A24製作スリラー『テレビの中に入りたい』不気味なテレビ番組「ピンク・オペーク」の内容を収めた本編映像
第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品されたA24製作の映画『テレビの中に入りたい』(公開中)。本日より公開の本作から本編映像が到着した。
本作は1990年代のアメリカ郊外を舞台に、自分のアイデンティティにもがく若者たちの“自分探し”を描いたメランコリック・スリラー。郊外での日々をただやり過ごしているティーンエージャーのオーウェン(ジャスティス・スミス)にとって、謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。同じくこの番組に夢中になっていたマディ(ジャック・ヘヴン)と共に、2人は番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく。
A24と俳優のエマ・ストーンが設立した映画制作会社フルーツ・ツリーが共同製作を務めた本作は、2024年サンダンス映画祭のミッドナイト部門でプレミア上映されて以降、第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、第40回インディペンデント・スピリット賞では作品賞を含む主要5部門にノミネートされた。全米では2024年5月3日、4館での限定公開から始まると瞬く間に評判を呼び、5月17日には469館に拡大。ストーンが惚れ込んだ新進気鋭の監督ジェーン・シェーンブルンによる特異な吸引力に満ちた本作は、世界中で熱狂的なファンを獲得し、公開から1周年記念で新たなグッズが発売されるなど、続々と“中毒者”を生みだし続けている。
このたび解禁された本編映像は、主人公のオーウェンが暗室で「“番組初回”(再放送)」とマディが手書きしたVHSテープを手に持つシーンからスタート。薄暗い部屋で1人VHSテープを再生すると、無表情のまま「何度も繰り返し観たけど、飽きなかった」と語るオーウェンのせつなげな表情が捉えられ、そこからまさに“テレビの中に入っていく感覚”に陥るかのようにオーウェンとマディを夢中にさせる深夜番組「ピンク・オペーク」が映しだされていく。
「ピンク・オペーク」は主人公となる2人の少女イザベルとタラが、敵であるミスター憂鬱(メランコリー)の遣わす怪物たちと毎週戦うヒーローものの番組。月の男“ミスター憂鬱(メランコリー)”が郡の各地に送り込むモンスターと戦うのが使命なのだと彼女たちは知るが、邪悪な彼は現実の支配を目論み、”真夜中の国“という監獄を作りイザベルとタラを閉じ込めようとする。
映像では、森の中で白い洋服を身にまとったモンスター“マルコとポーロ”が怪しげな踊りを繰り広げ、次のシーンでは川辺に座り真剣な面持ちで語り合うイザベルとタラの会話が映しだされていく。裏で糸を引く“ミスター憂鬱(メランコリー)”が、ふたりを空から怒り狂う恐ろしい顔で見つめる姿も捉えられていて「私になにが起きたの?なんで私はそれがわかるの?」と不安げな表情でタラに問いただすイザベルに対し「もっと強く心を持って。私も同じ、特別なの。私たちは“ピンク・オペーク”。運命なの」とタラが強く答え、2人の首のタトゥーがピンク色に輝く「ピンク・オペーク=OP」の象徴的なシーンも見ることができる。
本作と同じく35mmで撮影され、ポストプロダクションでVHSとベータマックスに変換するなどこだわり抜いて作られた劇中の「ピンク・オペーク」の映像は、夢と現実、映画とテレビの狭間のように感じられる独特の質感が表現された特別な映像。また本作が記念すべき俳優デビューとなった「スネイル・メイル」でヴォーカルとギターを務めるミュージシャンのリンジー・ジョーダン(タラ役)の演技にも注目だ。
「ピンク・オペーク」と今週のモンスターのビジュアルやトーンの美しさは、映画の中で時間の経過と共に変化していて、シェーンブルンは「若いころの曖昧な記憶や、不安定な感情が混濁した主人公たちといった、“信頼できない語り手”たちがこの映画を動かしています。12歳の時に郊外の地下室で観れば、テレビ番組は最高にクールなものに思えますが、中年になり抑圧されていてソファに横たわって観ると魔法は完全に失われてしまうと感じます。観客は提示されるメディアとの関係を問うべきです」と語っている。またあわせて新しく解禁となった場面写真には、イザベルがモンスターに捕らえられているショッキングな場面や、スーパーマーケットで立ち尽くす意味深なマディのカット、さらに主人公オーウェンが幼い頃から影響を受ける母親の姿も収められている。
さらに9月27日(土)からはセレクトショップ「bonjour records」で本作の公開を記念した「bonjour recordsエクスクルーシブTシャツ」の販売がスタート。「bonjour records 代官山店」、「Jadore JUN ONLINE」にて発売される。劇中のテレビが燃えるシーン、オーウェンとマディの2人がテレビを見つめるシーン、テレビ番組「ピンク・オペーク」のモチーフなどを用いたグラフィックフォトTシャツで、本作やA24ファンでなくても手に入れたくなるポップでスタイリッシュなデザインとなっている。
唯一無二の物語で世界中に新たなファンを生みだしている本作。思わずクセになる映像をスクリーンで体感してほしい。
文/スズキヒロシ