荒井晴彦監督と綾野剛がタッグを組む『星と月は天の穴』公開決定!滑稽でせつない男の恋愛模様を描きだす
<キャスト、スタッフコメント>
●綾野剛(矢添克二、小説の中のA役)
「映画『花腐し』に続き、本作でも荒井監督の脚本を浴びる事ができ、主人公を通して言葉の美しさと滑稽さ、なにより文学への造詣に触れられ、とても稀有なひとときでした。とある小説を主人公が説明するシーン。噛めば噛むほど、呑めば呑むほど説明台詞を逸脱し、煙草を燻らせ酒を堪能する様に台詞を生み吐きだし、生きた言葉へと昇華する。脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。いま思い出しても武者震いします。映画『星と月は天の穴』どうぞ言葉の心地を召し上がってください」
●咲耶(瀬川紀子役)
「『純文学の登場人物になりたい』そんな願望が私にはありました。それがまさかこんなに早く実現してしまうなんて、全力で掴みに行った紀子という人物を演じる事が出来たのは私にとってこの上ない幸せです。現代の日本映画界に真っ向から反抗するような作品ですが、美しくもユーモラスな観る文学であると私は感じます。だからこそ多くの方に御覧頂きたいと心から感じます。綾野さんがどれだけ頼り甲斐のある素敵な先輩だったのか、荒井監督とご一緒した事がどれだけ貴重で特別な経験だったのか、あの夢のような時間、語り尽くせない程です」
●田中麗奈(千枝子役)
「荒井晴彦監督とは、脚本を書かれた『幼な子われらに生まれ』、『福田村事件』でご一緒していました。監督された『火口のふたり』、『花腐し』には惹かれていましたし、ご縁を感じてもいたので、お話しをいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです。主演の綾野剛くんとの共演もとても久しぶりで楽しみにしていました。剛くんは現場で色々とアイデアを出し、荒井監督もそれを楽しんでいるのがこちらにも伝わってきて、とてもいい現場だと思いました。役者としてだけではなく作り手として客観的にも現場を見ている視界の広い方だと改めて感じました。千枝子に関して、彼女がなにを想っているのかというのは、脚本を読んだ時点で直感的に感じましたが、もっと細かく腑に落ちていくように…と丁寧に彼女の背景を作っていきました。いまでも千枝子を思い出すと胸がキュッとします。年齢制限もあり、チャレンジングな作品だと思います。作品を観ていただいたお客様からどんな反応がうかがえるのか、楽しみにしたいと思います」
●荒井晴彦(脚本、監督)
「18歳だった。彼女もいないし、女の子の手を握ったのは高校の文化祭のオクラホマミキサーの時だけだった。それもそっと。’66年の『群像』新年号、吉行淳之介の『星と月は天の穴』、『女の軀に軀を重ねても欲情は起ってこない』男は、連れ込み旅館の枕もとの棚の下の埃を見る。『数週間にわたって抜け落ちた数え切れない数の男と女の毛が、絡み合っていた』、『突然、はげしい欲情が彼の中に衝き上ってきた』これ、なんか分かると思った。妻に裏切られ、愛とか恋とかいう情感を持ち込むのを拒否し、女を『道具』として扱おうと思っている男が『道具』に敗けてゆく小説だった。映画の仕事をするようになって、いつか映画にしたいと思ってきた。やっとです。『精神という花が咲いている。引っこ抜くとその根っこに「性」がぶらさがっている』と吉行さん。引っこ抜いていきたい」
文/鈴木レイヤ