「筋肉美×おちゃめな“ニコイチ”バディが愛しい!」ガイ・リッチー監督最新作『グレイ・ミッション』を漫画家・竹内絢香がイラスト描き下ろし
ブリティッシュ・ジョークは、“イケズ”な冷笑だからこそスマート
リッチー監督は、法の届かぬ“グレイゾーン”を描くにあたり、弁護士や金融関係者に徹底リサーチをし、リアリティのある脚本を仕上げた。竹内は、ひと筋縄ではいかないストーリーについて「わかりやすい勧善懲悪ものではなく、どちらかといえばダークヒーローものですね。白黒つけられない事件に対して果敢に挑む作品だからこそ、任務の過程を丁寧に描きこむことで、観客がちゃんと共感でき、かつ応援もできるというスタイルを取ったのかもしれません」と解釈した。
「“アクション大作”と銘打つと、帯(おび)としては非常にわかりやすいですが、本作でやっていることはすごく難しいこと。ちゃんとリサーチしたうえで作られた物語で、作り手側の視点から見ると、かなりチャレンジングな作品ですね。また、凶悪な出来事を1回で語ってしまわず、1つずつ細かいシーンを積み上げていくのが、ガイ・リッチー作品のスタイルかと。観終わったあとにカタルシスを得られるところもすばらしい」と心から称える。
ウィットに富んだブリティッシュ・ジョークもリッチー作品の魅力の1つだ。竹内は「アメリカの笑いは、シットコム的に“あはは!おもしろかった!”という感じですが、イギリスのジョークは、いわば“冷笑”的なものが含まれます。それは“イケズ”な感じの笑いで、自分自身をも客観的に見ることで出てくる笑いなので、スマートですね」と分析。
加えて「お涙ちょうだいの号泣シーンや、感情を爆発させるシーン、わざとらしい感動シーンを作らないのもリッチー作品のよさかなと。小さいシーンを積み上げていくなかで、人間関係が描かれる。もちろん、ユーモアや観たあとのスッキリ感はありますが、そのさじ加減が絶妙です」と感心する。
もともと幼少期に読んだ「シャーロック・ホームズ」がきっかけで、イギリスのカルチャーにハマった竹内。リッチー監督作の「シャーロック・ホームズ」シリーズを初めて観た時の驚きについても明かしてくれた。
「私は古参の面倒くさいファンなので(笑)、最初にガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』を観た時、“なにが起きた!?なぜ、ロバート・ダウニー・Jr.?”と、物語や設定にびっくりしました。でも、結局、あのキャラクターが爆発的に人気が出て、そこから“シャーロック・ホームズ界隈”が騒ぎ、コンテンツとして息を吹き返したという印象があります。漫画もそうですが、キャラクターが魅力的な作品が、結局一番強いのではないかと。咀嚼して何度も楽しみたくなるし、続編も観たくなりますから。
ガイ・リッチー作品はよく『スタイリッシュ』だと評価されますが、私はそういうふうに爆発的に当たるキャラクターが描ける点が最大の強みだと思っています。また、演出力や人間力もあるから、俳優さんが脚本に書かれている以上のことを演技で表現される。そういう意味では、俳優さんの魅力を引き出せる映画監督だとも思っています」と、漫画家という視点からリッチー監督作を称賛する竹内。
竹内自身も「ロンドンバディーズ」を手掛けているので、その作品に込めた想いも合わせて聞いた。
「いまの世の中は、少し元気がないです。戦争が続いていて、大きな震災もあり、先が見えないと感じる方も多いと思います。私がバディものを描いているのは、読者の方にキャラクターを好きになってもらい、作品に没頭して楽しい時間を過ごしてほしいということは前提として、自分にもこういう関係の人がいるかもしれないとか、こういう関係性を築けるかもしれないという希望を持ってほしいから。仲の良い人や大切な人と、なにかを達成できるのは最高です。『シャーロック・ホームズ』や『グレイ・ミッション』ともつながるところですが、私もそこを目指したいです」。
最後に、これから本作を観る方々へ、メッセージをもらった。
「ガイ・リッチー好きな方は、バディもののおもしろさとストーリーの緻密さ、1時間半で両方味わえるおすすめ映画です!とにかくすごい豪華な俳優陣が共演していて、ドキドキハラハラしつつも最後はスッキリした気分になれる痛快な映画なので、ぜひ映画館でご覧ください」。
取材・文/山崎伸子
