前田真宏が『トロン:アレス』の世界をイラストで表現!シリーズが挑み続ける革新性、そしてAIに対する考え方は?

インタビュー

前田真宏が『トロン:アレス』の世界をイラストで表現!シリーズが挑み続ける革新性、そしてAIに対する考え方は?

「僕らクリエイターは、新しいなにかを創造するのが仕事」

――『トロン』に衝撃を受けた前田さんですが、最新作『トロン:アレス』にはどんな期待をしていますか?

「今度はプログラムが現実世界に出てくると聞いて興味がわきました。予告編ではサブタイトルになっている“アレス”を演じるジャレット・レトがかっこいい。世界観やメカなどのデザインもシャープでソリッドな感じがしました。でも、コスチュームのデザインのベースになっているのはメビウスだったので、オリジナルのファンとしてはうれしいですよ。アレスは現実世界で29分しかもたないAIなんですよね?その設定をサイバースペースと現実世界でどうやって展開させるのかも気になります。やっぱり、テーマがまさに“いま”なのでSFファンじゃなくても気になるんじゃないですか?」

最強AI兵士アレスを演じるジャレッド・レト
最強AI兵士アレスを演じるジャレッド・レト[c]2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

――ところで、前田さんはAIについてはどういう考え方なのでしょうか?

「丁度この前、来日されていたジョージ・ミラー監督とたまたまAIについて話す機会がありました。僕たちの意見は一致していて、『AIは答えを何通りも出してくれるし、めちゃくちゃ便利で頭もいい。でも、それは全部、過去のデータベースから得た答え。僕らクリエイターは前を向いていて新しいなにかを創造するのが仕事だから、大きな補助くらいに留まるんじゃないか』って。結局は作るのも人間、消費するのも人間。その人間の心に訴えかけるのがエンタテインメントなので、クリエイトの時にはものすごく助けてくれる重要な存在ではあるという感じなのかな。とはいえ『そうやって過去を学習することによってなにか新しいものを生み出す可能性はあるだろう』という話もしましたけどね。
随分前に、マーロン・ブランドをAIで再現して、そのクセや喋り方も再現し“俳優”として映画に登場させるという話を聞いたことがあるんですが、結局は実現しなかった。やっぱり、観たい人がいなかったせいだと思います。(ドゥニ・)ヴィルヌーヴ監督が『ブレードランナー2049』(17)の時、ショーン・ヤングが演じた1作目のままのレイチェルをCGIで再現してましたが、そういうスポット的な使い方はありだけど、主演やメインとなるとやはり違うと思いますね」

疾走するライトサイクル!前田真宏監督の描き下ろしイラスト
疾走するライトサイクル!前田真宏監督の描き下ろしイラストillustration by Mahiro Maeda

――『トロン:レガシー』ではジェフ・ブリッジス扮するフリンの若かりしころのルックスをした分身が登場しますけどね。

「そうでした。あれはグリッドの中のプログラムという設定だし主人公でもない。やっぱりそういった使い方だと思います。とはいえ、とんでもなくAIの進化は速いので、どうなるかわからないというのが正直なところ。そういうひとつの答えが『アレス』で描かれているんでしょうか?とても気になりますね」

「本作のアイデアの種は、第1作の時点でまかれていた」

本インタビューから数日後、前田監督に試写会でいち早く『トロン:アレス』を鑑賞してもらうことができた。ここからは編集部員が実施した前田監督の感想インタビューをお届けする。

――まずは率直な感想をまずお聞かせください。

「シナリオがすごく良くてびっくりでしたね。テンポも良くて、現代の基準でのエンタメ映画としてはシリーズで一番良いんじゃないですか?登場するものすべてが1作目から端を発していて、しっかりと作り込まれているところは感動でした。ここまできちっと続編になっているとは思わなかったです」

『トロン:アレス』は公開中!
『トロン:アレス』は公開中![c]2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

――『トロン:アレス』は1本の映画としても楽しめますが、1作目を観ているとより満足できるところはありました。

「ですよね。アイデアも含めて、うまく作ったなって感じがすごいします。1作目は、現実のオブジェクトがデジタル世界にデータとして取り込まれて、最後はまた現実に帰ってくるって話じゃないですか。だから、デジタル世界からAI兵士が出てくるという本作のアイデアは、すでに1982年の時点で種がまかれていたわけなんですよ。これってアイデアとして考えるのは簡単なんですが、リアルな街の中で具体化するのは途方もなく難しいはず。
しかも結局描くことは、後ろから光を出して相手の進路を邪魔する“スペースパラノイド”だというのはおもしろかったですね。現実世界にライトサイクルが現れると、『ぶつかったらどうなるの?』『現実のオブジェクト当たったらどうなるの?』といった疑問が出てくると思うのですが、全体的に破綻なく作られていて底力も感じました」

現実世界で爆走するライトサイクル
現実世界で爆走するライトサイクル[c]2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

――前田さんが描き下ろしたイラストには、第1作のライトサイクルも描かれていましたが、『アレス』でも登場していましたね。

「実はまったく知らなかったんですよ(笑)。『リメイク要素も入ってるんだ!』みたいな感じで純粋に驚いていました。『フリンのマシンの中、こんなふうになっているんだ!』という発見もあってうれしかったですね」

現在発売中の前田監督初画集「雑 前田真宏 雑画集」に関するインタビューも後日掲載予定!
現在発売中の前田監督初画集「雑 前田真宏 雑画集」に関するインタビューも後日掲載予定!

――最後に、特に印象深かったシーンを教えてください。

「1作目から出てくるゲートの形をした飛行体(=レコグナイザー)、あれが非常に良かったです。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』でもサイコ・ガンダムというのが出てくるんですが、それに近しい描写がされていて。こんなに上手にやられるとちょっと困るな…っていう(笑)。アニメでやれることがまたひとつなくなったみたいな感じで、ちょっと…いやだいぶ悔しかったですね」


取材・文/渡辺麻紀

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前田真宏監督の初画集「雑 前田真宏 雑画集」
前田真宏監督の初画集「雑 前田真宏 雑画集」[c]khara illustration by Mahiro Maeda


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