『もののけ姫』はなぜ、かつてない大ヒットを記録できたのか?宣伝戦略に見るその挑戦を振り返る

コラム

『もののけ姫』はなぜ、かつてない大ヒットを記録できたのか?宣伝戦略に見るその挑戦を振り返る

『南極物語』『E.T.』を超える記録的な大ヒットに!

かつてない大量宣伝を経て、1997年7月12日に公開された『もののけ姫』は、『南極物語』だけではなく、それまでの邦洋画合わせた史上最大のヒット作『E.T.』(82)が持つ配給収入96億円の記録を11月には超え、最終的に配給収入113億円(興行収入では193億円)に達した。過去のスタジオジブリ作品で最大のヒットが、『紅の豚』(92)の配給収入27億1300万円だったことを思えば、この記録がいかにすごいものだったかわかるだろう。

エボシたちの前で夜の姿になるシシ神
エボシたちの前で夜の姿になるシシ神[c] 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

その数字の大きさから『もののけ姫』は社会的なムーブメントを巻き起こし、スタジオジブリと宮崎駿の名前は、幅広い世代に認知され、またその作品は国境を越えて愛されるようになった。そして、次作『千と千尋の神隠し』(01)で米アカデミー賞長編アニメ映画賞とベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたのである。

シシ神に首を返そうとするアシタカとサン
シシ神に首を返そうとするアシタカとサン[c] 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

50代の宮崎駿が持てる情熱を注ぎ込んだ渾身の名編を最高の画質と音で

スタジオジブリが国内外で飛躍する大きなポイントとなった『もののけ姫』。IMAXで上映される今回の4Kデジタルリマスター版では、グレーディングを4Kでやり直し、音に関しても音楽、効果音、セリフを同じレベルで出力して、合成し直している。作品をひと足早く鑑賞したが、明暗や細密な描写まで緻密に再現された映像の素晴らしさはもちろん、囁くような虫の鳴く声や迫力ある火薬の爆発音など、音の表現にも圧倒された。

会いに行くよ、ヤックルに乗って
会いに行くよ、ヤックルに乗って[c] 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND


改めて、これは映画館で観るべき作品だと再認識した。この機会に、50代の宮崎監督が持てる情熱を注ぎ込んだ渾身の名編を、最高の画質と音で体感してみてはいかがだろうか。

文/金澤誠

※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記

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