「アバター」ジェームズ・キャメロンが来日中に語った、自身の価値観を反映した“アクション”「人類がもつ悪い価値観を浄化する」
2009年に3D映像革命を巻き起こし、現在も世界興行収入歴代1位に君臨するジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)。13年ぶりの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)も世界興収第3位の記録を保持している。そんな大ヒットシリーズの最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が公開中だ。
MOVIE WALKER PRESSでは、前作『ウェイ・オブ・ウォーター』のキャンペーン以来3年ぶりに来日を果たしたキャメロン監督に直撃インタビューを敢行!自身の価値観を反映した脚本制作から、いまもなお3D映画にこだわる理由まで「アバター」制作の舞台裏を語ってもらった。
「人間の死に様がひどければひどいほど、みんなが盛り上がる(笑)」
――映画が未完成時のインタビューでは「『ファイヤー・アンド・アッシュ』はアクション映画ではない」とおっしゃっていましたが、前2作よりアクションが多いのではないかと思ったほどでした。というか、アクションだけではなく物語そのものも前2作よりヘビーというか痛かった…。
「いや、量としては同じくらいのはずですよ。表現もより暴力的になったとは思ってないんですが…私がそういう発言をしたのは今回、親密な小さな瞬間が増えたからです。例えばネイティリ(ゾーイ・サルダナ)は長男を失った悲しみや怒りを抱えていてダークなほうに導かれたりする。“痛い”と感じてくれたということは、キャラクターの心情とちゃんとシンクロしてくれたということでしょ?もしかしたら私は成功したんじゃないでしょうか。誉め言葉として捉えますよ(笑)。3作目の私が望んでいるゴールは、皆さんにエモーションを感じてもらうこと。私はこの映画を、これまでの2本よりも『タイタニック』に近いと思っているんです。
もちろんアクションもあります。でも、子どもたちの成長にも目を向けて欲しいんです。確執のあるジェイク(サム・ワーシントン)と次男のロアク(ブリテン・ダルトン)の関係性も、ロアクの成長でひとつの解決を見ることができるし、長男の死で亀裂が入っていたジェイクとネイティリも、ある決断を迫られるシーンでネイティリが自分の心と正直に向き合えて、夫婦の絆を修復できたりする。そういうところに皆さんがエモーションを感じてくれると信じています」
――アクションが多いと感じたのは、これまで平和を信じていたキャラクターやクリーチャーまでもが闘いを選ぶからなのかもしれません。
「完全な平和主義者がいて、完全な悪がいる。ジェイクたちの立ち位置はそのど真ん中です。悪は本当にアグレッシブで、ジェイクたちの全滅を望んでいる。人間の標的になっているトゥルクン(クジラに似た知性をもつ海洋生物)は完璧な平和主義者で、なにがあろうと暴力や闘いは許さない。そして、ジェイクも暴力を望まない。しかし、自分の子どもたち、自分の一族が命を落とすかもしれないという瞬間が訪れた時どうすればいいのか?本作でのジェイクの葛藤はそこにあります。人間なら誰でも、自分の大切な人を守らなければ、コミュニティを守らなければという瞬間が来る。自分に問わなければいけない時が必ず来るんです。言い換えれば、暴力は果たして悪いのか?という問いにもなります。私は、そのようなモラル的な一線を考えながら撮ったのです。
私の考えを言うと、正義のために戦うことは必要なのかもしれない。ただし、それには大きな勇気が必要ですけどね!」
――そういうあなたの価値観を反映したかのようなハイライトのアクションシーンには燃えまくりました!
「イカのような新しいクリーチャーが活躍するアクションですね?彼らに人間がやられると皆さん、めちゃくちゃ盛り上がるんです(笑)。おもしろいですよね。この映画を観てくれているのは人間なのに、同じ人間が殺されると大喜びする。誰もがエイリアンのほうを応援してしまうんです。私たちは、ナヴィ族が善、人間が悪と明言したつもりはないんですが、彼らをリスペクトしたくなる側面、私たちのそうありたいと思ってしまうような側面を描いてはいますけどね。
その一方で、登場する人間たちは、私たちが嫌いな要素をたくさん抱えている。強欲者、自然破壊者、植民地主義者…美しいパンドラの自然を蹂躙し、クリーチャーやナヴィ族を平気で殺すので、気が付けばみんなナヴィを応援しているんです。『こんな人間、死んでヨシ!』という判断を下しているためなのか、死に方がひどければひどいほどみんなが盛り上がる(笑)。まるで、人類がもっている悪い価値観を浄化しているような感覚なのかもしれません。
そういうなかで私が感じるのは“シネマ”の力です。同じ人間の死を望むんですから!シネマは、自分の立ち位置すら変える力を持っているということです」

