理不尽に人々が死んでいく…“新しい恐怖”に挑んだ『災 劇場版』関友太郎監督&平瀬謙太朗監督インタビュー

理不尽に人々が死んでいく…“新しい恐怖”に挑んだ『災 劇場版』関友太郎監督&平瀬謙太朗監督インタビュー

「この作品の様式はロバート秋山さんの『クリエイターズ・ファイル』と一緒」(平瀬)

もうひとり、キーマンがいる。これまでの「5月」の作品のほぼ全ての音楽を手掛けている豊田真之だ。

平瀬「撮影前から相談し始めていて、上がってきた音源を聴きながら『こういった世界観で行こう』と刺激を受けていましたね。“災い”のモチーフを表した1曲のためには、30曲もつくってもらって、その中から選んで決定したんです。なので全体となるともっと膨大に。申し訳なかったですが妥協せず、これだというのが生まれるまで、ひたすらNGを伝え続けて」

関「もちろん、選ばれなかった曲たちが他の劇伴になっていく想定で言っているんですけどね。豊田は、東京藝術大学大学院の同級生仲間であって、僕らとは濃い関係性を結んできた。彼はミュージシャンなのに映像研究科に入ってくるような変わり者であり、映画への洞察力と感性がある人なので信頼感のもと、根気強く待てたんです」

豊田真之が手掛けた本作の劇伴をまとめた「『災 劇場版』オリジナル・サウンドトラック」も配信中
豊田真之が手掛けた本作の劇伴をまとめた「『災 劇場版』オリジナル・サウンドトラック」も配信中[c]WOWOW

連ドラ版では【ある男】が違う役柄で登場するシチュエーションに段々と慣れが生じ、後半はどこか面白みさえ湛えていた。が、劇場版ではそれがない。恐怖と笑いは紙一重。バランスが難しい。

人付き合いが苦手なショッピングモールの清掃員・崎山(内田慈)は、同じショッピングモールで働く理容師の皆川(藤原季節)といい雰囲気になっていくが…
人付き合いが苦手なショッピングモールの清掃員・崎山(内田慈)は、同じショッピングモールで働く理容師の皆川(藤原季節)といい雰囲気になっていくが…[c]WOWOW

関「そうなんですよね。ドラマの脚本執筆時は完全に怖がらせる気満々で書いていたんですけど、編集を繰り返していくうちに段々と香川さんの登場が面白くなってきてしまって…。それで議論を繰り返して、コンセプチュアルに考えればやはり圧倒的に怖くなければいけない、と再確認して。音楽の充てどころでバランスを保ちました。結果、ご覧になる方がどう感じられるかは自由ですけれど」

平瀬「ひとりで複数のキャラクターを演じる様式自体は、ロバート秋山さんの『クリエイターズ・ファイル』と一緒で、端っから笑いにも転換されることをやっていたわけで」

関「香川さんは日常的なシーンを演じていても、常に“何か”を絶妙に醸し出している。普通にしているだけなのに特異点が露出し、サスペンスフル。『災』は描き方によって恐怖にも笑いにも転ぶ設定なんですが、香川さんは台詞の間(ま)、ひとつ取ってみてもフィクション度を上げて、むしろ“映画内のリアリティ”を成立させてくれました」

【写真を見る】香川照之が1人6役で、得体のしれない男を文字通り“怪演”する
【写真を見る】香川照之が1人6役で、得体のしれない男を文字通り“怪演”する[c]WOWOW

「誰もが、自分には関係ないと思っていた。」という本作を象徴するキャッチコピー。映画が終わって、劇場を出てからは(気付こうと、そうでなくとも)観客であった“あなた”が無慈悲にも登場人物となってしまう仕掛け――。とてつもなくクレバーで、少しだけ邪気も含んでいる。ふと『ファニーゲーム』の白シャツと半ズボン、白い手袋を身に着け、“恐怖と黒い笑い”を届けるあの清潔な2人組がちょっとだけダブった。

遠くの塀の上から撮影を試みるカメラマンの姿を面白がってくれた2人
遠くの塀の上から撮影を試みるカメラマンの姿を面白がってくれた2人撮影/黒羽政士


取材・文/轟 夕起夫

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