『トリツカレ男』柳美里、梶裕貴、渡部豪太ら物語に“トリツカレた“著名人からコメント到着!

『トリツカレ男』柳美里、梶裕貴、渡部豪太ら物語に“トリツカレた“著名人からコメント到着!

<コメント>

●黒田征太郎(画家、イラストレーター)

【写真を見る】黒田征太郎からの描き下ろしコメント
【写真を見る】黒田征太郎からの描き下ろしコメント[c]2001 いしいしんじ/新潮社 [c]2025映画「トリツカレ男」製作委員会

黒田からの描き下ろしコメント
黒田からの描き下ろしコメント[c]2001 いしいしんじ/新潮社 [c]2025映画「トリツカレ男」製作委員会

黒田からの描き下ろしイラスト
黒田からの描き下ろしイラスト[c]2001 いしいしんじ/新潮社 [c]2025映画「トリツカレ男」製作委員会

●柳美里(小説家、劇作家)

「なにを隠そう、私はトリツカレ女だ。いろんなものにトリツカレて、脱線や転落などの危険な目に遭ってきた。周囲の人からは呆れられたり罵られたりしてきた。自分に嫌気がさし、呆然とすることもある。そんな時、私は『心行くまで』と呪文のようにつぶやく。なにか(誰か)に夢中になった心の行き先で、心と心が響き合う。この映画に響くトリツカレた人の歌声の晴れやかさと、心象風景の鮮やかさに、とても励まされた。なにか(誰か)にトリツカレて自己嫌悪に陥り、人生を行き止まりのように感じでいる人に、ぜひ観てほしい」                                 

●いしわたり淳治(作詞家、音楽プロデューサー)

「幸せとはジュゼッペのようになにかに心の底から夢中になって、なにかにトリツカレている時間のことなのかもしれない。私たちは残りの人生の中で、あと何度新しいなにかにトリツカレて、あと何度新しい幸せを味わうことができるだろう」

●鈴木杏(俳優)

「ジュゼッペ、ペチカ、シエロをはじめ魅力的な登場人物たちが、あまりにもぴったりな線、色、音、動き、そして歌になって、私のなかにぐんぐん入ってきました。魅力と素敵のうずにすっぽりと入りながら、ジュゼッペのように『好きなものに容赦なく突き進む生きかたをしていきたい』と改めて思いました」

●高田漣(音楽家、小説家)

「ひとはなにかに夢中になるとまわりが見えなくなる。同時に私たちはそんななにかにトリツカレたひとを羨ましく思ったり、愛おしく感じたりする。元祖トリツカレ男のいしいしんじさんが描いたこの寓話は奇想天外でありながら人懐っこさにあふれている。氷の宮殿を溶かす暖かさに満ちている」

●松尾貴史(俳優)

「『失敗を恐れるあまり行動しない』という最近の風潮は、減点主義で物事が進まないこの国の弱点かもしれません。主人公ジュゼッペの自己犠牲をものともしない無償の愛は、物語に引き込まれるにつれ、我が身を気恥ずかしく思うほどの魅力に溢れています。詩情とアイロニーあふれるいしいしんじの世界観は、分断と排外主義に煽られる私たちにとって、砂漠の水となるでしょう」

●荒井良二(絵本作家)

「親愛なるジュゼッペ!いまごろ、なににトリツカレているかと思ったらアニメーションにトリツカレていたとは!ミュージカルでも舞台でもみんな毎年ジュゼッペに会えることを切に願う物語!」                          

●梶裕貴(声優)

「自分自身も『トリツカレ男』としての自覚がある者の一人として、ジュゼッペに深く感情移入しながら楽しませていただきました。慈愛とユーモア、痛いくらいのイノセント。とても上質な絵本に触れているような観覚でしたね。アニメだからこそ成し得る視覚表現。音楽と組み合わせることで増す言葉の説得力。そして、それを実現する歌唱力。映像化にあたり"ミュージカルアニメーション"という手法を用いられたその選択に、納得しかありません。夢を持つことすらままならない現代社会において、『君が本気を続けるなら、いずれなにかちょっとしたことで報われることはあるんだと思うよ』というセリフに救われる人は、たくさんいるんじゃないかなと思います」

●渡部豪太(俳優)

「いしいしんじ作品を読むと広がる街並みは、行ってみたいとあこがれるどこか異国の街。この映画『トリツカレ男』のジュゼッペとペチカが出会う彩り豊かな街は、まさに行ってみたいと思うアノ街でした!好きな人と出会い、過ごすあのワクワク感を歌と演出で心地よく表現されていて、『劇場をでたら自分も歌いながら空を飛べるのではないかな』と期待しながら現実の街に繰りだす。そんな不思議であっという間の映像体験でした!」

●山極壽一(人類学者)

「いしいしんじの作品は映画にも漫画にもならないと思っていた。ストーリー展開が常識破れだし、とにかく常人にはまねのできないことをする主人公が現れる。生の俳優にはとても演じられない。しかも、登場人物の動きがまた繊細で、意外性に富んでいる。その動きは漫画のコマ割りではとらえられない。しかし、アニメーションがあったのだ。

このアニメ映画では、主人公ジュゼッペの奇想天外な行為とそのトリツカレぶりのおもしろさが、流れるような動きで展開する。背景をリアルに描き、人の姿や顔の表情を線で抽象的に見せることで、ジュゼッペと彼が恋い焦がれるペチカの心の動きを頭の中に展開することができる。ジュゼッペの凍り付いた心を切り裂くように、氷のような雪が降るなんて光景はアニメでなければできない。人間より常識的なハツカネズミとの会話で、ジュゼッペの非常識なトリツカレぶりがわかる。ドリトル先生を彷彿とさせるような世界。

そして、このドラマは恋の成就と大団円の前に不思議な展開をする。ジュゼッペが恋するペチカにはほかに思いを寄せているタタンという先生がいたのだ。タタンに会えないペチカの苦悩を、なんとジュゼッペはタタンに扮装して晴らそうとする。ここが常人をはるかに逸脱しているし、アニメーションでなければ描けない展開だろう。ドラマの各所に思いがけない教訓が仕込まれているのもおもしろい。話が進んでいくうちに、人間はだれしもトリツカレという病にかかることがわかってくる。ジュゼッペはその程度が大きすぎるだけ、そしていつも本気なところが常人と違う。

でも、私のようなゴリラを追ってアフリカの熱帯雨林に入りこむ研究者も、大なり小なりトリツカレているのだ。ジュゼッペのように本気でトリツカレることは、決して無駄ではないことが私にもわかる。トリツカレたために新たな能力に目覚め、とんでもない発見をすることがあるからだ。そして、最大のトリツカレは恋することかもしれない。しかも、恋のトリツカレは醒めないし、自己犠牲によって恋は成就する。アイスホッケーのタタン先生の言葉は心に残る。氷の上ではいつか転ぶ。しかし前へと進むことをあきらめてはいけない。そしてそのとき大事な人を頭に描き、その名を呼べば大けがをすることはない。これは氷の上をすべるように、不確かな未来へ挑んでいく若者たちへのいい教訓になるだろう」

●成井豊(脚本、演出家)

「いしいしんじさんの原作小説が大好きなので、楽しみにしていました。絵がちょっと変わっていたので、最初は戸惑いましたが、『トリツカレ男』は大人のお伽噺なのだから、リアルな絵よりこういう風変わりな絵の方がいいのだと途中で気付きました。ジュゼッペがイケメンすぎないのもよかったし、ペチカがアイドルふうの美少女でないのもよかった。でも、2人ともとってもかわいかった!
『トリツカレ男』は言ってみれば、男の子が女の子を想う気持ちの純粋結晶みたいな物語で、それがそれまま映画になった感じで、原作ファンとしてもとてもうれしかった。高橋監督を始め、スタッフのみなさんに心からお礼が言いたいです。ありがとうございました。最後に一言。タタン先生、最高にカッコよかった!泣かされました!」

●野田裕貴(俳優、振付師)

「トリツカレ男がアニメーションで観られるなんて…!ジュゼッペのあらゆるものへの没入っぷりが余すことなく色鮮やかに描かれていて、ペチカの笑顔のために我が身を削って奔走する姿には胸がギュッとなりました。そして、とってもミュージカル!登場人物全員のことが大好きになれる楽曲ばかりですごくワクワクしっぱなしでした。なにかに夢中になること、誰かを好きになることってこんなにも素敵なんだなぁと、あたたかくてやさしい気持ちにさせてもらえる作品です!」


文/サンクレイオ翼

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