『Dear Stranger』で初共演の西島秀俊&グイ・ルンメイ、互いに受けた刺激「“理想とする演技”を考えるきっかけに」

『Dear Stranger』で初共演の西島秀俊&グイ・ルンメイ、互いに受けた刺激「“理想とする演技”を考えるきっかけに」

「自分自身を完全に開放し、現場でお互いの間に生まれるものを大切に演じることができた」(ルンメイ)

――共演してみて、相手に引き出してもらったと思う“自分の知らなかった一面”はありますか?

ジェーンの父が護身用に調達していた銃を、賢治の車のトランクに隠す
ジェーンの父が護身用に調達していた銃を、賢治の車のトランクに隠す[c]Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

西島「ルンメイさんは、演技だからといって嘘をつかない人なんです。簡単に自分の信じているものを手放さない。演出に対しては全力で応えるけれども、演技だからと簡単に一線を越えることはない。僕にとって改めて “自分が理想とする演技”を考えるきっかけになりました。そういう演技を目の前で見せてもらい、とても影響を受けましたし、これからの自分の演技も変わっていくだろうと感じています」

――西島さんが、かつて「こういう演技をしたい」と目指していた形だったということでしょうか?

西島「そうですね。 理想形として目指していた形があっても、いろいろ経験してきたなかで、それが受け入れられない状況もありました。“別の正解もある”と自分のなかで納得することでやってきたところがあったと思うのですが、もう一度、“本当に自分がやりたかったこと”を考えさせられるような演技を目の前で見ることができて、刺激を受けました」

西島秀俊が自分にとって理想の演技について語る
西島秀俊が自分にとって理想の演技について語る撮影/興梠真穂 ヘアメイク/亀田雅 スタイリスト/オクトシヒロ

ルンメイ「私こそ、西島さんの声の表現や演技、様々な表現方法から、テイクごとに異なる感覚を受け取りました。どんな演技をしても西島さんが受け止めてくれましたし、“その瞬間に感じたことが正しい”と励ましていただきました。

以前の私は役作りで考えすぎる傾向があったのですが、今回は経験豊富な西島さんとの共演なので、自分自身を完全に開放し、現場でお互いの間に生まれるものを大切に演じることができたと思います。この方法を試してみて、私自身、驚くことが多かったですね。今後出演する作品にこの方法が適しているかどうかはわかりませんが、今回は西島さんが大きな木のようにそこにいてくださったおかげで、私はその下で楽しく遊ぶことができたと感謝しています」

グイ・ルンメイは今回の共演に感激
グイ・ルンメイは今回の共演に感激撮影/興梠真穂 ヘア/Nelson Kuo メイク/YAO CHUNMEI スタイリスト/Fang Chi Lun、Quenti Lu

「変化を積極的に受け止めて前向きに進んでいこうと思っています」(西島)

――本作は、ニューヨークの街や幾度となく登場する廃墟の雰囲気、こだわりを感じる効果音など、ぜひ映画館で観て、感じてほしい映画だと思います。動画配信プラットフォームで映画やドラマを観る人が増えたことで、視聴者が様々な国の作品や文化に触れ、本作のような国際共同製作の作品が生まれやすくなる土壌ができる一方、映画館好きとしては、やはり寂しさも感じます。映画を観る環境について、日頃からどのような考えをお持ちですか?

【写真を見る】ナチュラルな笑顔が映える!西島秀俊とグイ・ルンメイを夜の屋上で撮りおろし
【写真を見る】ナチュラルな笑顔が映える!西島秀俊とグイ・ルンメイを夜の屋上で撮りおろし撮影/興梠真穂 ヘアメイク(西島)/亀田雅 スタイリスト(西島)/オクトシヒロ ヘア(ルンメイ)/Nelson Kuo メイク(ルンメイ)/YAO CHUNMEI スタイリスト(ルンメイ)/Fang Chi Lun、Quenti Lu

西島「音がなかった時代から白黒になりカラーになり…映画はそうやってどんどん変化しているので、そのなかで当然失われるものもあります。でも、そういうことも前向きに受け止めようと、若い頃に決めたんです。僕はフィルムでの撮影をぎりぎり経験している世代で、デジタルに変わった時も、やはり環境が大きく変わりました。配信もいまはまだ過渡期で、この先どうなっていくのかわかりませんが、変化を積極的に受け止めて前向きに進んでいこうと思っています。それでも、映画は生き延びていくと思っているんです。僕自身は、映画館でも配信でも、どちらでも映画を観ています。配信にないものはDVDやBlu-rayを買いますし、あらゆる方法で観ています」

ルンメイ「私も西島さんと同じ意見です。フィルムの時代を懐かしむ人は多いですが、時代は前に進み続け、メディアも変化しています。動画配信プラットフォームにも、徐々に適応していくべきですよね。とはいえ私自身も、映画館で2、3時間、完全に映画に没頭して過ごす体験は非常に貴重だと感じています。忙しい日々のなか、映画館から出ると、まるで雨に洗われたような清々しさを感じることがあるんです。そういう時間や感覚を大切にしながらも、新しいメディアにもオープンな気持ちで向き合いたいと思っています」

『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は9月12日(金)公開
『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は9月12日(金)公開[c]Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.


取材・文/新田理恵

■衣装(グイ・ルンメイ)
CHANEL

関連作品