「最新技術で原点回帰」清水崇監督が語る、『ターミネーター』から不変の“キャメロン節”【「アバター」最新作公開記念特別連載】

「最新技術で原点回帰」清水崇監督が語る、『ターミネーター』から不変の“キャメロン節”【「アバター」最新作公開記念特別連載】

「近未来の物語を描いていますが、考えるべきは“いま”」

――『THE JUON/呪怨』で、ハリウッドといういわばキャメロン監督と同じ土俵で勝負した清水監督にとって、映画監督ジェームズ・キャメロンはどう映りますか?

清水「キャメロン監督の出自はロジャー・コーマンのB級映画です。コーマンはセットを使いまわしてでも低予算映画を量産していた人ですが、キャメロン監督は同じ低予算でも世界に通用するものを目指し、アメリカンドリームを実現しました。作り手としてそのフロンティア精神や、実際に映画を大ヒットさせ実証していることに感服しますね。ほかの作品でもそうですが、キャメロン監督は最新技術を使いながら原点回帰をするんです。未来の脅威は人間自身が作っていたり、人間讃歌や自然回帰、なにより女性が強いというプロットは『ターミネーター』の時にできあがっています。男女が結ばれた直後に脅威がやって来るのも、『アバター』や『タイタニック』、それこそ脚本で参加した『ランボー/怒りの脱出』も全部一緒なんですね。普通なら『見たことある、またこれかよ』となりがちですが、なぜか普通に楽しんで、泣いて、笑って、興奮させてしまうんです。また『アバター』のジェイクは人間でありながらナヴィに味方する裏切り者ですが、そこに自分のアイデンティティを見出す彼の気持ちにお客さんを乗せていくドラマ作りにも長けています。脚本を書く立場としてすごいと思います」

キャメロン監督のフロンティア精神をたたえる清水監督
キャメロン監督のフロンティア精神をたたえる清水監督撮影/河内彩

――シリーズを通した「アバター」の魅力はなんでしょうか?

清水「物語はシンプルなのに、3Dなど最新技術を使って新しい世界を見せてくれるところが魅力だと思います。『スター・ウォーズ』もそうで、夢見る青年がお姫様を救って世界を目覚めさせる物語を、宇宙を舞台にしたことで皆が飛びついて楽しみましたよね。毎回やっていることはシンプルなのに、最新技術を使って想像したこともない世界を見せてくれるので、そこが魅力だと思います」

――滅亡しかけた地球からパンドラに移住するという設定についてはどう感じますか?

清水「ほかの星に行くのではなく、地球上で人間同士が同じようなことを起こすんじゃないかという気はしてします。キャメロン監督は『アバター』を通し、現代社会に警鐘を鳴らしていると思います。近未来の物語を描いていますが、考えるべきはいまなんだということも『ターミネーター』のころから発信し続けていますね」

クジラに似た巨大生物、トゥルクン。第2作では捕獲しようとする人間による壮絶なシーンが描かれた
クジラに似た巨大生物、トゥルクン。第2作では捕獲しようとする人間による壮絶なシーンが描かれたPhoto:『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』[c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.


「キャメロン監督は、毎回皆が思うより先の世界に連れて行くエンタメの帝王」

――最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』に期待することはなんでしょうか?

清水「主人公のジェイクは、人間側からすると敵対する種族に加担した裏切り者ですが、今度はナヴィの側に人間に加担する裏切り者、ヴァランが出てくるようなのでそこが楽しみですね。シンプルに言えば裏切り者対裏切り者。どっちが正義なのか、どっちにも正義があるのか、複雑な現代社会に通じるものを感じます。信じるものに裏切られ挫折を味わった者同士が対峙するドラマに、キャメロン監督がどう決着をつけるのか、お芝居も含めて楽しみです。映像面ではこのシリーズは絶対3Dで観るべき映画だと思っているので、今回はコントロールの効かない炎、火という自然物が3Dでどう見えるのか楽しみです」

炎を操るナヴィで、復讐のために人間と手を組むヴァラン
炎を操るナヴィで、復讐のために人間と手を組むヴァランPhoto:『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』[c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――シリーズを通しジェイクと家族の成長の物語でもあります。最新作では誰がキーキャラクターになると予想しますか?

清水「家族を守る物語は誰でも感情移入しやすいし、共感できますよね。それが根っこにある限りは、敵は侵略してきたとか世界をなんとかしなきゃいけないとか、すべては家族を守る戦いに繋がっていく。そこは避けちゃいけないよ、という想いがあるんだと思います。『ファイヤー・アンド・アッシュ』のキャラクターをすべて把握しているわけではないですが、ジェイクとヴァランが対決する展開だと考えると、二極を中和させたり救いの道に導く存在がいると思います。世界を救う道標を担うのは、子どもや若者など新しく生まれた第3の存在であるべきです。そのポジションに誰が来るのかっていうのは気になりますが、キリやマスクをせずに生きられるスパイダーがキーになるかもしれませんね」

【写真を見る】自らカメラを抱え水の中へ!ファインダーを覗くキャメロン監督
【写真を見る】自らカメラを抱え水の中へ!ファインダーを覗くキャメロン監督Photo:『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』[c] 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――最後に、清水監督にとってジェームズ・キャメロン監督はどんな存在なのかお聞かせください。

清水「男女平等の世とかコンプライアンスとか、そういう細かい部分も含めて時代と技術を先取りする人であり、エンタメの帝王みたいな人ですね。物語はシンプルなのに、毎回皆が思うより先の世界に連れて行ってくれる。新しいことをやりながら、変わらないテーマを持ち続ける、すごいしかっこいい人ですね」

取材・文/神武団四郎


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