『トワイライト・ウォリアーズ』続編撮影&前日譚の制作予定をソイ・チェン監督が明かす!「人生も創作活動も山あり谷あり」

『トワイライト・ウォリアーズ』続編撮影&前日譚の制作予定をソイ・チェン監督が明かす!「人生も創作活動も山あり谷あり」

第38回東京国際映画祭(TIFF)にて、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(24)のソイ・チェン監督のマスタークラスが、10月28日に丸の内ピカデリー2で行われた。映画評論家のくれい響がモデレーターを務めた同イベントでは、監督がこれまでのキャリアを振り返りつつ、同作の続編の情報も明かし、観客を歓喜させた。

【写真を見る】ソイ・チェン監督が『ドッグ・バイト・ドッグ』の撮影秘話を笑顔で披露
【写真を見る】ソイ・チェン監督が『ドッグ・バイト・ドッグ』の撮影秘話を笑顔で披露

本作は“九龍城砦”を舞台に、覇権を争う黒社会の男たちの闘いを描いた香港アクションで、「るろうに剣心」シリーズの谷垣健治がアクション監督を担当した。第77回カンヌ国際映画祭で世界中の観客から熱狂的な反響を浴び、日本でも興収5億円を突破するヒットに。第43回香港電影金像獎では作品賞を含む9冠に輝いた。

マスタークラスということで、監督のフィルモグラフィをさかのぼっていくが、まずは、エディソン・チャン、サム・リー主演作『ドッグ・バイト・ドッグ』(06)の話題から。チェン監督は「ずいぶん昔の話ですが、タイへ撮影に行きまして、ゴミ山のところで、夜に2人のアクションシーンを撮ったんです。そしたら、サム・リーのアクションの工程がなぜか一つ多くて。なぜなのかを聞いてみたら、口の中にゴキブリが入ってしまって、それを出さなければいけなかったらしくて(笑)」という撮影の裏話を披露し、会場の笑いをとる。

これまでのキャリアを振り返ったソイ・チェン監督
これまでのキャリアを振り返ったソイ・チェン監督

この作品について、監督は「私にとってはとても重要な作品です。本作を通して、自分の見たものをどういうふうに表現するかという方法を見つけられたので。それは非常にダークで、本当に腐敗した世界、絶望などです。それを自分の美学を通して表現する方法を見つけられました。ここが実はスタートポイントでした」と懐かしむ。

橋本以蔵原作・たなか亜希夫画による日本の格闘漫画を、ショーン・ユー、魔裟斗主演で映画化した『軍鶏 Shamo』(07)については「私の大好きな日本の漫画作品を映画化しましたが、はっきり言って失敗作でした」と告白し、「あまりにも原作を好きすぎて、そこが重荷になってしまったと反省しております。でも、この失敗に対して、感謝もしています。失敗から学んだことを、この次の作品にいろいろと活かせたので。映画はダメでしたが、橋本先生には本当に感謝をしております。映画がきっかけでいろんな交流ができたので」とうれしそうに語った。

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の続編についても語った
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の続編についても語った

そしてジョニー・トー製作の『モーターウェイ』(12)については「いままでの作風と全然違うものをやろうと思いました。改めて映画の持っている価値について再認識することができたので、それはジョニー・トーのおかげだと思っております」と感謝を述べる。

続けて「ジョニー・トーからは、いろんな映画についての話を聞きました。私があるアイデアについて話すと、いろんな意見を与えてくれますが、その過程は非常に苦痛でした。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、とにかく厳しい人なので、プロット段階でかなりのダメ出しが入る。それを20回以上も繰り返すんです」と苦笑い。
「ただ、プロデューサーとしては良い人です。1年半かけて脚本はまだできてないけど、撮りながら考えていけばいいでしょうということで撮ったのが『アクシデント』ですが、私は映画に対するこだわり、求めたいものをやれたかなと思います」とコメント。

モデレーターは映画評論家のくれい響が務めた
モデレーターは映画評論家のくれい響が務めた

また、アーロン・クオックら豪華キャスト共演の「西遊記」三部作については、規模が大きすぎて「自身を見失ってしまったこともあります」と激白。「非常に超大作で、テーマも皆さんがよく知っているものだったので。当時、あなたはこの種の映画をこれからもずっと撮っていくのか?と自問自答しました。だから3作目を撮っていた時は、精神的に非常にロストしていた気がします。ただ、3作を作っていくうえで、こうやってキャストを集め、大作を作っていくのかということを知ることができ、学びもありました」と感謝する。

そして『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の続編についても言及。「続編は決まっていて、実は来年3月にクランクインします。ただ、いつ上映できるのかは、ポストプロダクション次第なのでわかりません。また、前日譚も実は進んでいて、脚本もすでにあります。2つの脚本は、トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』と密接に関連する作品になります。できるだけ早く撮り終えて、皆さんにお見せしたいです」とのこと。


最後に監督は「自分の人生を振り返ってみると、山あり谷ありでしたが、実は創作活動も同じです。時々見失ったり迷ったりしても、その結果が意外とすごく良かったりもします。人生はその繰り返しですね。だから、本作を皆さんに喜んでいただけて、自分はとてもラッキーだ思っております。改めて東京国際映画祭に感謝申し上げたいと思います」と語り、マスタークラスを締めくくった。

文/山崎伸子


「第38回東京国際映画祭」特集

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