『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』のポジティブ少女イ・レ「愛と慰め、連帯といったテーマが込められている作品です」
笑顔は人の本質を表すのかもしれない。取材のとき、俳優イ・レの周りを一瞬で暖かくする笑顔を見て、改めてそう感じた。彼女のフィルモグラフィを振り返ると、役柄のうえで言えば非常に困難な道のりをたどってきた印象がある。『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』(公開中)で演じた、ソウル国際芸術団の舞踊科に所属するイニョンもまた同様だ。母子家庭で育った彼女は、母が交通事故死したあと、家賃も払えないほど困窮した生活を送る。悲痛な展開だが、逆境に打ち勝とうとするイニョンに、イ・レは脚本を読んだ瞬間からとてもポジティブなものを感じたという。
『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』は、とてもイニョンらしいタイトル
「私がいまの年齢でできる作品のなかでも、こんなにも明るくエネルギッシュな作品をいただけて感謝しました。イニョンの明るさとキャラクター、韓国舞踊という踊りを踊るという点が魅力的で、挑戦してみる価値のあるジャンルだと思ったんです」。
実は原題の『괜찮아 괜찮아 괜찮아!』(日本語の『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』と同じ意味)というタイトル、企画・制作段階では『ドリームズ』だった。2023年の釜山国際映画祭でのワールドプレミア前に現在のタイトルで最終決定となったそうだ。キム・ヘヨン監督曰く「イニョンもみんな“大丈夫”だったらいいと思って決めた」そうだ。タイトル変遷にまつわるエピソードを、イ・レ本人にも尋ねてみた。
「撮影中もスタッフや監督、俳優の皆さんとタイトルをどうすれば良いか相談して、一緒にアイデアを出し合いました。『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』というタイトルにしたと聞いたとき、この作品のシナリオにふさわしい、イニョンらしいタイトルだととても気に入りました。 映画では“慰め”が大きな柱になっていると思いますが、そのキーワードを最もよく表す言葉が『大丈夫』という言葉ですよね。観客の皆様が温かい思いやりを受け取っていただければと思いました」。
チン・ソヨンのプロ意識に脱帽…「先輩として尊敬しています」
イ・レが言及したように、イニョンはもちろん、映画のなかの登場人物の多くが励ましを必要としている。チン・ソヨン演じる芸術監督のソラは、ルックスも抜群、生活スタイルも徹底的に律していて、他人にも自分にも厳しい人間だ。ただその完璧主義が、彼女自身を追い込んでいる面がある。家賃が払えず練習室に寝泊まりしていたイニョンを思いがけず家に招き入れることになったソラとイニョンは、師弟であり、母子のようでもあり、それでいて徐々に互いを癒すシスターフッドのような関係性も築いていく。
チン・ソヨンとはもちろん撮影準備期間中にとても親しくなったものの、“イニョン”と“ソラ”というそれぞれのキャラクターとして完璧でいるために、現場では緊張感が解けなかったそうだ。こんなふうに互いがプロフェッショナルであるがゆえの苦労はありつつも、イ・レはチン・ソヨンについて「俳優の先輩として大変尊敬いたしました」と振り返る。
「チン・ソヨンさんは、ソラ先生役のために食事をはじめ完璧な準備をなさっていました。わかめスープを食べるシーンでは、スープの塩分によるむくみで次の撮影に支障が出るのではと心配されて、わかめに水だけを入れて演技をされたんです。それでも自然なお芝居でした」。
チョン・スビン、イ・ジョンハら同世代の俳優同士での思い出
舞踊チームで競い合う芸術団のライバル・ナリ役のチョン・スビン、また可愛らしいボーイフレンドであるドユンを演じられたイ・ジョンハとも良い関係を築いた。
「チョン・スビンさんと一緒に踊りを習い、準備をする期間から心がとても開かれました。キャラクターの関係性に影響しないように、撮影現場では距離感を少し保ちましたが、それ以外の時間はコミュニケーションを多く取るように努めました。撮影が終わったあと、みんなで宿舎に滞在している間に連絡を取り合い、チョン・スビンさんの部屋に遊びに行って映画を観たり、好きな俳優ややりたいジャンルについて語り合った時間がとても印象に残っていて、楽しい思い出です」。
「イ・ジョンハさんとは現場でとても楽でした。 年の差は少しあるものの、とても親しみやすく、まるでお兄さんのようであり、時には友達のようにも接することができました。それは、イ・ジョンハさんがいつもリラックスした雰囲気で話しかけてくださり、私も自然体でいられるようにしてくださったからだと思います。そうした配慮のおかげで、現場でご一緒する時間はとても楽しく、撮影というよりも学校に通っているような感覚でした」。

