パク・チャヌク監督&イ・ビョンホンが『しあわせな選択』ジャパンプレミアで来日!ゲスト河合優実とジョークの応酬も
第50回トロント国際映画祭国際観客賞受賞、第83回ゴールデングローブ賞3部門ノミネートを果たした韓国の巨匠パク・チャヌク監督の最新作『しあわせな選択』が、3月6日(金)より日本公開となる。
『オールド・ボーイ』(03)でカンヌ国際映画祭グランプリ、『別れる決心』(22)で同映画祭監督賞を受賞した巨匠パク・チャヌク監督。常にタブーを打ち破り、緻密さと完璧な美学で観客を魅了するなど、新たな地平を切り拓く衝撃作を発表し続けてきた。そんな韓国が誇る巨匠が放つ最新作は、現代社会に生きる誰もが直面し得る“突然の解雇”という現実を独自の視点で描き出し、人間ドラマ、スリラー、そしてパク・チャヌク作品としては異例の弾けるユーモアが交錯し、映画のあらゆるジャンルが鮮やかに響き合う作品となっている。期待の熱気が高まりつつある2月27日(金)、鬱屈とした現代社会に一石を投じる快作『しあわせな選択』の来日ジャパンプレミアイベントが開催された。パク・チャヌク監督、主演のイ・ビョンホン、そしてゲストとして俳優の河合優実が登壇した。
満員御礼で開催されたこの日、映画のプロモーションとしての来日は2022年12月以来約3年ぶりとなるパク・チャヌク監督は「日本は一番近い国ですが、公開は一番遅くなりました。いろいろな国で上映していただき、その最後に日本でこうして挨拶する事が出来るのはうれしい事です」と念願の来日にニッコリ。しかも先日、韓国人として初となるカンヌ国際映画祭の審査員長を務めることが発表されたばかり。「どんな審査員で構成され、どのような作品がコンペに出品されるのか。そしてどのような刺激を私に与えてくれるのか。今からワクワクしています」と、大役への心境を述べた。
世界で高い評価を受けた『JSA』(00)以来長編映画では 25 年ぶりのタッグとなった、主演のイ・ビョンホン。本作の演技で韓国人として初のゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートを果たす快挙を成し遂げた。『MASTER/マスター』(17)以来9年ぶりの来日となった彼は、「すでに韓国でご覧になっているファンの方もちらほらといらっしゃるようですが、改めて今日このように皆様とお会いする事ができてうれしいです」とビョン様スマイル。「皆さんと本当にお会いしたかったです。本作を通して各国の観客に会いましたが、ついに日本の皆さんに観ていただくことができるようになりました。どのような事を感じてもらえるのか、映画を通して僕らが見せようとしたものを受け取っていただけたら幸いです」と、詰めかけたファンへ作品への熱い思いを伝えた。
今から20年程前に原作小説「斧」に出会ったというパク・チャヌク監督。当初は米国映画としての制作を模索していたそうだが、韓国映画として手掛ける事になったという。紆余曲折はあったが、「映画化するのには長い歳月がかかりましたが、ある意味それは一つの運命だったと思います。何故ならば韓国映画になったことによってイ・ビョンホンと再会できたわけですからね!」とむしろ胸を張った。一方イ・ビョンホンは本作について「この映画はとてもおもしろいです。なぜならば笑った次の瞬間にふと寂しく憂鬱な気持ちになって、また爆笑するという非常に不思議な、監督の作品の中でも極めてユニークな映画だからです。演じる上では観客を笑わせようという意識はありませんでした。笑わせようとする意図が見えすぎると観客に引かれるからです。キャラクターの感情に忠実に演じる事を心がけました」と紹介。パク・チャヌク監督も「悲劇と喜劇は切り離せない一つの塊です。人生においてもただ悲しい、ただおもしろいという瞬間はなくて、その両者は共存しているはずです。この映画も同様で、様々な感情が一気に押し寄せて来て、それが一つに混ざる形を狙いました」などと打ち明けた。
そしてイベント中盤で河合優実がゲストとして登壇。河合がパク監督とビョンホンに花束を贈呈し「お二人の新作を待ち望んでいる日本の映画ファンは沢山います。私がイチ映画ファンを代表としてお礼を伝えに来ました」と日本公開を祝福。先んじて本作を鑑賞した河合は「私の世代にとってはレジェンドのようなお二人がこんなにも挑戦的に楽しませてくれて、映画の世界に迷い込ませてくれたことがとてもうれしかった」と絶賛した。これにパク監督は「レジェンド…?年寄りとしてはおもしろい映画を撮った、という意味なのかな?」とジョークを飛ばして河合を笑わせながら「本当にうれしい感想です」と喜んだ。河合の出演作をチェック済のイ・ビョンホンは「河合さんは年齢に比べて力のある方だと思っていて、映画に対する真摯な姿勢を持つ素晴らしい日本人俳優のお一人です。とにかくお会いしたかった。それがこのような形でお会いする事ができて光栄です」と初対面に喜色満面。レジェンドからのお褒めの言葉に河合は「ちょっと信じられないです」と恐縮しきりだった。
そんな河合は「本作を通して学んだ事や吸収した事は何ですか?」と2人に質問。パク監督は「いまだに学ぶことは多いです。何故ならば新作を撮るたびに新しい俳優に出会うからです。その俳優がこれまでに見せたことのない姿や一面を探して観客に届けたいと思うからで、そのために様々にコミュニケーションを取ったり研究をしたり、それが学びの過程になるのです」と常に貪欲。イ・ビョンホンは「監督とは『JSA』以来緊密な関係を維持してきたわけですが、本作でご一緒したことで改めて学ぶ点は多かったです。自分が望むものを得ることが出来るまで試行錯誤する。その姿を見た時に、私自身の映画に対する姿勢について反省する事しきりでしたから」と監督をリスペクトしていた。またアジアの映画人としての今後の抱負を聞かれると「映画館を守りたいです。映画は映画館で観るものだ、という常識が崩れつつある今だからこそ、映画館を守ることが至急の命題だと感じます。そのために映画館で観るべき映画、映画館で最上の状態で観るべき映画を作り続けていきたいです」と映画愛炸裂。目標を設定しない主義というイ・ビョンホンだが「人間が表現できる新たな感情のスタイルは一体何か?それを探し続けて経験し、俳優として表してみたい」と“ストイックビョンホン節”を炸裂。一方、パク監督の抱負に共鳴した様子の河合は「若輩者の私にも映画が危機に瀕している感覚はあるので、これからどういう形で映画を残していくのかに取り組んでいく事なると思います」と話した。
最後にパク・チャヌク監督は「私がかつて作った映画を知っている方は先入観で観てしまうかと思うのですが、とても笑えるおもしろい映画になりました。おもしろいと思ったら首をかしげることなく大いに笑って楽しんでいただきたいです」と PR。イ・ビョンホンは「本作の持っているテーマは重いかもしれませんが、笑える場面は沢山あります。本作が語りかけるブラックな笑いや切なさ、憂鬱な現実などを一つ一つ感じて楽しんでいただきたいです」と日本公開後の反響を楽しみにしていた。
文/荒井 南

