「北方謙三 水滸伝」織田裕二×若松節朗監督の黄金タッグが対談。ムチャ振りな芝居の応酬に「どんどん化学反応を起こしてくれ!」

「北方謙三 水滸伝」織田裕二×若松節朗監督の黄金タッグが対談。ムチャ振りな芝居の応酬に「どんどん化学反応を起こしてくれ!」

「映画は長くて4か月ぐらいの撮影だから、今回のような8か月はなかなかあり得ない」(若松)

――共演者の方々も本当に豪華な顔ぶれなので、織田さんは次々に登場する彼らとのセッションも楽しかったんじゃないですか?

織田「僕以外の登場人物も皆が主人公のように描かれていて、次々と濃い人物が登場する。どのシーンもクライマックスみたいなものだったから、全員力が入っちゃってるんですよね。だから撮影の蔦井(孝洋)さんもカメラのポジションを決めるのに悩んでいる時があって、『ポンポン撮らなくていいの?』って言っても『まるで大作映画を撮っている気分なんだよ』って苦笑していました。でも、その時に僕に求められているのは力を抜くことなんだなってことに気づいて。緊張状態がずっと続いていたら観ている人たちも疲れちゃうだろうから、宋江が出てきたらちょっと安心するみたいな、少しヌケている感じでやろうと。身近に居そうな男が大きなものに巻き込まれていって、『明日の宋江はあなたです』という見え方になればいいのかなという感覚でやろうと思ったんです」

若松「『替天行道』という“世直し”の書を記した宋江は、自分の考えに共鳴して集まってきた男たちをまとめて、仲間にしなくてはいけないわけですよね。だからカリスマでいる必要があるし、ふにゃふにゃした佇まいではいけない。それでいておもしろいこともやるので、そのバランスが非常に難しかったと思います」

豪華キャスト陣が集結した本作
豪華キャスト陣が集結した本作[c]北方謙三/集英社 [c]2026 WOWOW/NTTドコモ

織田「僕はこの作品で初めて原作小説を書かれた北方謙三さんにお会いしたんですけど、とても愛嬌のある方で。愛情を込めて『チャーミングで可愛いオヤジ』って敢えて言わせていただきますけど(笑)、そのオヤジが『オマエたちの好きにやっていい』と。『俺は小説にすべて書いたから、オマエたちはオマエたちで作れ!』って言ってくれたんです。その言葉を聞いた時に、“時代を作るのはやっぱりこういう人だよね”“こういう人じゃないとやっぱりついていけないよね”と思って。リーダーでカリスマっていうと完璧な人物を想像しがちだけど、宋江は穴だらけで、皆がツッコミまくるカリスマでいいんじゃないかなという気持ちになれたんです」

若松「僕もよく指摘されます、『穴だらけだ』って(笑)。でも、そういうところも含めて『宋江さんに似てますね』って言われたのはすごくうれしかったですね」

織田「そういう人のほうが、皆が支えようという気持ちになるんですよ。宋江も監督と一緒で話しかけやすいし、聞く耳をちゃんと持っているから、皆がそれぞれ自主的に動くんです。『どっちがいいですか?』って聞かれた時は『じゃあ、右に行こう』という判断を下すけれど、それにしたって皆の想いを汲んで“これがベストだろう”と考えて出したもの。“俺はこうなりたい!この国をこうしたいんだ!”という変な自我がない。実に欲のない人だと思いました」

若松「北方さんの書かれた『水滸伝』は群像劇で、宋江以外の人物も全員キャラが立っているのがいいんですよ。“彼は俺に似てる”とか“コイツはアイツにそっくりだね”っていう感じで、自分や周りの人たちを投影しながら観ることがでますから」

本作の撮影現場の熱気を語る織田&若松監督
本作の撮影現場の熱気を語る織田&若松監督撮影/杉映貴子 ヘアメイク(織田裕二)/加藤まり子(MARVEE) スタイリスト(織田裕二)/加藤哲也

――実際の撮影現場はいかがでした?

織田「いや~大変でしたね。ここまで大変な現場はなかなかないですよ。それこそ、すごい山奥まで行くこともあったから、撮影が始まる前に半分疲れちゃって(笑)」

若松「そういうものなの、今回の現場は!」

織田「俺、『撮影の5、6時間も前から準備するんですか?』って聞いちゃいましたもん(笑)」

若松「日本全国17都府県、約50か所以上の場所を移動してのロケだから確かに大変でした」

槍術にかけて右に出る者のいない天才武人・林冲を亀梨和也が演じる
槍術にかけて右に出る者のいない天才武人・林冲を亀梨和也が演じる[c]北方謙三/集英社 [c]2026 WOWOW/NTTドコモ

――お2人が一緒にやられた『ホワイトアウト』の時よりも大変でした?

織田「『ホワイトアウト』の時も寒かったけれど、あの時はまだひとけのあるところでの撮影でしたからね」

若松「いや、今回のほうが寒かったよ!」

織田「雪山は今回も出てくるけど、雪山の方がまだ暖かいって思うぐらい、晁蓋のアジトのシーンを撮った栃木県の石切場がとにかく寒くて。セットみたいにキラキラしていて映像では綺麗なんだけど、僕らが吐いた息がバーっと白くなって」

若松「それがすばらしいんですよ」

織田「あの石切場は中がけっこう広くて、どんどん下っていくんですけど、撮影現場の下に行けば行くほど寒くて、吐いた息が相手の顔が見えなくなるぐらい真っ白になるんです。でも、監督はそれでも『構わん!』って言っていて(笑)」

若松「役者さんがそうやって実際にやったほうがいい画が撮れるんです。CGでやるとやっぱり嘘っぽくなりますから」

織田「白い息のところも『CGで描いたんでしょ』って言われたりしたけれど、あれもリアルだし、今回CGはほとんど使っていない。日本にもこんなにすてきな場所がいっぱいあるんだということを知れたのもよかったです」

若松「(梁山泊の志を潰そうとする)最大の敵・李富(りふ/玉山鉄二)のアジトを兵庫県にある長楽寺の但馬大仏と京都の萬福寺で撮れたのもよかったですね」

――長距離移動と寒さ以外にも大変だったことはありますか?

織田「(即答で)暑い!寒いのと暑いのを両方味わえる作品はなかなかないです(笑)」

若松「なかなかないよね!だって映画の撮影でも長くて4か月ぐらいのスケジュールだから。今回のような撮影期間8か月はなかなかあり得ないですよ」

――織田さんがいま言われた、暑かった場所はどこですか?

織田「角川大映スタジオのセット!」

若松「ああ、朱貴(しゅき/高橋和也)の店のところだね」

織田「昭和と違って、最近の照明はそんなに暑くないんだけど、宋江の衣装を着て夏に撮影したので、あれは暑かった」

若松「デイシーンは照明をいっぱい焚くしね」

織田「竹林のシーンを撮った時に雪が偶然降ってきたこともありましたね」


若松「そうね。あれを撮ったのは冬だったのかな?」

織田「すごく幻想的だったし、水墨画で見たいようなそういう美しい場所がいくつもありました」

若松「四季を体感しながら撮影したからね」

織田「四季や天気がわかりやすく味方をしてくれました。演じている僕らは寒かったり、暑かったりして辛いことも多かったけれど、ロケでの雪降らしには限界があるし、画にした時にその偶然の雪がすごく美しい。監督と一緒にやると、いつも天気に恵まれますね(笑)」

若松「そうそう。お互い“晴れ男”みたいなところがあるから、織田くんと一緒にやると必ず晴れる(笑)」

織田「ちゃんと雪も降ってくれますしね」

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