運命的なキャスティングで紡ぐ初恋の物語。『君の声を聴かせて』チョ・ソンホ監督が語る想い

運命的なキャスティングで紡ぐ初恋の物語。『君の声を聴かせて』チョ・ソンホ監督が語る想い

「誰かを愛することが自分の夢になってもいい」

やりたいことが見つからないヨンジュンをはじめ、将来に悩むキャラクターを通して、自分の夢を追うことの大切さや美しさも浮かび上がる。チョ・ソンホ監督が映像作家になるという夢を見つけたのは、「とても遅い時期だった」と告白する。

自分の夢について語り合う2人。美しい世界の光が、彼らの恋と未来を包み込む
自分の夢について語り合う2人。美しい世界の光が、彼らの恋と未来を包み込む[c] 2024 KC Ventures Co.,Ltd & PLUS M ENTERTAINMENT & MOVIEROCK Inc., All Rights Reserved

「高校を卒業してから、ある大学の経営学科に入学をして。その当時は、『自分はなにをしたいのだろう』『どうするべきなのか』とあれこれ悩んだりしていました。次第に自分の考えや感情を映画にして表現したいという想いが生まれてきて、思い切って経営学科を辞めて、映画学科に入り直したんです。そこからまた『伝えたいことを映画にするにはどうしたらいいのだろうか』という努力が始まり、そういった意味では映画を作り続けているいまもまだ、夢を追いかけている真っ最中なんですね」と目尻を下げる。

「夢を持つことはとても大事」と語るチョ・ソンホ監督
「夢を持つことはとても大事」と語るチョ・ソンホ監督撮影/成田おり枝

ヨンジュンと同じように、迷いながら歩むべき道を見つけてきた。チョ・ソンホ監督は、「夢を見つけたり、追いかけたりすることに、年齢は関係ないと思っています。ただ間違いなく言えるのは、人生においていくつになっても夢を持つことはとても大事だということ。本作には、そういった想いも込めています」と吐露。「失敗したって問題ない。ヨンジュンのように、誰かを愛することが自分の夢になってもいいと思います。そしてその成果を誰にも知られなかったとしても、夢を見つけようとするプロセスや、それに向かって努力をすること自体が大事。ヨンジュンとヨルムのときめくような初恋を目にしながら、皆さんの夢についても考えていただけたらこんなにうれしいことはない」という監督の実体験に基づくエールは、本作により温かみと力強さを加えている。

2人の恋を応援したくなるようなラブストーリーとして完成している
2人の恋を応援したくなるようなラブストーリーとして完成している[c] 2024 KC Ventures Co.,Ltd & PLUS M ENTERTAINMENT & MOVIEROCK Inc., All Rights Reserved

映画を作り続けることが、自らの夢だというチョ・ソンホ監督。本作では手話を使いながら、登場人物たちの感情を表現するという新たな領域に足を踏み入れ、たくさんの発見があったとも。

あらゆる心情を物語る、まなざしにも注目だ
あらゆる心情を物語る、まなざしにも注目だ[c] 2024 KC Ventures Co.,Ltd & PLUS M ENTERTAINMENT & MOVIEROCK Inc., All Rights Reserved


「手話は、手を使った言語です。とはいえ、ろう者の方とお話をさせていただくと、手の動きは30パーセントくらい。残りの70パーセントくらいは目や身体の動きで、自分の想いを相手に伝えているそうなんです。本作でも彼らの感情に注目をするために、後半に向かうに連れて手の動き以上に、顔のクローズアップを多用して、彼らの眼差しや目の動きを見せています」と秘話を口にしながら、「彼らの感情をしっかりと伝えることで、観客が『手話を習ってみたい』『ろう者の方とお話をしてみたい』と思ってくれたらいいなという気持ちもありました。韓国の上映時には、実際にそういった感想をくれた方もいて、気持ちが伝わったんだとうれしく思っています」と穏やかな笑顔で語っていた。

取材・文/成田おり枝


作品情報へ

関連作品