イ・ビョンホンが『NO OTHER CHOICE』で見せた真骨頂と、語り尽くした名演の秘訣。釜山国際映画祭の”顔”アクターズハウスをロングレポート
「カメラの前では震える」「客観的に脚本を読む」…いま明かされる名優の裏側
そして質問コーナーでは、BIFFの熱くてフレッシュな観客たちを相手に、イ・ビョンホンの熱い演技論が語られる“マンツーマンの演技論授業”がスタートした。
まず、演技を勉強している学生の方から「カメラの前で演技をする時感情が込られないとき、どうすればいいか」という質問が飛ぶ。実はイ・ビョンホンも今なおカメラの前では緊張で震えてしまうらしい。
「緊張を解くための自分だけの方法を探してほしい。緊張しすぎると、自分の実力の半分も出ません。ストレッチであれ、軽い運動であれ、自分がとてもリラックスできる方法を先に探すんです。たとえばカメラを持っているスタッフと一緒に冗談を言ったりして親しくなる。ぎこちなくて不便な感じを一旦取り除くんですよ。自分自身はリラックスさせておき、次は自分が負うべきキャラクターの感情を考えたら、おそらくもっと純粋に表現できるはずでしょう」。
また、「俳優として、とある人物やキャラクターを演じる際に困難を感じたとき、どのように乗り越えているのかが気になります」という質問には、「キャラクターを分析する時に、客観的に読もうと思っています。これから私が演じる役がどんなものなのか分からないままでいたいので、最初にシナリオが私のもとへ届いたとき、マネージャーにはどんなキャラクターなのか私に話さないでほしいとお願いしています。とにかく客観的に、楽な心でただおもしろい1冊の本を読む感じでいてこそ、全体の状況が何か分かるんですよね」と答えた。
まだまだたくさんの観客が手を挙げていたが、“イ・ビョンホン先生”の特別授業も惜しまれつつ終了。イ・ビョンホンは「質問をされた皆さん、演技志望者ではないですか?もしまたアクターズハウスをやることになったら、演技を志す方々たちとだけ一度やってみるのもおもしろいかもしれませんね」と話し、会場からは拍手が起こった。
映画を愛し、演技を愛する本物の“役者一筋”の一面をのぞかせた夜。初日の開幕式での締めの言葉が思い起こされた。
「映画があるから俳優がいる。私はそれを忘れたくありません」。
取材・文/荒井 南