「告白-25年目の秘密-」と『白鳥とコウモリ』で見比べたい松村北斗――“普通”に奥行きを与える稀有な表現力
純愛か、執着か?ドラマ「告白」ではクセのある男に
ドラマ「告白-25年目の秘密-」で松村が演じている雪村爽太は、和真とはまた違った意味で“普通だけど普通じゃない”青年だ。
化粧品会社「野瀬化粧品」の総務部に勤める爽太は、自己主張が少なく穏やかで、周囲への気遣いも忘れない人物。ところがその胸には、幼い頃から25年間も想い続けてきた一途すぎる恋心を秘めている。初恋の人であり、いまでは上司でもある野瀬麻里子(岡崎紗絵)を陰から見守り、悩みの種になりそうなものがあれば先回りして排除する。その行動は時としてエスカレートし、一途な愛情なのか、危うい執着なのかと観る者を惑わせる。この“境界線の揺らぎ”こそが視聴者を惹きつける本ドラマの大きなポイントだ。松村は感情表現を絶妙に足し引きしながら、爽太という一筋縄ではいかない人物を作り上げることに成功している。
「僕は君の運命の人になるって決めたんだ」という発言や「彼女のパクチーになれないかな」と真顔で口にする独特な感性、さらには殺人事件を捜査する警察官に挑発的とも取れる大胆不敵な発言も。仕事ぶりも優秀で、時には探偵ばりの推理力も発揮する。その一方で麻里子の幸せのためなら潔く身を引く決心をするなど、自分自身のこととなるとどこか自信を持ちきれない一面ものぞかせる。そんな一見相反するような顔が、爽太という人物のなかに違和感なく同居しているところがおもしろい。
本人も自覚している通り、爽太の行動はストーカー行為と紙一重だ。それでも松村の芝居を通すと、爽太の根底にあるのは25年間こじらせ続けた初恋なのだと感じられ、「自分にもそんな“運命の相手”がいたら…?」と考えさせられる瞬間もある。そんな危うさだけでは終わらない不思議な魅力を松村は爽太に与えている。
ごく“普通の青年”でありながら、まったく異なる表情を見せる和真と爽太。2つの役を同時期に見比べることで、松村の俳優としての表現力の幅広さが改めて浮かび上がってくる。異なるアプローチでそれぞれの“普通”に奥行きを与える俳優、松村北斗の魅力を両作品でじっくり味わってみてはいかがだろうか。
文/足立美由紀
