「北方謙三 水滸伝」織田裕二×若松節朗監督の黄金タッグが対談。ムチャ振りな芝居の応酬に「どんどん化学反応を起こしてくれ!」
シリーズ累計発行部数1,160万部を突破した大河小説の金字塔を、壮大なスケールで映像化した連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」(毎週日曜22時よりWOWOWにて放送/WOWOWオンデマンド、Leminoにて配信中)。全7話からなる本作は、腐敗した世を憂い、法に背いてでも正義を貫こうとする“はみ出し者たち”の叛逆の物語を、現代にも通じる「理不尽な権力に抗う強い意志」と「仲間との絆」をベースとした壮絶な群像劇として描くスペクタクル巨編だ。
自ら世直しの書「替天行道(たいてんぎょうどう)』を記し、108人のはみ出し者たちを束ねて志の砦「梁山泊」のトップに立つ主人公・宋江(そうこう)を織田裕二が演じ、もうひとりの頭領でもある“叛逆の英雄”=晁蓋(ちょうがい)役で反町隆史が共演。さらに亀梨和也、満島真之介、波瑠、玉山鉄二、松雪泰子、佐藤浩市ら主演級の豪華キャストが集結し、名もなき者たちの戦いの伝説をよりドラマチックなものにしている。
そんな規格外のドラマを作り上げたのは『Fukushima 50』(22)で第44回日本アカデミー賞最優秀監督賞に輝いた若松節朗監督。ドラマ「振り返れば奴がいる」(93)、「正義は勝つ」(95)、映画『ホワイトアウト』(00)などで過去に何度もタッグを組んでいる主演の織田裕二と稀代のヒットメイカーが、8か月にもおよんだ前例のない撮影を振り返ってくれた。
「最初は“えっ、宋江をやるんですか?”って正直驚きました」(織田)
――「北方謙三 水滸伝」のドラマ化の企画を最初に聞いた時はどう思われました?
織田「お話をいただいた時は、恥ずかしながら、『水滸伝』のことも僕が演じた宋江のことも知らなかったんですよ。“中国三大奇書”のあとの2つ、『三国志』と『西遊記』のことは幼少期にテレビや漫画などで見て知っていたんですけどね。でも、若松監督がメガホンをとられると聞いたので、もうその1点だけで出演を決めました」
若松「嘘を言うなよ!(笑)」
織田「嘘じゃないですよ!(笑)。監督から『台本ができたから、こっちを読んでくれ。ドラマ化にあたって新たな要素が加えられているから、そこを大事にしてほしい』ということだったので、僕は今回の台本に重きを置きながら宋江を演じさせていただきました」
若松「僕は最初にもらった企画書のキャッチ『未来を切り拓け』に惹かれて。そういうワードにちょっと弱いので、“ああ、そういうことか?そういう話ができるならおもしろそうだな”と思って原作を読み始めたんですけど、その時から“織田くんは外せないな”というのが僕のなかにはありました。それですぐに連絡したら、『やります』って即答してくれたので、このドラマはうまく行くなと確信したんです」
――織田さんのどんなところが宋江役にフィットしたのでしょう?
若松「宋江はなんも武器を持っていないんです。しかも、自分の考えをバっと喋って周りの人たちを説き伏せるのではなく、人に寄り添うような男。そういった魅力を、織田くんも年齢を重ねて開花させているなと思っていたんです」
織田「これまで僕に来ていたのは宋江の周りにいる豪傑たちのような戦う男の役ですよね。だから、最初は“えっ、宋江をやるんですか?”って正直驚きました。でも、肉体を使ったり、強いリーダーシップを発揮してみんなを引っ張ったりするのではなく、ただただ人の痛みを感じて、それを代弁する宋江の精神や生き様がだんだんわかってきて。パワーゲームの気配がするいまの世の中だからなおさら胸に刺さったというか、いつの時代でも“この声を消しちゃダメだよね”ということをすごく感じて。“あっ、なるほど、これをいまドラマとしてやる意味はそういうことなのね”って自然に思うことができたんです」
――新しいヒーロー像という感じですか?
織田「宋江だけが新しいヒーローというより、これは彼のもとに集まったひとりひとりの物語。結局みんなが想いを同じにしないと始まらないし、その想いを行動に移さないといけない。そのためにはどうしたらいいのか?相手が“国家”というとてつもなく大きな敵で、“この人数で勝てるわけないでしょ!”というところから始まるわけですけど、そこで無理と思わなかった、心が折れなかった。そこが彼らの大きな第一歩になるわけです」
――宋江の熱い想いをみんなに伝える時に、言葉の選び方などで工夫したことは?
織田「言葉でもないんです。最後には言葉で集約しますけど、本当に寄り添うだけなんですね。だから、最初のうちは味方の人間に歯向かわれて、“いや、敵じゃないんだけどな”って思うこともまあまあって。でも、それは仕方がないですよね。いきなり『コイツが大事な男なんだ』って言われても、そんなに簡単には受け入れられないですから」
若松「なので、宋江と反町(隆史)くんが演じた晁蓋にはカリスマになっていただかなければいけなくて。晁蓋は圧倒的な武力でみんなを魅了するし、人に寄り添うことに長けている宋江もみんなに慕われる。“この人のためならなんとかしたい”“この人に褒められたい”と思うような空気を2人とも醸し出してくれた。しかも、宋江は人間的にお茶目ですからね。そこも周りの人たちを虜にしていくんです(笑)」
――織田さんはお茶目なところを意識されたんですか?
若松「いやいや、織田くんは普段からお茶目ですから(笑)」
織田「それもあって、台本を読んだ時の印象とはまったく違う人たちが周りにキャスティングされていたから最初はビックリしました(笑)。例えば、上司役みたいな人を年下の俳優が演じていたりするんですよ。でも、その人に怒られるという設定を見た時に“これは、もっと遊べよ。もっと楽しんで欲しい”というメッセージなんだってことに気づきました」
若松「織田くんは、そういうのがものすごく上手ですから」
織田「いえいえ、なにを言っているんですか?(笑)」
若松「でも、僕らはエンタメを作っている人間だから、そういう“遊び”の要素も入れたいし、織田くんならそれができる。そこはいつも彼に託しているんです」
