安田淳一監督、岩井澤健治監督が「第19回TOHOシネマズ学生映画祭」で学生たちにエール「受賞の有無は関係ない」「諦めずに作り続けて!」
岩井澤監督、安田監督は自身の経験に触れ学生監督を激励
授賞式後はゲスト審査員による「講評」へ。東宝株式会社TOHO animationプロデューサーの柳澤俊介は「昨年にましてバリエーション豊かで、自分の内面に向き合った作品もあれば、お客さんを楽しませようという意識がみなぎった作品もある。すばらしいものを観せていただきました」とコメント。最近の映画業界のヒットの傾向に触れ、自身が若手プロデューサーとして感じていることを伝えつつ、「好きなものや自身が抱えた悩みなどに向き合うことは大切。それを続けていただきつつ、エンタメは世の中と繋がるもので、誰かに観てもらうものなので、社会との繋がりや、社会のなかで自分がどういうものを作るべきなのか、どういうものを作っていけるのかとしっかり向き合ったうえで、制作に励んでいただければと思います」とエールを送った。
東宝株式会社開発チームプロデューサー兼GEMSTONE Creative Label統括の栢木琢也は、今年は「GEMSTONE賞」該当作品なしとなった理由について、本作の受賞がきっかけで大学卒業後に就職ではなく、商業映画の道に進んだ監督がいることに触れ「GEMSTONE賞は、その人の人生を変えてしまうそんな可能性がある賞だと思うので、真剣に悩み、責任を持って選ばせてもらった」と説明。続けて「オリジナルで作品を完成させることはプロでも難しいこと。オリジナルで作り上げたことに誇りを持っていただきたい」と呼びかけたうえで、「監督の力で推しはかれるのはテーマとシナリオ」だとし「学生の視点だからこそ、その立場だからこそ書きたいもの、届けたいものをもっと突き詰めて欲しい」とリクエストした。
株式会社 SAMANSA代表取締役の岩永祐一は「いい作品があって悩みました」とこの日、オフィスでコンテンツチームのトップと協議し、悩みに悩んだと明かす。「『POLICE MEN』を選ばせていただきましたが、ほかにも本当にいい作品があったので、後日配信の相談に個別で連絡をすることもあるかもしれません。ちょっと期待していただければと思います」と配信のチャンスがまだ残っていることに触れると、会場に集まった上映作品の監督たちが期待を込めざわつく場面もあった。
株式会社ロボット所属の真壁幸紀監督はROBOT賞を受賞した『子羊どもよ』について「人物が描けているかなというのと、この映画の奥にいる監督、制作者のみなさんの顔が見えて、伝えたいメッセージが見えたので選ばせていただきました」と選考理由を解説。「1つ言いたいことがある」と切り出した真壁監督は「今回賞をとれなかったことはまったく気にする必要はありません。審査員が変われば、みなさんが賞をとっていると思います。全然違う結果になっていると思います。ここで上映された作品はどれもすばらしかったので、自信を持って帰っていただければと思います」と受賞が叶わなかった学生たちを激励。さらに「映画祭は基本的にはコンペティションという形をとって、誰かと比べる形をとっているけれど、映画を比べるというのは本当に意味のないこと。僕がスピルバーグ監督や黒澤明監督と比べなきゃいけないとなったら、無理なこと」と笑いつつ、「人と比べるのではなく自分と比べる。今回、みんなすばらしいものができたと思うけれど、次の作品を作る時は“最新作は最高傑作ということで比べていってほしいと思います」と自分の作品と比べることで、いい作品を作ってほしいと話していた。
ディレクターでプランナーの篠田利隆は「どれもクオリティが高くて普通に驚き、脅威を感じるものもありました」と感想を伝える。自身が担当した「プロモーション部門」については「『ふたつでひとつ。』は広告の企画としておもしろいと思いました」とコメント。『POP&COKE で妄想中』については「商品を描くという着眼点が目立ち、単純にいいなと思いました」としコマ撮りを使っておもしろい表現で描いているところがポイントだったとも付け加えていた。
日本コカ・コーラ株式会社のマーケティング本部IMX StudioXシニアディレクターの九鬼裕隆は『プロモーション』について「テーマを与えられて短い尺のなかでそれを表現するというのはある意味難しいことと思っています。どれが一番映画館でコカ・コーラとポップコーンを食べる、飲むことを観ている側に訴求しているのかという観点で選びました」と選考理由に触れ、「プロが作った広告と遜色ないくらい本当によくできた作品」と受賞作品を絶賛。続けて「今後もし広告の道に進むのであれば、テーマを大事にしてそれを表現し、相手に訴求するアイデアという部分をより研ぎ澄ましてもらえるとありがたいです」とアドバイスしていた。
アニメーション監督の岩井澤健治監督は「最近はソフトも充実してクオリティが高い作品が多く、そのクオリティは年々高くなっている印象があります」と近年の技術の変化に触れ「なにを表現したいか。無骨で滲み出るもの、そういうものに出会いたいと思っていました」と選考にあたり心にあった想いを明かす。グランプリを獲得した『自由研究事変』について「テーマや表現がすごく挑戦的で『これをやりたい!』というエネルギーを感じて選ばせていただきました」とコメント。受賞をしなくてもここで上映されるだけでとてもすばらしいことと力を込めた岩井澤監督は「自分は20代前半くらいに自主制作作品を作っていたけれど、完成させることができませんでした。完成させることの難しさは自分でも実感しています。なので、完成させてなおかつ、こうやって観てもらうことは結構勇気のいること。自分のなかで『これは(人に)観せられない』と諦めてしまうことがありました」と自身の思い出を語る。それでも諦めずに最終的に初めて作品を完成させたのは28歳のころと話した岩井澤監督は、「諦めずにやって粘って、いま一応アニメーション監督をやらせていただいています」と微笑み、「卒業して就職される方もいると思いますが、諦めずに作品を作り続けてもらえたらなと思います」と作品作りを継続してほしいと呼びかけた。
映画監督で脚本家の安田淳一監督は「とても疲れました…」とグッタリしたあとに笑顔を見せ「真剣に作っていただいたものを審査させてもらうわけなので、本当に真剣に審査をさせていただいた結果です」と疲れを感じた理由を語る。それぞれの作品への感想を語ったあとで、「賞にもれた人のなかには、技術的にも自分のほうがよかったやろ、おもしろかったやろと思っている方がいっぱいいると思うんです」とざっくばらんに話す。「それはまったく気にしなくていいです」と会場を見渡しながら「僕も長年自主制作で頑張ってきて、『侍タイムスリッパー』で本当にたくさんの賞をいただいたので頑張った甲斐があったのかなと思っています」と続けることが大切だと自身の経験を重ねて伝える。続けて「Netflixでは、僕が過去に作った自主制作も含めて、2本がベスト10内に入りました。そういうこともあるので、もし今日賞をもれえなくても、どうか挫けずにこの道を歩んでいってもらえたらと思います」と諦めずに作り続けてほしいと呼びかけた。
最後は映画祭実行委員長の佐藤小春が閉会の挨拶を行った。「映画には胸が高鳴る瞬間や、ふっと心が解けるような瞬間などいろいろな楽しみ方があります」と話した佐藤は「本日紹介した18作品はどれも未来が楽しみになるような煌めきに満ちた作品ばかりでした。映画祭に大切な作品を託してくださった学生監督の皆様に心より感謝を申し上げます」と感謝を伝え、「今日という思い出が皆様のこれからの日々を照らす希望となることを、実行委員一同心より願っております」と作品を手掛けた学生監督たちの今後に期待を込め、映画祭を締めくくった。
取材・文/タナカシノブ
