細田監督&芦田&岡田がヴェネチア国際映画祭へ!『果てしなきスカーレット』制作秘話や役作りを語る
『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)、『竜とそばかすの姫』(21)など、これまでに国内外の数々の賞に輝き、日本のみならず世界中の観客を魅了し続けている細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』(11月21日公開)。このたび、第82回ヴェネチア国際映画祭での公式上映目前プレスカンファレンス(公式記者会見)&フォトコールレポートが到着した。
“生きる”をテーマに、「人はなんのために生きるのかを問う、骨太な力強い映画を目指したい。いま、この大きなテーマを、観客と一緒に考えたい」という細田監督の想いから始まった本作。主人公の王女スカーレットが父の復讐に失敗するも、“死者の国”で再び、宿敵に復讐を果たそうとする物語が描かれる。スカーレットの声を演じるのは芦田愛菜。そして芦田演じるスカーレットと共に旅をする現代の日本人看護師の聖を岡田将生が演じる。さらに、スカーレットと聖の前に立ちはだかる最凶の宿敵クローディアスを圧倒的存在感で役所広司が演じるほか、市村正親、吉田鋼太郎、斉藤由貴、松重豊、山路和弘、柄本時生、青木崇高、染谷将太、白山乃愛、白石加代子といった総勢11名の日本を代表する豪華俳優陣が集結し、新たな細田作品を彩る。
9月3日にヴェネチアに到着した細田監督は、栄えある第82回ヴェネチア国際映画祭に参加できることについて「ヴェネチア国際映画祭は、映画を作る者として、ずっと憧れの地でした」とその喜びを噛みしめる。また、公式上映に期待にしていることとして、芦田は劇場の大きなスクリーンで作品をお客様と楽しめることを、岡田は同じ空間でリアクションを感じられることだと話し、公式上映への参加を心待ちにしている様子。
現地時間9月4日21:30開始の公式上映を目前に、細田監督、芦田、岡田は、プレスカンファレンス(公式記者会見)とフォトコールにそろって参加。芦田は色とりどりの花が描かれた黒を基調としたドレスに、黒いジャケットを羽織るシックな装い、岡田はネイビーのスーツに同色のネクタイを締めて登場し、会場に華を添える。会場入り口に到着すると3人を出迎えたのは、3人を一目見ようと集まった現地のファン。「HOSODA-SAN!」、「MANA-SAN!」、「OKADA-SAN!」と、現地のファンから声援が飛ぶと、3人はファンの元に足を運び、サインや写真撮影に応じた。
まず一行が登壇したのは、プレスカンファレンス(公式記者会見)。会場には、世界中から集まった海外メディアの記者や報道関係者が100名以上詰めかけ、本作への国際的な注目度の高さが伺える。特に、海外でも高い人気を誇る細田監督へ質問が集中し、会見では本作のテーマ、作品に込めた想いやメッセージなど幅広い質問が飛び交った。
この作品を作るきっかけについて尋ねられると細田監督は、「“復讐劇”の映画を作りたいと思いました。世界中の人が“復讐劇”(が描かれた作品)が好きだと思ったので、みんなが観たいと思ってもらえる作品を作ろうと思ったんです。ただ“復讐”だけではなく、もう1つの要素として“赦し”という部分を同時に含めて、今までにない映画を作ろうと思いました」とコメント。制作のきっかけについて話すと同時に、本作を構成する重要な要素を明かす。
また、本作を制作するにあたり、特に難しかった点を聞かれると「主人公のスカーレットと聖をどんなふうに設定し、魅力的な人物にしていくのかという部分が難しかったです。“対比”ということに重きを置いて考えました。1人は王女、1人は看護師。その立場の違いを描くことによって、どちらも魅力的(な人物)に見えるように作っていきました」と回答。なお、今回の主人公像については「これまでのプリンセス像のような、王子様に守られるプリンセスではなく、もっと新しい、自分自身で道を切り開いていくようなプリンセス像をこの映画では表現しました」と話している。
さらに、いまの世界情勢を踏まえ、この作品にどんなメッセージを込めたのか、という質問には「いま、この瞬間でも苦しい思いをしている子どもが世界中にたくさんいると思います。そういう子どもたちに、この世界に絶望しないでいてもらいたい。この世界が希望に満ちた世界であってほしいという願いが、1人の親として、1人の社会を構成する大人としてあります。子どもたちを勇気づけるような世界になってほしいという願いを込めました」と、切実な想いと願いが込められていることを語っている。
そして、昨今のアニメーション作品と未来について聞かれると、「アニメーションの世界は非常に自由でなにを表現してもいいと思います。今回“シェイクスピア”や“ダンテ”の作品を(モチーフに)映画を作るとは思っていませんでしたが、そのくらいアニメーション映画というのは新しい可能性があるということです。可能性が無限大なので、これからもおもしろい作品ができると思います」とコメントした。
監督と共に登壇した芦田と岡田が、本作での役作りについて問われると、芦田は「スカーレットは中世の王女という役なので、王女として生きる使命感だったり、心構えをどう表現するか悩みました。中世の動乱の時代を生きたジャンヌダルクやエリザベス1世などの作品や映像を見て、イメージを膨らませていきました」と、岡田は「(過去に)演劇でシェイクスピアをやったり、看護師の役を演じていたので、“聖”という役に関しては、自分の体に染み込んでいる状態でした。スカーレットに対する気持ちであったり、時間であったり、そういう部分を大切にしようと演じました」と話す。
また、この作品でどんなことを観る人に伝えたいかと聞かれた芦田は、「スカーレットは、混沌とした世界を一生懸命生き抜こうとし、そして、自分の想いを遂げようとする女の子なので、その一生懸命さが現代を生きる(この作品を観た)みなさんの生きる活力になっていただければいいなと思います」と答えた。
会見後に行われたフォトコールでは、多くの海外メディアのフラッシュが激しく焚かれるなか、3人は笑顔で手を振るなど、穏やかな雰囲気でメディアの撮影に対応。公式上映を前にプレスカンファレンスに参加して、細田監督は「(会見に集まってくださった)プレスのみなさんがこの映画を気に入ってくださって、すごくいい質問を情熱的にたくさん投げかけてもらえて、この映画についてたくさん話すことが出来ましたし、芦田さんと岡田さんが、スカーレットとして、聖として、いい回答をしてくれているのを横で聞いていて、とても感激しました。」と、会見で手ごたえを感じた様子。
一緒に登壇した芦田も「少し緊張しましたが、監督の素敵なお話を横で聞かせていただき、『そうだったんだ!』という気づきがあり、楽しい時間を過ごせました」と会見に参加した感想を述べ、岡田も「映画を気に入ってくださったからこその愛のある質問が多かったと思いましたし、監督のお話を聞けて僕もうれしかったです。とてもいい時間だったと思います」と、海外メディアの熱量の高さに嬉しさを感じた様子を見せた。
世界中から“果てしなく”注目されている『果てしなきスカーレット』。いよいよ今晩、世界にその復讐劇の全貌が明らかになる。
文/サンクレイオ翼