二宮和也「好きなものを信じること」 “シークレットシネマ”に込めた映画愛と名監督たちの教え
「“好きだ”、“楽しい”ということを日々積み重ねていくことが、大事なのかなと思っています」
「シークレットシネマ」は、映画界の未来に希望を抱く若い世代が中心となって、始動したプロジェクトだ。彼らのパワーに頼もしさを感じつつ、二宮は「若い世代が頑張らないと、映画館に足を運んでもらうのが難しい時代が来るのかなと思っていたんですが、むしろ最近はだんだん活気が戻ってきていて。邦画がすごく元気だと感じている」と確信を込めて語る。
「昨年に公開された邦画は、すごい成績を出した作品ばかり。そのなかで『国宝』は、観ていない人ですらどういった内容なのか理解しているような映画になった。『国宝』はまさに、ヒットと呼ぶに相応しい映画ですよね。ここ数年はアニメが全盛の時代でしたが、これから10年経っても、あの時代には『国宝』があったと言われ続ける作品なんだと思います」と邦画界に広がる活況を目の当たりにしながら、「山田洋次さんがよく言っていたのが、『映画という文化、エンタテインメントの歴史は、まだ1世紀余りに過ぎない。文化が1世紀で根付くはずはないんだ。これからもインフレし続けて、上昇していくものなんですよ』と。そして、『これからはものすごいスピードでいろいろな作品、いろいろな人が出てくる。だから頑張らないといけない世代ですよ』と言うんですね。そうだな、頑張らないといけないなと思いました」とこれから、より大きな熱量が映画界を包み込んでいくはずだと先を見据える。
その言葉をくれた山田洋次監督をはじめ、蜷川幸雄監督のもと映画単独初主演を飾った『青の炎』(03)、ハリウッドデビューを果たした『硫黄島からの手紙』(06)では、クリント・イーストウッド監督とタッグを組むなど、錚々たる名監督と時間を共にしてきた。あらゆるジャンルで八面六臂の活躍を遂げてきた二宮のキャリアに、映画の仕事はどのような影響を及ぼしているのだろう。
二宮は、「好きなものを信じること。それがいかに大変で、すごいことなのかということを映画界の先輩方が実証してくれています」と胸に刻まれた学びを口にする。
「山田さんもそうなんですが、クリントも、『映画を好きだから撮っているのではなくて、自分が好きなものを撮っていたら、それが映画になったんだ』と言うんですね。クリントが“撮るのが速い”と言われる所以はそこにあるんだと思います。“好きなものを撮っているだけだから、気づいたら終わっちゃう”って。“繋ぐのが得意だから、それを繋いだら映画になっただけだ”と言うんです。カッコいいので、もし僕が監督をやることになったら、そう言おうと思っているんですけど」と破顔しながら、「それくらい好きなものに、愚直に向き合っている。蜷川(幸雄)さんだって、最後までそうやって向き合っていた。そして山田さんもクリントも、絶対に辞めるタイミングがあったと思うんです。でも辞めなかったというのは、責任感でもないし、儲かる・儲からないとかそういうことでもないし、ただただ“好きだ”ということなんだと思うんです。そして好きだから続けるというのは、実は一番難しいことなんじゃないかと。そういったことを、諸先輩方から教えていただいています」とたくさんの刺激を受けながら、歩みを進めていることを明かす。「出るのも、つくるのも、観るのも、すべて。“好きだ”、“楽しい”ということを日々積み重ねていくことが、大事なのかなと感じています」。
「1本や2本、みんなの心のなかに残っている映画ってきっとあるものだと思うんです。そう思うと、映画ってやっぱりみんなの支えになるものなんだろうなと感じます」と終始、映画の力を噛み締めていた二宮だが、こんな興味深い視点も飛び出した。
「自分が“つまらないな”と思える映画に出会うことも、すごく必要で。仲間と話して盛り上がるのって、実はそっちだったりする。怖いもの見たさじゃないけれど、そういうものも観ておくべきで、そこから得られるものが必ずあるんですよね。映画館はそういった衝撃の出会いを与えてくれるものでもあるし、それを“ここにいるお客さんたちと一緒に観たんだ”と思うと、明日を生きる力になるというか(笑)。僕はポスターに書かれた1行、2行を信じて映画に行くしかなかった世代なので、観に行って“嘘だろ…”と感じるようなつまらない映画ももちろんあって。タイパもコスパも悪いけれど、そうやって過ごすことはとても豊かだったなと思うんです」。たしかに違和感を通して、自分の感性を知ることだってできるのが映画だ。
予期せぬ巡り合わせへ飛び込むことが、人生を豊かにしていく…。真摯な姿勢で、楽しそうにインタビューに応える二宮の言葉の端々には、そんな想いが垣間見える。「もし映画館の館長になったとしたら?」と尋ねてみると、「例えばイベントの実施日が6月25日ならば、15年前の6月25日に上映されていたもの、20年前の6月25日に上映されていたもの、30年前の6月25日に上映されていたものと、日付縛りで特集上映を組むのもおもしろいかもしれませんね。その時代のトレンドや歴史、技術が見えてくるかもしれない」と映画との邂逅が、まだ知らない世界へ踏み出すきっかけになることを願っていた。
取材・文/成田おり枝
