ラスト・サバイバー』でも俳優なりのパフォーマンスを感じたという。「あるシーンで、ブローリンさんがコーヒーカップを手にパンツ一丁でふらりと現れるおもしろいパフォーマンスをしてるんです。このカットなんかはおそらく監督の指示ではなく、役者さんのイメージで演じたんだと思います」。
スコット監督と『ブラック・レイン』を撮影した翌年に東京で再会したという國村。「1989年の東京国際映画祭で『ブラック・レイン』が招待作品になり監督も東京にいらしたんです。拙い英語力ながら泊っていた帝国ホテルに連絡をしたら、『上がっておいで』と言ってくれました。彼の部屋で朝食を摂りながら、俳優という仕事についてお話を伺いました。その時に『僕はパフォーマーである君たちが、なにを見せてくれるのか待ってるんだ。どんなふうにイメージしそれをどう変えながら表現するかは君たちの仕事だよ』などいろんな話を聞かせていただきました。自分にとってリドリー・スコット監督は、映像の中で俳優はなにをすべきかを教えてくださった師匠でもあるんです」。

