今年、TOHOシネマズの全国17劇場がアニバーサリーを迎えることを記念し、現在TOHOシネマズ株式会社によるお客様への感謝を込めた“アニバーサリーキャンペーン”が実施中だ。MOVIE WALKER PRESSでは対象の17劇場のスタッフへの取材や当時の資料を徹底リサーチ!オープン当初の貴重な裏話、その映画館ならではの魅力やトリビアなどを深掘りする連載コラムを展開中。ついに最終回となる第17回は、創業20周年の「TOHOシネマズ 津島」についてご紹介。
ヨシヅヤ津島本店のビル内に2005年12月8日に開業した当劇場。今回は、開業当時の支配人に話を聞いた。オープニングセレモニーには『あらしのよるに』(05)のぬいぐるみと、元プロ野球選手の板東英二が登場。元支配人によると「通常、TOHOシネマズのオープニングは比較的粛々とスタートしますが、ヨシヅヤさんがとても積極的に協力してくださったおかげで、大変盛り上がりました。ほかのローカル劇場と比べても多くのキャンペーンを実施することができたと思います」と感謝を口にする。
オープニング作品は『Mr.&Mrs.スミス』(05)で、1日の上映回数が最も多かった映画は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(公開中)など。コンセッションの人気メニューはポップコーンのペアセットだそう。劇場周辺のおすすめスポットは、津島市内にある天王川公園で、特に春は藤棚が見応えありとのこと。また、夏には同公園内で、尾張津島天王祭が開催され、にぎわいを見せる。
ヨシヅヤ津島本店3階のワンフロア全体が映画館となっており、10スクリーンを有する当劇場。「2階から3階に上がっていくエスカレーターに乗ると、異世界に入っていく感覚になれるのではないかと」と言うスタッフのセールスポイントにも、大いに納得させられる。また、メイン館のスクリーン7は縦6.3m×横15mのビッグサイズなので、映画ファンに好評を博しているとか。
劇場装飾キャンペーンで中部地区1位に!とんねるずが舞台挨拶に登壇
TOHOシネマズ 津島の開業当時の支配人は、連載コラム第12回で紹介した創業25周年の「TOHOシネマズ ファボーレ富山」でも、開業時の支配人を務めていた“名物支配人”である。「この映画はイケる!」と判断し、劇場をあげてPR活動を展開した妻夫木聡の初主演映画『ウォーター・ボーイズ』(01)は、ご当地映画でないにかかわらず大勢の観客を動員したことで、いまも妻夫木が「恩人」と語る人物だ。もちろん、津島でもその手腕を大いに発揮した。元支配人に、津島で印象深かったキャンペーンについて尋ねると、とんねるず主演映画『矢島美容室 THE MOVIE 夢をつかまネバダ』(10)での思い出を挙げる。「当時、劇場装飾キャンペーンが展開されていて、各映画館が競いあっていたんです。それで、津島は中部地区で1位に選ばれました!」
元支配人は「社員やマネージャーだけではなく、スタッフみんなで頑張りました。当時はポスタープリンターがありましたので、データをもらって、手軽にポスターを作ることができたんです。スタッフが『ここにこういう装飾をしたい』といろいろな意見を出してくれて、それを実践していきましたが、『これは優勝できる!』と思いました。僕はただ『頑張れ!』と応援しただけですが」と謙遜しつつも、スタッフの主体的な取り組みが成果につながったことを振り返る。
見事、劇場装飾キャンペーンの1位に選ばれた当劇場では、とんねるずのメンバーたちによる舞台挨拶が行われ、より一層、スタッフのモチベーションも上がっていったそうだ。「舞台挨拶が終わると、スタッフを交えて全員で集合写真を撮りました。そういう取り組みを続けていくうちに、スタッフ陣もやりがいを感じられますし、『次はどんなキャンペーンを企画しようか?』といった今後への意欲も高くなります」ということで、全員がやりがいを感じ、楽しく働いていた様子が伺える。
ほかにも『陽気なギャングが地球を回す』(06)では、大沢たかお、佐藤浩市、松田翔太が、『白ゆき姫殺人事件』(14)では、綾野剛や井上真央など、豪華キャスト登壇の舞台挨拶が開催されていたそうだ。「控室の大きな扉に、綾野剛さんがサインをしてくれました。また、『矢島美容室』の木梨憲武さんのサインもしてあるので、この扉は劇場にとって宝物になっています(笑)」と言う元支配人。
様々な人と人をつなげ、長年映画業界を盛り上げてきた元支配人は「基本的に僕が現場を引っ張っていくわけではなく、周りがちゃんと乗っかってくれて、動いてくれただけなんです。僕はただ、『こっちへ行こう』と言うだけです。だから、常に周囲の方々に敬意を評し、自分は出しゃばらないようにと思っています」と語る。