妻夫木聡「誰かの人生や世界が変わるきっかけになれば」『宝島』東京プレミア舞台挨拶で自身が信じる“映画の力”を熱弁!
映画『宝島』(9月19日公開)の東京プレミアが開催され、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮(とろサーモン)、デリック・ドーバー、大友啓史監督ら総勢14名が舞台挨拶に登壇した。
本作は混沌とした時代を、自由を求めて全力で駆け抜けた若者たちの姿を、圧倒的熱量と壮大なスケールで描く衝撃と感動のエンタテインメント超大作。ある夜、一人の英雄が消えたことから始まる本作は、アメリカ統治下の沖縄で、自由を求め駆け抜けた若者たちの友情と葛藤を描きだす。英雄はなぜ消えたのか?幼馴染3人が 20 年後にたどり着いた真実とは…。
本作へのたぎる想いを胸に、“宝島宣伝アンバサダー”として全国行脚することを宣言した主演の妻夫木は、6月から2か月間に及ぶ全国キャラバンで20エリアを超える訪問を達成。本作へ注ぐ情熱の源について尋ねられた妻夫木が「僕は映画の力を信じたいからです」と力を込め、「この映画に1%でも誰かの人生を、未来を変えられる力があるとすれば、僕はそれを信じたい。目の当たりにしたい。そのためには手渡しで(作品を)届けたいという想いがありました」と説明すると会場から大きな拍手が湧き起こる。撮影を振り返った広瀬は「妻夫木さんをはじめとして、みなさんが沖縄という場所と正面から向き合って、作品、役に取り組む姿はとても刺激的。本当に贅沢な時間を過ごさせてもらいました。役と向き合う時の概念を改めて変えられるような姿に感動しました」と、本作の現場で得たこと、感じたことに触れる。
「僕は役に向き合うだけ」と話した妻夫木は、「今回は向き合うものが大きすぎる。向き合えば向き合うほど知らないことが出てくる。それを受け止めて、全国、全世界に届ける。そういう使命感のようなものがありました」とたぎる想いを胸に過ごしてきたと伝えていた。インタビューなどで「一生分泣いた」と答えている広瀬は、「泣きすぎて、枯れました…」と微笑み、「エネルギッシュで魂が宿っている現場が続いていて。喰らうし、吸い取られるし、後半になると一人のシーンも増えてきてどんどん寂しくて。海を見るだけ、景色や音だけでも、沖縄のパワーを感じながら撮影していました。本編を観ても『泣いてるなぁ』って思うほど(笑)。素直な感情でいたら、そういう心情になって(泣いていた)…という感覚でした」と撮影時の心境を解説していた。
大友監督は沖縄での撮影について「土地の持つ力、目に見えない力があります」と切りだし、「そのパワーが俳優たちに見えないパワーを与えているのが僕には”見える”ようでした」と懐かしむ。続けて「東京に戻った時に、どうやってその空気を持ち帰るのかと思ったけれど、うまく持ち帰る形になっていました」と満足の表情を浮かべていた。役者として本作に参加した塚本は大友組について「想いを込めたセット、その場を用意されて『あとは信頼するあなたたち、どうする?』と(役者に)問われているような感じでした」と印象を打ち明ける。4日ほど前に完成版を観たという塚本が「すごい情熱でした」と感心しながら「こういう演出の方法もあるんだと勉強になりました」と感想を伝えると、妻夫木は「大友監督は『お前はどう生きるんだ』と(いうメッセージを)突きつけていたから、僕たち役者は持ってきた想いをぶつけるだけでした」とも話していた。
窪田は大友組の大変さに触れ、「大友監督は枯れ果てるまで走らせるし、戦わせるし…」と話し始めたところで「愚痴になるかなぁ…」とニヤリ。「またかよ!」と思う瞬間があったと正直な気持ちを明かし「みなさんもありましたよね?」と窪田が共演者に問いかける場面も。しかし「またかよ!と思っても、(現場で)一番少年のように楽しんでいるのは大友監督。その姿を見るともっと出さなきゃって思います」とまとめながらも、「でも大友組は大変です」とリピートする窪田に妻夫木は「愚痴だね」とニヤニヤ。窪田の話に頷いていた永山から「僕は、何度でもやりたい派。テイクを重ねたい派なので…」とのコメントが飛び出すと、窪田は「ごめんなさい…」と愚痴のようになってしまったことを大友監督にお詫びするような仕草を見せ、会場の笑いを誘っていた。
スタッフ、キャストの熱量がたぎっていた撮影現場では、カットがかかっても暴動シーンがなかなか止まらないという現象もあったそう。中村は「みんながみんな同じ熱量でお芝居をするのは大変。僕も頑張らなければと思いました」と刺激があったと明かす。妻夫木は「カットがなかなか聞こえなくて…」と振り返ったが、カットがかかってもアクションが止まらないシーンになるほどキャストをより熱くしたのは、妻夫木本人だったことが明かされる場面も。「台本にないのに焚き付けた」などとキャストから暴露された妻夫木は「台本にはあったはず…」としながらも「散々拷問されたので、ちょっとくらいいいかな」と思ってのセリフ(アドリブ)だったと、苦笑いしていた。
いま、この作品を届ける意味を問われた大友監督は「リゾートアイランドとしての沖縄を知っているけれど、日本が高度成長期でまっしぐらに豊かになっていった時期に、知らないところで、沖縄にはアメリカ統治下の弱肉強食の世界にあった。それを知らなきゃいけないし、知るだけじゃなく、感じなければいけない」と説明。続けて「映画というメディアの好きなところは、暗闇のなかで集中して大スクリーンで音を浴びながら追体験できること。本作では歴史を学ぶのではなく、登場人物と自分を重ね合わせて、彼らと感情を重ねながら、沖縄を追体験できます。昭和の人間としてやらなきゃいけないことの一つだとずっと思っていました。僕らがどこまで迫れたかはわからないけれど、限界ギリギリまでやったつもり。なにを伝えたいのかは言いたくない。逆に僕らに映画を観て感想を伝えてほしいです」と呼びかけ、映画は最高のコミュニケーションの手段とし、「当時の沖縄にはいまの時代に必要な気づきがあると思います。自分にとっての”宝”はなんだろうという気持ちを持ち帰って、なにかの機会にみなさんの声を届けてください!」とリクエスト。
「宣伝キャラバンを回っている間、どんどん『宝島』という作品が大きく成長していると感じています。この映画を通じて、この先にある未来を僕たち一人一人の想いによって考えることができたら、いい未来になるのではないかと思っています」と笑顔を見せた妻夫木は、「映画というものは、もしかしたらこの社会のなかではちっぽけなものかもしれません。でも誰かの人生や世界が変わるきっかけになれば…」と映画の力、作品に込めた熱い想いを言葉にし、映画の力を信じているという自身の素直な気持ちを改めて観客に伝え、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/タナカシノブ